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NORDING / grade19


レストア前

2ヶ月くらい前に、久しぶりに20本くらいのロット売りを買ったものの、忙しくて中々進まず。
まあ年内に仕上がればいいかで遊んでます。
その中の一本。
本命じゃなくて、写真から何の情報も読み取れず、その他大勢として全く意識になかったものの、届いてびっくりしたお宝。
デンマークの巨匠、エリック・ノルディンのグレード19です。

NORDINGは、エリック・ノルディンという人のメーカーです。
ノールディングと呼ばれたりもします。
どっちが正しいか分かりません。
正確な読み方わかる日本人、実はいないんじゃないか説。

アホみたいに多作で、その物量によってダニッシュパイプを世界中に広めた立役者の一人。
当然、一人で作ってるはずもなく、何社も外注先を持つ大企業です。
が、工場で作ってるものにも平気で「HAND MADE」とか彫っちゃう適当さ。
本人はもうずっとパイプ作ってない。
首振り人形になったり、何百ものパイプを合体させてデカいパイプを作ったり、ロードオブザリングに出てくるパイプ作ったりで有名。

んで、長年、アホほどパイプを作ってるので、グレーディングがちょいちょい変わり、しかも資料が整理されてないから本人も分からなくなってるカオスっぷり。
(高)A〜F(低)だったり、
(高)600〜200(低)だったり、
(高)1〜4(低)だったり、
(高)20〜11(低)だったり。

自分がパイプ集め始めた頃、ヤフオクで初めて買ったのが↑のノルディンでした。
カンバーランドステムが格好良く、ステムに真鍮?のNマーク、ノルディンの代名詞であるフリーハンドではなくクラシックなブランデー。
ノルディンのことを全く知らず、完全に見た目に惚れて購入。
ステムにクラック入ったけど銀巻き修理して、今も手元に置いてある思い出深い一本。
9mmフィルター対応だけど3mmジョイントつけて無理やり使ってます。
時々思い出したように。
ノルディンはこの一本だけ残してある。

銀巻きで見えなくなったけど、こいつのグレーディングは「0」。
かなり調べたけど、どこにも0は載ってない。
一件だけ、試供品かもって書き込みがあったくらい。
で、写真を撮ってNORDING社にメールで問い合わせました。
すると、エリック氏に直接聞いてくれました!
結果!
「覚えてない」
ズコー。

ただ、Nがインレイされたカンバーランドステムは30〜40年くらい前のもので、銀のNがインレイされてるのは最高級パイプのみ、と教えてくれました。
このインレイ、金色なんだけど…

とにかく、正確にノルディンのグレーディングを把握するのは、かなり困難です。

で、今回のこいつ。
19!
これは分かる。
(高)20〜11(低)システムだ。
しかもかなりハイグレード。

(高)20〜11(低)システムの時は、ハイグレードと普及品に分けられてます。
11〜20がハイグレード。
普及品は1〜10じゃなくて、(高)E、C、B、A、FreeHand(低)。
さらに、(高)E1、E2、E3、E4、C1、C2、C3、C4…(低)と、アルファベットの後ろに1〜4まで数字が振られてます。
この場合は数字少ない方が高グレード。
ハイグレードと普及品でナンバリング逆….
まあ、このデータも本当かどうか怪しいですが。

いずれにせよ、19はかなりのハイグレード。
15〜20はエリック自身が作ってたそうです。
巨匠!

ノルディンは安い普及品をたくさん出していますが、ハイグレードは値段が跳ね上がります。
世界中にファンがいるので。
19て。
これ1本で今回のロット一式を余裕で買えるレベル。
超掘り出し物。
宝探し楽しい。

ただね、ぶっちゃけ、前述のように適当な爺さんなので、ハイグレードでも値段ほど丁寧な作りじゃないことでも有名。
銀のNインレイは高品質の証らしいけども、インレイ、ズレてるやんけ。
まあ、適当さは爺さん作の証みたいなもんだし、まあ。

グレインは流石に綺麗。
六角シャンクも美しい。
めっちゃピカピカだし。
ピカ…ピカ…。
これ、ラッカー仕上げじゃね?

まあ、全く意識してなかったお宝だし。
もともと無いものとしたら掘り出し物すぎる。
よきよき。


ボウルのお掃除

綺麗に使われてるけど、そこそこカーボン。
火穴周りに少しだけ黒ずみ。

ナイフとリーマーでカーボンゴリゴリ。
結構どばー。

コットンとモールを詰めて、アルコールメソッド。
エタノールヒタヒタにして、数時間おきに注ぎ足す。
一晩放置。
結構染料出てる。

コットン取り出してボウル内軽くリーミング。
シャンクはストローブラシでゴシゴシ。
モールに色がつかなくなるまで。

内側が綺麗になったら、外側のお掃除。
ピカピカしてるけど。
キッチンペーパーで蓋をして、マーフィーのオイルソープを原液のまま歯ブラシゴシゴシ。
ぬるま湯流水で洗い流します。

洗い終わってもピカピカしてる…
やっぱラッカー仕上げだこれ。
とはいえ、エッジとかラッカーが剥げている箇所に椿油ぬりこみ。
すぐに拭き取り。

せっかくピカピカなのでラッカー活かすことに。
傷は消さずに残したまま。
ラッカー剥がれてるとこにカルナバワックス。

最後にボウル内側にエタノールで薄めた蜂蜜を塗ってひとまずおしまい。


ステムのお掃除

先代も大事に使ってたのか、深いティースマークは無し。
銀インレイは割と汚れ。

木がインレイされてるし、アクリルだし、内部洗う感じでエタノール。
ストローブラシでゴシゴシ。
モールに色がつかなくなるまで。
そんなに汚れてない。

吸い口のとこだけ軽くヤスリ掛け。
600〜2500くらい。
10本以上同時進行なのであんま覚えてない。

白棒バフとコンパウンドで仕上げ。
あまり汚れてないのであっちゅうま。
銀インレイもピカピカ。

少しステムがキツめだったので、ダボに鉛筆塗り塗り。
スムーズに。
あとは全体をつやふきんで磨いておしまい。


完成

ピッカピカです。
ラッカーパワー。
綺麗なグレイン。
ボウル天地はバーズアイ。

ステムもピカピカ。
Nインレイもピカピカ。
ズレてるけど。

思い出深い、カンバーランドステムのノルディンと。
結局、金色のNインレイは謎のまま…
インレイ的にはカンバーランドの方が精緻。

このNも時代によっていろんなデザインがあります。
Nの先っちょがもっとくるくるしてたり、白フチゴシックだったり、そもそも付いてなかったり。
同じ書体ってことは、カンバーランドと同じく30〜40年くらい前のかな?
デイティングは無いので製造年の絞り込みは無理。

デニッシュ久しぶりだけど、デザインも嫌いじゃない。
丸くないシャンク好き。
デカく見えるけど割とコンパクト。
そして見た目に反して軽い。
カンバーランドの方よりも軽い。

これも本当かどうかわからないけど、ノルディンは丘の中腹より高い場所で収穫されたブライヤーを好んで仕入れていたそう。
彼曰く、高いところの植物はそれほど多くの水を得られず、結果木材が硬くなるそうな。
実際、高グレードのノルディンは、大きさの割にとても軽いらしい。

作りが甘かったり、ラッカー仕上げっぽかったり、傷残ったままだったりするけど、拾ったみたいなもんなので満足。
こういうことあるから、ロット買いはやめられない。

以上でレストア終了です。
おつかれさまでした。


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