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ソリッド・エア


目玉が動く
目玉が動く
こちらを凝視する
そこに宿る影は何者

目玉が動く
こちらを凝視する
空気を凝固する
比重の大きな灰色

沼へ 沼へ
頽廃の沼へ
何をも見えぬ愚かな君を
この沼へ誘い込む

ソリッドエア
ソリッドエア
ああ
彷彿として待ちくたびれた確固たる死の中へ


脚が震える
脚が震える
大地が歪んでいる
身の投影の中に潜むのは誰

脚が震える
大地が歪んでいる
撓む地面に引き摺り込まれた
かりそめの水色

沼へ 沼へ
頽廃の沼へ
我楽多の戯言しか吐けぬ
愚鈍な君をここに歓迎してやろう

ソリッドエア
ソリッドエア
潤沢の空気を吸ったかと思ふ君
鼻腔に流れ込んだのは甘い甘いコンクリィトだ!


空を見る
空を見る
事実はそこに見えるのは絶対の宇宙でなく
絶対の宇宙に見つめられた君

空を見る身体は脆く油断する
生存本能の欠片をもぎたぎたに駆逐する
降ってくるのはパルチザン
斬り広がった紅

壁へ 壁へ
韜晦の許されぬ壁へ
慰めを求めてやってきた愚かな蝿には
瞬間的な猛毒で存在を亡きものに

ソリッドエア
ソリッドエア
そろそろ見えてきただろうか
見えるはずのない人間の苦しみが


謙遜をください
謙虚をください
立派をください
虚飾をください

憤怒をください
純粋をください
傲慢をください
怠惰をください

堅実はありますか
誠実はありますか
向上心をください
欲求もください

ソリッドエア
ソリッドエア
たくさんいただいたお返しに
あなたには呪縛を差し上げませう


剥奪する
剥奪する
浮ついた強欲と慢心をその身体から
内側から綻ぶ最高の傑作

剥奪する
その笑顔を奪って見せる
こびりついた皮脂の下に潜む
弱く儚く脆く小さい夢を

沼へ 沼へ
頽廃の沼へ
残ったものは全て
光の届かぬ最奥の闇へ

ソリッドエア
ソリッドエア
あなたは多くのことを知りすぎた
その代償は甘んじて受けてもらおう


浮遊する
浮遊する
誰にも見つからずに勝手にどうぞ
この私だけはいつもあなたを見つめている

歩け 歩け
秩序なく広がるこの地で好きなだけ抗え
身勝手な蹂躙の後始末は
ちゃんとあなたにやってもらうわ

壁へ 壁へ
韜晦の許されぬ壁へ
虚栄だけの向上心の果てにあるのは
目も当てられぬほど空虚な微笑

ソリッドエア
ソリッドエア
我が道を進むと同時に
道は恐ろしくも狭まってくる


比重の思い空気の中で
身体は着々と融解されてゆく
最期に待ち受けるのは
抽象的に残ってしまったわけのわからぬ信念を
大いに嘲笑う世論だけ

ソリッドエア
ソリッドエア
どうかもう気づいてくれ
角はとれてこそ価値あるものなのだ

ソリッドエア
ソリッドエア
その貧弱な身体と精神で一体何ができるのかと
倦怠渦巻く個性のない闇の渦では
もう何もできやしない

ソリッドエア
ソリッドエア
あなたは多くのことを知りすぎた


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