「いってらっしゃい」「おかえりなさい」
息子がバイトに出かけるとき、
「いってらっしゃい」が言えて、
「いってきます」という声がすると、
幸せな気持ちになります。
後ろ姿をみていて、
角を曲がる瞬間、手なんかふってくれたら、
たまらないです。
何なら、涙ぐんでしまいます。
昔は私が「いってくるね」というと、
小さな息子は、私が見えなくなるまで、大きな声で、
「いってらっしゃーい。まま!
いってらっしゃーい。がんばってねー。」
と言い続けながら、小さな手を振ってくれました。
私も何度も手を振り返りながら振り返って、
ついに角を曲がるときには、振り返って、
おおきく手を振りかえしました。
近所では評判の光景でした。
息子は一生懸命応援してくれたけど、
私は仕事でよい結果を出ませんでした。
息子はその結果と引き換えに、
保育園での寂しい時間を過ごしました。
もちろん、衣食住には不自由させなかったし、
教育も受させることができました。
でも本当はそんなことじゃなくて、
一緒にいてほしかったんだよって、
ぽろっといわれます。
「いってらっしゃーい」「おかえりー」は、
いうんじゃなくて、いってほしい言葉だったんです。
諦めさせた時間は、取り戻せない時間となりました。
今、バイトから帰る息子に、
当たり前のこととして、
「おかえりー」
と、いいたいのです。
何だか親子で幸せな気持ちになるんです。
ドアが開いて、
「ただいまー。お腹すいたー。フロ入る」
「おかえりー、お疲れー」
お互い顔をみて、ほっとするんです。
ああ、無事に帰ってきたんだなぁ。
10年遅れの穏やかな時間が我が家に訪れています。
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