『君、本を盗みにいかないか』
「君、本を盗みにいかないか」
そう誘ってきたのは、いかつい黒ドレスでキメた私設図書館の女あるじである。反り返るほど背筋を伸ばしながら煙管を燻らせ肘を張るポーズは威圧的で「どこに?」「なんで」という質問を許さない強さがある。
あるじは戸惑う私を本棚へ押し付けるとナイトシェイドの紫煙を吐きかけて何らかの蠱惑的な魔力を用い同意を得ると、今夜決行。厚着で来いと通告して遮光カーテンの裏に姿を消した。
◆◆◆
同日夜。紅い魔力ポータルを超えて到着した先は殺人者が徘徊する雪原の孤島