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いじめはいじめるほうが悪い(2)    〜息子のヘイトアタック被害(イギリス)〜

息子が小学校6年生のときに遭遇したヘイトアタック事件についてお話しします。

●顔を殴られた
それは息子が小学校を卒業してすぐの、夏休みに入ったばかりの頃でした(イギリスの新学年は9月から)。
息子はお友達の男の子とふたりで家の近くの公園で遊ぶと言って出かけていきました。
夕方、帰宅した息子は無口なまま自分の部屋へこもってしまいました。
「元気がないな、何かあったのかな」
と思い、しばらくして部屋から出て来た息子に「何かあった?」と声をかけると、目に涙をためて、
「公園で自分より大きい子どもに顔を殴られた。」
と言いました。
ソファに並んで座って肩を抱きしめながら、くわしく状況を訊いていきました。
公園にローティーンの少年少女数名のグループがおり、その少年少女たちから息子はいきなり「チャイニーズ!」と罵声を浴びたと。それだけではなく、その中のひとりの少年が息子を追いかけて来て、顔を殴られたのだと話してくれました。
(「チャイニーズ」というのは、アジア人の総称のように使用されることがあります。日本で外国人を「ガイジン」と言ったり、出身国に関係なく「アメリカ人」と言うような、無礼な言葉の使い方です。)

●学校のアドバイスは「警察に通報を!」
わたしは友人(イギリス人、同じ小学校の保護者)に電話をして、
「こういうことがあったが、どうすればよいか」
と訊ねました。
「ヘイトアタックです。まず学校に連絡してください。これは警察の仕事になります。」
アドバイスに従い学校に電話をして報告しました。
電話口の職員の方は、驚き、息子へのいたわりの言葉を話されると同時に、きっぱりと、
「警察に通報してください」
と言いました。
わたしが説明したこと以上の質問は学校からはありませんでした。
たとえば加害者はどこの学校の子どもか分かるか、など聞かれるかと漠然と予想していましたが、一切そういう質問はありませんでした。

●警察による捜査
しばらくして前出の友人が心配して家に来てくれ、一緒に警察への通報を行いました。イギリスには緊急用の番号「999」と、一般用の「101」のふたつの番号があり、このときは「101」のほうにかけました。
警察からは受付番号が発行されました。後日指定された日時にわたしたち夫婦と息子の3人で警察署へ出向き、事情聴取を受けました。
そこで訊かれたのは、こちらの名前と連絡先と被害状況の確認でした。その中で国籍を質問されなかったのは、個人的に興味深いことでした。
警察は捜査を行いますとわたしたちに告げ、聴取は終了しました。
その数日後、警察から経過報告のメールが届きました。
いわく、
「加害者の少年少女の住所氏名、学校名を特定しました。親の名前も特定しました。今後加害者宅を訪問して事実確認と指導を行います。」
なるほど、そういう流れになるのか、と読み進むと、
「子どもが楽しむべき夏休み期間にあたるので、新学期早々に加害者宅を訪問します。」
とあって、こちらとしては歯がゆい気持ちも湧きましたが、どうやらイギリスでは子どもたちの休暇は尊重するなにがしかのルールがあるようでしたので、そこはお任せしました。もっと凶悪な事件の場合はまた別だろうと思います。

●イギリスの逮捕可能年齢は10歳以上
そして夏休み明け、警察は加害者の少年少女の家を訪ね、厳しい口頭指導を行ったそうです。
ちなみに、もしこのとき、加害少年が逃げ出したり、やったことを全く反省せず抵抗などした場合には、逮捕もありうると聞いていました。イギリスでは10歳以上から逮捕することが可能なのです。
この事件は、オックスフォードシャー州の治安統計にもきちんと正式にカウントされました。
その後、地域の子どもたちの間で、
「あの子の家に警察が来たんだって!」
という加害者にとってかっこ悪い噂になっているのを息子が友達から聞いて、教えてくれました。べつにうちが噂を流したわけではありません。

●加害者からのお詫びは特になし
ちなみに加害者から本人への謝罪はありませんでした。というかそこに重きは置かれていませんでした。話題にも出ませんでした。
日本で子ども同士のこのようなトラブルが起きた場合には、加害者とその保護者が被害者に対して謝罪をするというのは一般によくあることですが、イギリスでは警察もそのような話はしないし、相談に乗ってくれたイギリス人の友人たちからもそういう話が出て来ませんでした。
このことについて考えてみました。
もし仮に、加害者が我が家を訪れ謝罪をしたら、どういう展開が予想されるでしょうか。息子が受けた暴行は到底許される行為ではありませんが、その場の雰囲気に誘導されて「もういいですよ」となってしまう可能性があります。しかしよく考えてみると、被害者が許そうが許すまいが、加害者のしたことはれっきとして変わらないのです。つまり、警察がなすべき仕事も変わりません。そういうことなのかなと思いました。
いま振り返って、加害者からの謝罪などはわたしや息子にとって必要のないもので、そのようなものはなくてよかった、と思えます。

●学校と警察
この事件で日本との違いについて色々考えました。
もしこれが日本の中学生と小学生の間で起きた事件であったら、どんな風に対応されたかなぁ、と。
学校は、目撃証言などから加害者を特定し、本人たちへの指導を行い、加害者に被害者へ謝らせて終わらせようとするかも知れません。被害者が警察へ被害届を出せばまた違うのでしょうが、事件性があってもなかなか警察へ報告したがらないというような展開もあるかも知れない、と思いました。
イギリスの小学校は、加害者の名前や学校名を知ろうともしなかった、つまり学校の名誉や評判を気にする発想がないのでした。非常にあっさりと警察への通報をアドバイスし、あとは警察に任せるので、学校にはなにも負担がかかりません。
また、このような許されざる差別行為、暴力行為を行えばどういうことになるかをローティーンのうちにしっかり分からせておかなければならない、という意識が共有されていると思いました。
学校の生徒が事件を起こすことはあるけれど、それを学校の不名誉とは考えないで、しっかりと警察を入れて対応できることのほうが大事だと考えられているのですね。
息子は大人たちが一貫して味方をしてくれた経験のおかげで、この事件のことを全く引きずることなく、毎日元気にすごしています。
わたしも色々勉強になりました。

では、みなさんよい1日を!

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