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●後編●対談企画 『海外旅行の扉を開く、その鍵は?』

旅行産業経営塾OB会主催
【緊急対談企画】
コロナ奮闘記の風の旅行社 原 優二 
    VS 旅行産業経営塾OB会会長 橋本亮一
『海外旅行の扉を開く、その鍵は?』~後編~

対談日時:2020年8月1日 14:00~15:30
<対談概要>
対談者: 原 優二氏 
    株式会社風の旅行社 代表取締役社長、日本旅行業協会理事
    旅行産業経営塾塾長、トラベル懇話会会長
対談者: 橋本亮一氏 
    株式会社ブルーム・アンド・グロウ 代表取締役
    旅行産業経営塾OB会会長
ファシリテーター:藤本賢司氏  Japan Exploration Tours JIN代表
形式:YouTube生配信 視聴申込者:360名 当日視聴者:180名

<対談記録>以下敬称略(下記対談内容は8月1日時点のものとなります)

◆今、旅行会社として何に取り組むべきか?
橋本:検査体制が充実したり、ワクチンが開発されたりして、海外旅行が徐々に復活できることになったというシナリオで、海外旅行はこれまでと大きく変わってくるでしょうか?

原:やはりどんなワクチンができるかによりますが、もし海外に行って罹患したときに14日間隔離になるのは恐怖でしょう、特に年配の人は恐怖心をお持ちになっていると思う。となると今までのように海外旅行需要があるか、2019年のように戻るかは疑問ですね。

橋本:今までのようなバス1台に40名などの、三密状態のスタイルのツアーはできないでしょうね。

原:JATAなんかはバスの換気はいいので、全員詰めてもいいとは言っています。ただ、科学上の安全ではあるかもしれませんが、やはりバスに満杯で乗っているのは、安心という点ではどうなのか。しかも海外旅行の場合、例えば1週間というツアーの間、同じバスでの移動することになるけれど、それはどうなのか。当然スタイルは変わると思うし、コストも変わるのではないでしょうか。

橋本:当然ある程度受け入れ人数を制限せざるを得ないと思いますが、それに伴い費用は上がってしまいますよね。

原:ある程度コストが上がっていくのはしかたない。その代りお客様からは、安心・安全に対する要求は当然強くなる。そこで旅行会社はどのような対策がとれるのか。海外旅行のガイドラインはまだできていません。そもそも国によって対応が違うので、難しいと思いますが、今からガイドラインを作るしかないでしょう。

オフピークへ分散し、オーバーツーリズムに加担しない!

橋本:うまくオフピークに分散することに、これまで以上に旅行会社は知恵をしぼらないといけないのではないでしょうか。

原:社会の働き方の問題にもつながると思いますが、政府も分散型の労働環境を推奨している。テレワークもだいぶ進んでいますから、何も全員が土日に休む必要もなくなるのではないでしょうか。

橋本:そういう点では、平日とかオフピーク時に休みを取りやすくなるということですよね。また、観光客が集まる人気観光地を避けて、本当に観光客を必要としている魅力ある観光地にも分散していく、そういったオフピークも必要なのでしょう。

原:集中させないということですね。星野リゾートの星野さんがマイクロツーリズムで、近場にもいい所あるよとおっしゃっているが、あれは旅行会社を使わない前提だから、旅行会社を念頭においてもらっていない。ただ、有名でない観光地などの発見もあったのかもしれないですね。観光の分散も、当然行われるでしょう。

後編原


橋本:オーバーツーリズムに加担しないというのが、旅行者のプライドになる。そんな世界を作りたいですね。

原:車を使った旅行がどうしても増えると思いますが、感染のリスクを考えると当然でしょう。そうすると1000~1500キロも移動できないから、せいぜい200~300キロの範囲ということになると、近場がメインになりますよね。

橋本:有名観光地を転々としていく、昔ながらの観光スタイルは限界なのでしょう。これから起こってくるアフターコロナ、あるいはウィズコロナの旅行スタイルは、真の旅行の醍醐味を味わっていただけるものになるかもしれない。そこに期待し、旅行会社として意識を高く持って、企画造成をしていく、そんな良い方向に持っていきたいですね。

原:添乗員をつけたりガイドをつけたり、グループツアーを作ったり、きちんとした企画を組み込んだツアーは、海外旅行を中心に当社でもやってきましたが、国内旅行でもそのようなことがきちっとできたらいいかなと考えています。しかしこれからは個人旅行化が進みますから、そうなると、現地のサプライヤー、オプショナルツアーを作っていくガイドなどが、車を使った個人旅行に対応するコンテンツの提供者として、これからどんどん増えていくのではないでしょうか。

橋本:グループが少なくなって個人旅行が進むとしたら、現地での緊急連絡体制などの問題が出てくるでしょう。保険会社の役割が大きくなるかと思います。

原:例えばこのコロナの状況下で、添乗員、ガイドを付けていたら旅行会社が色々できるが、個人旅行では旅行会社は対応が難しい。感染のリスク、救援の問題などを保険でカバーしていくことになるかと思うが、新しい保険がどんどん開発されないといけないですよね。

会社が生き延びるための模索

橋本:これからの時代を思い描きながら、早くそのような状況になるために、さあ今我々が何をしなければならないか。まずは会社を持たせないといけない。

原:雇用調整助成金の特例が9月末までということなので、その後通常の雇用調整助成金が年100日というのが残りますけど、8,330円では厳しいですよね。もし9月で終わってしまうと、旅行会社はさあどうする。これ以上続けるのか、あるいは一回閉じるのか、廃業するのか。こういった選択を迫られるのではないかと思う。

橋本:リーマンショックの時は、もう少し充実していませんでしたか?

原:3年300日だったかと思いますが、ただ単価は8,330円程度で変わっていないはずです。

橋本:この数か月間の充実度合いをみると、現在の方が良いのでしょうか。

原:ヨーロッパ、イギリス、ドイツなどでは、月に30万という国もあるようです。それにならって日本でも、15,000円という上限が出てきたと思います。そういう意味で、今の方が充実はしています。ただ、今までと違うのは、すぐにコロナは終わらないということです。せっかく、雇用調整助成金で企業を支援したのに半年で終わったら、結局企業が継続できないで終わってしまうので、半年使ったお金が無駄になってしまう。何とか企業を継続してもらいたい。その点では国会が始まって欲しいと思います。

橋本:国内旅行については今までの延長の取り組みということですが、9月から先、助成金が終わった後も考えは変えないのでしょうか。

原:基本的には変えないと思っています。8,330円になっても、休業手当60%が労基法上ぎりぎりの手当てなので、そこまで給料が下がるかもしれないが、なるべく会社の出費を少なくして継続していくことを考えたい。ただその方法も4か月程度しかもたないでしょう。そこから先、来年1月、2月以降どうするんだという話になると、はっきり言って答えはありません。一回会社を休眠させるということも考えざるを得ないのでしょうか。まだその点はスタッフとの相談になるので、ある程度様子を見ながら決めていきたいと思います。

橋本:従来海外旅行を取り扱って来た会社も、今、国内旅行をやろうと取り組んでいる会社が多いですよね。オンラインツアーの取り組みも増えています。今日のファシリテーターの藤本さんも、オンライン富士登山ツアーをやっていて、結構な人気です。場合によっては純粋な旅行業にとらわれず、その周辺のビジネスを取り入れながら、旅行会社が生き延びていく道を探らざるを得ないようにも思います。

原:従来のような需要が戻るまでかなり年月がかかるだろうし、果たして戻るかもわからない。従ってオンラインツアーを将来も続けるつもりなら、すごく良いと思います。しかもオンラインツアーは、人数制限もないという点が従来と異なり、大人数が取り扱えます。例えば3,000円もらって100人ということが可能ならば、今まではできなかったようなことができる。そしてリアルな旅行につながっていく、というのが理想ですよね。

橋本:オンラインツアーだけでは、なかなか収支が合わないように思いますが。

原:今は合わないでしょう。無料でやっている会社もありますから。だから収支は合わないと思います。うちのスタッフもやりたいというのはあるが、経費をかけて、一日の人件費をかけてやるかとなると、今無理をしてやらなくていいのではないかと言っています。今はまず生活を守ることが大事なので、副業できちんと稼いで欲しい、家族が感染しないように守ることを、考えて欲しと伝えています。

橋本:海外旅行が復活をする日のことを考えれば、オンラインツアーで潜在顧客を増やしておくことは重要ですよね。

原:それはもちろん大事で、お客様への働きかけの一つとしてのオンラインツアーということも考えられるし、従来の顧客とは異なる新しいお客様を開拓できる可能性もある。自分もできればやりたいが、今は会社に余裕がないので、とにかく省エネで継続維持をしないと続かないので、やっていません。お金が潤沢にあればやります。


◆ワンコイン検査キャンペーン
橋本:検査体制の話に戻って、PCR検査を増やすべきだというのは、今マスコミも大合唱しているのに、増えていない。徐々に増えてきているとはいえ、こちらが想像している程、また多くのマスコミが求めているほど現実的には増えていないように思いますが、それは何故なんでしょうか。

原:政府側で経済活動を止めたくないというのもありますが、専門家委員会、今で言う分科会あるいは国立感染症学会の専門家の学会、この人達が止めていることは明らかです。無症状の方に検査をすることは、リソースの無駄遣いと考えている。例えば岩手県の100人を調べる意味があるのかどうか。ほとんど感染していないのが分かっているのに、感染していない人たちを調べる必要はありませんという考え方。専門家は医療における検査がどうあるべきかという観点で検査を考えており、社会生活に利用して行こうという発想は全くない。むしろ社会活動の為に自由診療が増えたら、本来重症者に対応するべき所に支障が出るという話です。

橋本:医療関係者からは、試薬・検査技師が足りないなどの問題、病院で検査をすることによってクラスターが生まれるという問題や、陰性なのに実はウィルスをもっている人がいて、その人がウィルスをばらまいているという話も聞きますが、その辺りの状況は改善していると思いますか?

後編橋本

原:検査数が増えているのは確か。2-3月、4月頃までは、濃厚接触者であっても症状がなければ検査しなかった。今は濃厚接触者であれば症状がなくても、検査ができるようになりました。試薬の問題ですけど、世界中で日本だけが試薬がないというのはあり得ません。現時点で日本は世界で159番目の検査数。それくらい検査が少ないのです。試薬が日本にないというが、試薬をどこまで認可しているかという問題で、非常に少ない試薬しか認可していないのだと思います。海外のように、増やすことを前提に試薬を認可することを考えれば変わるはずなのですが。
そして偽陽性・偽陰性の問題ですが、PCR検査の感度というのは30%~70%ですから、100人検査したら少なくとも30人は偽陰性、すなわち陽性なのに陰性とでて判断されてしまう。この人達が陰性だという結果がでて、安心して感染を広めてしまうと言われている。しかし勘違いをしない方が良いと思うが、幾ら検査が進んでもマスクの着用が無くなることはないし、なるべく三密を避ける、社会的な距離をとる事が前提だという事は変わらないと思います。ただ、野球観戦でも観劇でも今のようなあんなに厳しい制限でなくても、もう少し緩めてやっていけるのではないか?陰性の人が集まって社会活動をするんだ、経済活動をするんだという事になれば、そんなに感染が広がるという事は考えづらいので、その中の30%の偽陰性の人たちが仮にいたとしても、生活のエチケットを守っていくのが前提ですから、そんなに心配しなくてもよいのではないか。実際その人たちは今検査を受けてなくて、社会活動をしている。そして感染を広げている。その人たちが100人いたら、今はその人たちが無症状で感染を広げているが、もし検査すれば、70人は陽性で見つかり隔離できることになる。確実に陽性な人を隔離するという事を繰り返していけば、必ず市中の感染者は減っていく。これはニューヨークでも韓国でもやっている事で、実証されているので心配はありません。
問題は偽陽性で、検査の特異度というのが99.9%なので、100人の内一人は偽陽性が出る可能性がある。偽陽性は隔離が伴うので、人権問題になると言われています。ですが、その人にも毎日繰り返し検査を受けてもらい、症状が出ないで陰性が確定できれば隔離が解かれるので、技術的な問題として解決できると思います。

橋本:仮に気軽に何度でも検査を受けられるようになったら、例えばスタジアムの観戦に陰性証明をもっていく。旅行の関連で言えば飛行機に乗るのに、搭乗直前に検査を受けて陰性証明をもって乗る。クルーズの船内でも陰性証明をもって乗船し、船内でも検査を繰り返すなどができるようになる可能性もありますね。

原:唾液で10分くらいで結果が出て、特別な技師もいらないという検査ができれば、陽性になった方は医者に行けばよいのですから、陰性証明を社会生活の中で使えるようする仕組みを作る。それができれば、クルーズも再開できるはず。乗る前に検査して、毎朝検査して、寄港地ツアーから戻ったら検査するということを繰り返せばよい。もちろんスタッフも検査する。もし感染者が出たら隔離できるスペースを取っておく、あるいはブッフェはやらない等のルールはもちろん守るのですが、それくらいやれば安心なのではないでしょうか。クルーズはかえってコントロールできると思います。

橋本:旅行業界だけでなく、エンタメ、スポーツ、音楽の業界、いろんな関係者の人たちが手軽な検査で、何度でも検査して陰性証明をきちんともらう。そのような体制ができれば、いろんな活動ができるようになりますよね。

原:旅行業界だけが検査をして海外旅行ができるという事ではなくて、社会全体がそうならないとダメ。いろんな業界と連携して行かなくてはならない。海外旅行を再開させるには、旅行業界のことだけを考えていてはだめで、社会全体を変えて、ウィルスと戦うしか道がない。是非それをやってみたいと思い、ワンコインで検査がいつでも受けられるプロジェクトを立ち上げたので、賛同していただければと考えています。

検査と隔離と陰性証明と…

橋本:自主的に検査が受けられれば、多少多めに支払ってもよいと思います。例えば船に乗るのにPCR検査がついていて、その分PCRサーチャージのような若干の追加料金が、あってもよいのではないでしょうか。飛行機でも、PCR検査あるいは抗原検査が必ずセットでついているのなら、若干追加費用を払ってもいいのではないかと思います。原さんがワンコイン検査というプロジェクトとおっしゃっているが、今は、普通に検査を受けると2万円くらいはしますよね。

原:日に日に検査代金は下がってきています。今は14,000円位で検査をするところもある。検査をもう一度理解してもらいたいのですが、感染症法に基づく政府が義務として行う検査、要は感染者を見つけ出すために医師が認めたら行うという従来の検査があります。それが多少、新宿や大阪などで、無症状の人たちに広がったんですね。大阪の知事などが言っていたのはちょっとでも具合が悪いと言っていただけると検査ができます。ちょっと頭が痛いとか、肺が息苦しいとか言ってくれれば検査ができる。これは感染症法に適用させるためです。ところが僕らがワンコイン検査と言っているのはそういう検査ではなくて、要は自由診療の検査です。もちろん健康保険適用にして、健康保険で3割負担でやればよいという意見もありますが、毎日するような、何度もするような検査を健康保険でやったら、健康保険がつぶれてしまう。保険組合がとてもじゃないがたまらないですよね。インフルエンザの様に年に1-2回予防接種をするのとは違い、毎週のように検査しなければいけないとなると無理だと思います。なるべく多く検査をし、なるべくコストを下げれば可能かなと思っています。

橋本:大阪は取り組みが熱心です。大阪難波にPCR検査センターをスタートさせました。駐車場に止めたバスの中でやっている。一日2000件くらい対応しているらしい。それを梅田にも設置予定。9月からは、関西空港での1日2万件の検査体制を、大阪府が検討しています。誰でも好きな時に受けることができるという、PCR検査の計画がまさに動き出すところです。他に大阪市の取り組みで、GO TOキャンペーンと連動して、陰性の人にパスポートを出すということも考えられているそうです。検査体制を充実させて、陰性の人に活動できるようにする仕組みは、我々の業界を始め、エンタメ、スポーツ界も大事ですが、実は自治体にとっても重要なことではないでしょうか。今まで各自治体がインバウンドで潤っていたことを考えると、インバウンドの復活にもつながることであり、自治体に対してうまく働きかけ、検査体制を充実させるために、一緒に取り組んでいくことも考えられるのではないでしょうか。

原:官民関係なくやっていけばいいですね。国が主導して動いてくれない限りは、民間・各自治体が動くしかない。どこか大阪でもどこでも成功事例があれば、他も真似をしていきますよ。大阪が1日二万件を自由診療でやるならば、ワンコインにしてしまえばよい。自治体が援助するかもしれないけど、値段は下がっていくので、最終的には援助なしで、自由診療で500円で受けられることにしないと継続性がないですよね。

橋本:いろんな意味で経済活動を復活させる上で、検査体制の充実、陰性証明、陽性の人は隔離の徹底抜きには、ウィズコロナで経済活動を復活させるのは難しいだろうなと、今日話していて感じました。今日、多分300名を超える方に視聴して頂いているかと思いますが、もし今日の話にご賛同頂ける方は、身近な方でも構わないので、いろんな業種の方を巻き込んで、検査体制を充実させれば経済活動は復活できるんだよとアピールするきっかけになれば、嬉しいなと思っています。

原:GO TOキャンペーンが始まり、多くの旅行会社が個々に期待を寄せて海外旅行ができない状況下で国内を頑張ろうとしていると思います。予算配分など煩雑な形にはなっていますけれども、月ごとかもしれませんが、予算は増えていき、ある程度皆さんの希望は通るのでしょう。但し、現在の感染状況が広がっているなかで、もしかしたら部分的に旅行ができなくなってしまうかもしれない。今一番心配しているのは沖縄です。沖縄が外からの来訪者を止めたら、僕ら旅行会社にとっては非常に大きな打撃になりますよね。ということは僕らが検査!検査!といっているのは、一度再開した事業を途中で止めるなということ。止めたら業者はそこにコストをかけ、人件費をかけ、商品作って、販売して、さあこれから回収だという時に止まったら何もならない。本当は感染が収まっていたらよいのですが、何とか並行して検査体制を整えて、今の感染を抑え込む。橋本さんのおっしゃったように陰性証明を使うことができれば、国内旅行だって活用すればいいと思います。やり方を少し慎重にすれば、中断の心配をしなくてよいと思う。経営的に考えると先の見通しが立ち、経営もやりやすくなるはずです。そんなに時間があるわけではないので、この夏8月9月で何とか頑張りたいと思います。

【 対 談 終 了 】

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