人は誰しもすでに完全な存在であり、そのことを自覚するために生きている

仏教の教えにおいて、この言葉は「本来無一物」や「自性清浄」といった概念と深く関連しています。仏教では、すべての生きとし生けるものは、本質的には仏性を持っており、この世に生を受けた目的は、その仏性を自覚し、悟りへと至ることにあるとされています。仏性は、すなわち究極の完全性、清浄性を意味し、我々はすでにその完全な存在であるが、日常の煩わしさや無明（無知）に覆われてその事実を見失っているとされます。

この視点から、「人は誰しもすでに完全な存在であり、そのことを自覚するために生きている」という言葉を解釈すると、それは仏教の最終目標である悟り、即ち自己と宇宙の本質を理解し、すべての苦しみから解放される状態への道を歩むことを意味します。ここで言う「完全な存在」とは、外界や物質的な富、地位などによって評価されるのではなく、内なる仏性の完全性を指しています。

このプロセスは、瞑想、持戒、慈悲の行為などを通じて、心の純粋さを培い、無明を克服し、最終的にはすべての存在との一体感を実現することにあります。この一体感を通じて、個々人は自己の内にある完全性を自覚し、さらには他者との間にもその完全性を見出すことができるようになります。

仏教では、この自己実現の道は、単に個人の内面だけでなく、他者への奉仕や社会全体への貢献としても表現されます。すなわち、自己の悟りを通じて、周囲の生きとし生けるものすべてが苦しみから解放されるように導くことが、最も高い善とされています。