見出し画像

私もいつか釣られるのでしょう

私の得意なことは、釣りとアイコン制作です。

いつも行っている釣り場があります。自然と釣り堀を足して二で割ったみたいなところです。大自然の中で大自然の魚を釣っているわけではありません。自然の地形を利用した釣り場に、養殖の魚を放流しているのです。魚は、結構飢えている状態で放流されているらしいです。だから、釣れるのは当然と言えば当然なのです。

家族のみんなが、あまりにもかからなくて飽きてしまった頃に、「わたしが釣ろうか」と手を差し伸べ、「きっと釣れないよ」と言われ、竿を受け取ります。針に付いた餌が美味しそうか確認し、うん、大丈夫となったら、ポイーンっと、針を投げて、ウキを水面に浮かせ、しゃがんで待ちます。

生まれてからずっと、たくさん餌をもらえて、いつもお腹いっぱい。
どうしてこんなに餌があるんだろうか、どんどん太っていくよ、ぼく。どうしてだろうね、まあ、いいじゃないか、食べよう食べよう。
ある日。あれ、最近なんだか餌がないなあ。ぼく、お腹が減ったよ。また今日も、餌がないよ。ああ、お腹が空いて、仕方がない。
あれれ、なんだなんだ。あれ、場所が変わったみたいだ。よく揺れるなあ。今までいたところよりももっとキツキツで狭いよ。あれ、君もお腹が空いているの? ぼくもなんだよ。きっと、餌がもらえるよ。

なんだろう。広い音がする。広いなあ。すごく広いよ。今までに見たこともないくらい、天井が広いよ。こんなに広いところはないよ。
あれ、また何かに入れられた。銀色の丸い部屋。
わあ、冷たい。冷たい。ここはなんだろう。体の横を通る水が、動いている。気持ちいいなあ。気持ちいいよ。こんなところ、初めてだ。それにしても、お腹が空いた。あ、あそこに、おいしそうな虫がいる。
「だめだ!」
あれ、君は誰だい? 俺は、君よりも前からここにいるんだ。あれを食べちゃダメだ。あれって、あの美味しそうな虫かい? そうだ。俺の知り合いは、あれを食べた瞬間、水の外に引きずり出されたんだ。声をあげる間もなく、あいつはいなくなったんだ。そうなの? そうだ。俺だって、腹が減って死にそうだよ。もう、頭がおかしくないりそうだ。ぼくもだよ。頭がぼうっとするよ。

虫を食べる方が普通じゃないか。お腹が空いている時に虫がいるなら食べるのが普通じゃないか。けれど、死なないようにするのも普通じゃないか。死にたくなんてないじゃないか。お腹が空いているんだ。死にたくないんだ。ぼくはお腹が。お腹が。虫があそこにいるんだ。うわーーーー。

この魚的混乱を、想像する。到底魚の混乱には近づけないだろう。でも、想像する。そして、自分の頭の中も混乱してきた頃、魚と自分の音叉が共鳴しようとした瞬間、釣り竿を上げる。
そうすると釣れます。
針に付ける虫だって、どこかでソレ用に育てられているのだろう。この連鎖に私だけ組み込まれずに済んでいるとは思えない。

アイコン制作は、その人に似たアイコンを作るのが好きだという話です。
魚釣りは楽しい遊びだと思います。釣り上げる時なんか、たまらないです。塩焼きは美味しいですし。
それから、たまに上手に餌だけ持っていく魚がいるけれど、すごい人だなあと思う。

読んでいただき、ありがとうございます。気に入っていただけたらサポートよろしくお願いします。