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テレマークスキー用具について:スキー編

アルペンとは違い、細板からファットスキーまで様々な形と用途のスキーがあるテレマーク。ここでは、それぞれの特徴と選び方を書いてみます。

細板

今となっては入手が難しくなりましたが、もっとも「テレマークらしい」スキーです。「歩く・登る・滑る」と言った、テレマーク本来の遊び方を存分に楽しむことができます。

テレマークが始まった頃のことを知っている方々は、トップの最大幅が73mm以下のものを細板と呼ぶことが多いのですが、現在手に入るスキーの中では90mm以下のものを細板と呼んでも良いと思います。

テレマーク用として売られているスキーが少ないので、細板そのものを探すことが難しくはなっていますが、クロスカントリースキーのツーリング用に作られているものを使うこともできます。ぜひ一度「軽さ」という開放感を感じてみて下さい。その際、できればブーツは革靴、もしくは柔らかいプラブーツで遊んでみて下さいね。


カービングスキー

現在は、スキーと言えばほぼカービングタイプのスキーになります。そのような中、テレマーク用にスキーを選ぶ際に注意したいのがサイドカーブの深さです。

テレマークは、滑走ポジションや切り換え時の運動そのものにターンのきっかけを掴みやすい要素が含まれています。その為、サイドカーブが深い、言い換えればスキーのウエストがトップやテールに比べ見るからに細いと感じるようなスキーはあまりテレマークには向いていません。また、トップ幅とウェスト幅の差が大きいほど、深雪のような深さのある雪ではスキーのトップと足元にかかる浮力の違いが大きくなり、安定して滑ることが難しくなります。これからテレマークを始める方にはサイドカーブがR17以上のスキーをおすすめします。

テレマーク初心者の方は、フレックスが柔らかいスキーを使いましょう。まだしっかりとテレマークの基本を身につけていない段階ではスキーにうまく力を伝えることができません。もともとテレマーク技術そのものがアルペンのように大きな力をスキーに伝えることが不得意です。少ない運動でもしっかりとターン弧を描いてくれる柔らかめにできているスキーを使うことも上達の早道です。


ファットスキー

バックカントリー=ファットスキー」と言えるほどに一般的になりました。細板に比べ、パウダーのように整地されていない深さのある斜面状況では強力な助っ人になります。スキーの幅があるということはスノーボードのように良く浮くということで、どんなに深さのある雪であってもその表面を滑られればそれだけスキー操作が楽におこなえるわけですね。

では、太ければ太いほど良いのかというと、そうとも言えません。「良く浮く」ことは「スキーを沈めづらい」とも言えます。「沈めづらい」ということは「減速する=ブレーキをかけることが難しい」ことにつながります。深さのある雪では、スキーに加重し沈めることで、より雪面からの抵抗を受け減速することが大切な技術となります。大きく開けた大斜面ばかりならば良いのですが、林間など、ショートリズムでフォールラインに向かって滑る必要がある場面ではスキーをコントロールすることが難しくなってしまうのです。

また、太いと言うことは、細めのスキーに比べ雪面から受ける力も大きくなります。イメージ通りにスキーをコントロールして滑られているときは良いのですが、失敗したときには大きな力が脚にかかってくることも考えておかなくてはなりません。見方を変えれば、細めのスキーは深雪の中で沈み込んだ状態が長いので、ファットスキーに比べ、自然とブレーキがかかり暴走しづらいとも言えますね。


ノーワックス(ウロコ)

雪上をスキーで歩いたり登ったりする時、スキーが後ろへ滑らなければ簡単に歩いたり登ったり出来ます。今時のテレマークやAT=アルパインツーリングではスキーのソールにシールを貼り付けて後ろに滑らないようにしていますね。

元々、雪上を水平方向へ移動することに進化したクロスカントリースキーでは、歩いたり走ったりするための滑らないワックスをソールに塗ります。ただ、そのワックスが雪質とあえば良いのですが、選択を失敗すると歩くことも滑ることもできません。初心者の方々にはなかなかハードルが高い技術です。そこで登場したのが、滑らないワックスの代わりにスキーのソールに魚のウロコのような刻みをいれ、後ろには滑らないけれど前には滑られるようにしたのがノーワックスタイプのスキーです。近年では、ATで使われるようなスキーにもノーワックスタイプのスキーが出てきました。

歩くためには滑らないこと、ターンのためには滑ることが求められます。この相反する性能が求められるスキーですから、購入する際はショップの方とよく相談し、自分の目的に合ったスキーを選んで下さい。パウダーな斜面や急斜面ではスリップしてしまうことが多いですが、登り下りが連続する丘のような地形でのツアーやザラメになった春山では軽快で楽しいツアーができます。コンロをザックに入れ、雪の上でティータイムなんてどうですか?


スキーを選ぶ際のワンポイント

▶トップに比べウエストが細くサイドカーブがきついスキーはショートリズムのターンを得意としますが、雪質が悪くなってくると雪に食い込んで回るようになるので少々扱いずらい。また深雪では、トップと足元の浮力の差が大きいため安定して滑ることが難しい。

▶バックカントリーで使うのならば、ウエストの幅は最低でも70mm以上あったほうが良い。

▶ウエストがあまり広くなりすぎる(90mm以上)とパックされた斜面ではズレが多くなり、コントロールが難しくなる。

▶ゲレンデとバックカントリー両方で使いたいのなら、ウエスト幅が70mm-85mmのスキーを選びましょう。

▶パウダー専用ならウエスト幅85mm以上のものでもOK。ただし、100mm以上のものはスキーヤーの体重にもよりますが、とてもスピードが出るので十分にコントロールして滑りましょう。


テレマーク独自のエッヂ・チューンナップ

今時のアルペンスキーと同じタイプのスキーではチューンナップの仕方も個々の好みに合わせアルペンと同じようにおこないます。

ただ、細板でテレマークを楽しむ時はこんなチューンナップをしてみましょう。その方法は、左右のスキーのアウトエッヂのトップ側接雪面から30cmぐらいを鈍角にします。このようにすることで、テレマークポジションでターンをしている際におこる、内スキーが雪面に食い込んで転倒することを少なくすることができます。難しい作業ではないので図を参考にトライしてみて下さい。ただし、鈍角にすることは角を丸めることではないのでご注意!

アウトエッヂの研ぎ方

スキーの手入れ

▶ワックス

アイロンを使ったホットワキシングが一番良いのですが、ワックスがたれたり、削りかすが出たりと「ご家庭でお手軽に」とはゆきません。かといって何もしていないとソールが毛羽立ってきて滑りが悪くなってしまいます。スキーショップではスプレータイプのものやクリーム状のものなどいろいろなかたちでワックスが売られています。あまり細かく雪質に合わせようとせず、「ユニバーサルタイプ」の万能ワックスでも良いので、スキーを使ったあとは毎回のように塗って下さい。

▶さび取り

スキーのエッヂは鉄でできているのでちょっと油断するとサビが出てしまいます。しっかり水分を拭き取ったと思っていても、スキーケースに入れたままではいけません。また、できるだけ寒暖の差のないところで保管するのが一番なのですがどうですか?

もしサビが出てしまっても焦ることはありません。赤茶けた色のサビはサンドペーパーなどでこすると簡単に落ちます。スキーショップに行くと砂消しゴムの親分のようなものが売られています。研磨剤が入ったゴムの四角い固まりなのですが、初めての方にはサンドペーパーよりも簡単に扱えるのでおすすめします。サビも色が黒くなっているとエッヂを深く浸食し、なかなか厄介なことになってしまいます。シーズン中に限らず、夏の間も時々はスキーの状態を見てやって下さいね。

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