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西九州新幹線は必要?開業直前に長崎市を訪れて考える

西九州新幹線。
福岡県福岡市の博多駅から、長崎県長崎市の長崎駅を結ぶ高速鉄道の路線計画です。

この路線は2022年9月23日より、長崎駅(長崎県)から武雄温泉駅(佐賀県)という一部区間で、暫定的に開業することとなりました。当面の間は博多駅から武雄温泉駅の間を在来線特急「リレーかもめ号」に乗り、武雄温泉駅で新幹線に乗り換える形となります。

とどのつまり、中途半端な状態で開業するというわけです。

なぜこの中途半端な状態で開業したのか?そして西九州新幹線は本当に必要なのか?
実際に長崎市を鉄路で訪れつつ、考えてみることにしました。

なお本記事では交通関係に詳しくない人でも読みやすいように、かなり嚙み砕いて説明します。マニアにとっては少し物足りない内容になる可能性がある旨、ご了承ください。

長崎市は遠い

まず筆者は近畿在住のため、鉄路を使って長崎市へ行くには「新大阪駅から博多駅まで新幹線、同駅で『かもめ号』に乗り換える」という形になります。

しかし片道5時間もかかるということが、旅程の作成においてかなりボトルネックになりました
結局1日で長崎市内へ向かうのはやめて、中間地点となる博多駅で途中下車し、福岡市近郊を観光してその付近で1泊。翌日の早朝から再び長崎市に向かうという旅程にしました。

この所要時間の長さは、(乗り鉄でない限り)誰もが躊躇うのではないかと思います。

乗り換え案内サイトジョルダンによれば、新大阪駅を7時頃に出発すると、長崎駅にはだいたい正午に到着するとのことです。やはり概ね5時間程度と言って問題ないでしょう。

出典:ジョルダン


また「鉄路で片道4時間以上かかる場合、飛行機が有利になる」とインターネットではよく言われます。
国土交通省の統計データを見てみると、近畿2府4県から長崎県に向かう場合、鉄路か空路かの二択では2020年度で飛行機が71%もシェアを占めているようです。
つまり意図的に鉄路を選ばない限り、近畿在住の人はたいてい飛行機で長崎県に行くということを表しているのではないかと思います。

ちなみにJR大阪駅7時出発でANA781便を利用すると、長崎駅には11時過ぎに到着するため、鉄路よりも概ね45分早く到着します。

…が、実は乗り換え時間を詰めてこの所要時間なんです
一般的に飛行機は乗り遅れないように余裕を持った早めのチェックインを行うので、実際に飛行機を利用するとなると、鉄路で長崎市内に向かうのとあまり所要時間は変わらないのです
まあ長崎空港と長崎駅の距離が道なりで約40kmあることも一因ですが…。

出典:ジョルダン

要するに、従来の交通ネットワークでは鉄路も空路も長崎市内へのアクセスは決して良いと言えないということです。
立地の問題もありますが、人口40万人規模の都市にしてはあまりにも不便すぎると思いました。長崎市内に宿泊しない限り、余裕を持った観光ができません。

西九州新幹線でどのくらい長崎市が近くなる?

では武雄温泉駅までの部分開業で、どのくらい所要時間が短縮されるのでしょうか。
JR九州の西九州新幹線特設サイトによると、博多駅から長崎駅まで最速1時間20分、新大阪駅から長崎駅まで最速3時間59分で結ぶとしています。

出典:JR九州


従来は一般的に白いかもめが博多駅~長崎駅で2時間前後黒いかもめが2時間10分前後であったことを考えると、いずれも片道30~40分程度の短縮になるでしょう。

たかが30分、されど30分ですが、往復となると1時間も所要時間が短縮されることになります。
長崎市内で観光する場合、単純計算で1時間ほど滞在時間が伸びるということになり、それだけ自由時間が増えるわけです。

ちなみに筆者は隅々まで舐め回すように出島を観光してちょうど1時間だったので、この伸びた時間で出島を観光することができると思います。

長崎空港からのアクセスも新幹線に?

西九州新幹線の恩恵は鉄路だけでなく、空路も受けることができるかもしれません。

西九州新幹線では、途中に新大村駅が設置されます。
大村市によると、この駅の所在地は大村市植松3丁目とのことです。Googleマップで同地区を見てみると、長崎空港から非常に近いことが分かります。

赤部分:新大村駅付近

執筆時点では未定ですが、ここまで近いと空港連絡バスはほぼ確実に設定されるのではないかと思います。

もし設定されるとなると、距離(4.4km)から推測してバスの所要時間は10分~15分程度、また新大村駅から長崎駅まで新幹線で15分程度なので、新大村駅での乗り換え時間を含めても長崎空港から30~45分で長崎駅に到着することが理論上可能でしょう。

バスと新幹線の運行ダイヤ次第では現在のリムジンバスよりも早く長崎市内に到着することができるようになるので、空路においても所要時間の短縮が実現するかもしれません。
そうなれば首都圏在住の人々も新幹線の恩恵を受けることができそうです。

西九州新幹線の問題点

続いて現状の西九州新幹線におけるデメリットや問題点を掘り下げていきます。

佐賀県が消極的

西九州新幹線が抱える最も大きな問題点は、佐賀県が新幹線に消極的であることです。これには政治的・金銭的な理由もあるでしょうが、実際に乗ってみると「現時点で佐賀駅から博多駅まで片道40分程度しかかからない」という事実も大きいのではないかと感じました

また新幹線が開通すると、一般的に在来線特急時代と比べて料金が高くなる傾向にあります。例えば博多駅から長崎駅までは、今回の部分開業で約500円ほどの値上げとなります。
つまり佐賀市内発着の場合、値上げの割に所要時間の短縮は限定的になってしまうということです。
そりゃあ佐賀県は新幹線に対して消極的になるわけです。

乗り換え回数が増える

現状の部分開業では、乗り換え回数が従来よりも多くなってしまいます。
いくら同じホームでの対面乗り換えと言えど「重い荷物を持って一回座席から立ちあがる」というエネルギーを使う動作が増えてしまうので、できるだけ避けたい動作です。

このマイナスの部分の割に片道30分程度しか短縮されないという問題があり、賛否の議論が増加する要因になっているように思いました。筆者も実際に乗ってみて、博多駅から乗り換えなしで長崎駅へ向かえるのは非常に楽だと感じました。

まとめ

実際に在来線かもめ号に乗車してみたところ、長崎県内ではかなり遠回りをしており、なおかつ佐賀県内よりもゆっくり走っていることが多い印象でした。
そのため長崎市内に向かうのであれば、西九州新幹線はあったほうが良いと強く感じました。

また新幹線は長崎空港の近くを経由するので、飛行機を利用した長崎市や佐世保市へのアクセスも改善される可能性があります。
暫定開業では決して完全体とはいえませんが、それでも所要時間の短縮や利便性の向上が期待できそうです。

また西九州新幹線が開業した後にも長崎を訪れようと思います。次は端島(軍艦島)に上陸したいですね。


※写真は全て筆者撮影

参考(2022年8月19日閲覧)

2022年9月23日に西九州新幹線が開業します!|JR九州

ジョルダン 乗換案内・路線情報・時刻表・運行情報サービス

大村市 新幹線開業に向けたまちづくり

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