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これからテレマークを始めるのに、アルペンが出来なくてはいけないのか?

ここ数年、こんな質問を受けることが多くなった。

その答えは、

「テレマークをするのにアルペンが出来なくてはいけないの?」と聞かれれば、答えは「No!」です。「テレマークをするのにアルペンの経験があったほうが良いの?」と聞かれれば、「その経験の内容によりますね」と答えます。

私のスクールにはアルペンの経験がない方々が多くいらっしゃいます。スノーボードからテレマークを始めた、クロカンからテレマークを始めた、初めてのウインタースポーツがテレマークだった方々です。

とくにテレマークが日本で始まった頃はアルペンの経験がない方々がほとんどでした。「登山が趣味なんですが、冬山にも行ってみたくなったけれどアイゼンとピッケルは...」とか、「クロカンを楽しんでいるんですが、もう少し山の上の方に行ってみたくなったのでテレマークなら...」などなど、当時は雪の野山を遊ぶ道具として選んでいただいていたのですね。

10年ほど前、ある有名スキースクールの指導員の方々にテレマークを体験していただく機会をいただきました。手持ちの用具を総動員しても足りないので友人の登山用品店からもレンタル用具を借りて、また大所帯のスクールなので二日に分けての体験講習会となりました。

ごく普通の思考をすれば、その方々はスキーの指導員ですから、「それなりにテレマークしたんじゃね?」と思いますよね。それがそうでもなかったのです。

レッスン後のナイターでの限られた時間内での講習になりましたが、程なくテレマークターンらしくなる方と、いつまでもテレマーク・ポジションさえ取れない方の二つのグループに分かれてしまいました。

この二つのグループの違いは何かというと、テレマークターンが出来たグループはカービングスキーが登場する以前のスキー経験が長く、その当時に指導員資格を取った方々。一方、最後までテレマークターンにならなかったグループはカービングスキーが登場してからスキーを本格的に始め、カービングターン理論全盛の中で指導員資格を取られた方々でした。

言い換えると、ズレの滑りの中でスキーをうまくコントロール出来る感覚のある方々と、ズラさないことが基本の滑りを身につけた方々の違いなんですね。

テレマーク・ポジションを取れなかったグループの方に、「もっとスキーをズラして滑ってみて!」と声をかけると「十分ズラしてます!これ以上は怖くて出来ません」と言われました。私からすると十分切れた滑りをしていたのですが...

私はズレの滑りを調整した先に切れの滑りがあると考えています。その為、スキー初心者の方々には、このズレの感覚をしっかりと感じ、身につけてほしいと考え講習をしています。このことについてはまたの機会に書くこととしましょう。

話を元に戻して。

このように、アルペン経験があってもうまくゆかないこともあると言うことですね。強いてアルペン経験が無いよりはあるほうが良い点をあげるとすれば、斜度やスピードに慣れていることでしょうか。恐怖心は技術習得の最大の壁ですからね。

そもそもテレマークはアルペンの一部ではありません。独立したスポーツであり、雪山での遊びです。テレマークを始めたいといらした生徒さんがどのように上達するかはスキー教師の問題です。それを、あたかも生徒さん側に問題があるように思わせてしまうスキー教師が存在するので、このような質問が出てくるのですね。まったく困ったものです。

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