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派遣会社が衰退する3つの理由

皆さんは派遣会社の倒産件数が年々、増加傾向にあるのはご存じでしょうか?

昭和時代の日本の働き方は、定年まで勤める終身雇用が定着していました。
しかし、企業側が好きな時に労働者を雇い入れたいニーズから、雇用の流動性を高めるために「派遣」という労働スタイルが平成に入って定着しました。
それとともに、派遣会社が爆発的に増えていきます。

派遣労働者の需要が高まっていった中、この10数年でインターネット環境の発展が目覚ましく、雇用の在り方や働き方が多様化していきました。

令和の時代になり、少子化が加速している影響で労働人口は減少、企業が人材を確保することが難しくなっています。
また、コロナ禍が続いたことで経済の低迷が続いています。
これらの影響もあり派遣会社の倒産が年々、増加傾向にあります。

こうした背景から、この記事では将来的な予測として派遣会社が衰退する理由を考察した記事となります。



労働者派遣制度の概要

労働者派遣とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」

厚生労働省 「労働者派遣制度の概要及び改正経緯について」より

派遣会社の倒産件数について

帝国データバンク2023年11月報によると(https://www.tdb.co.jp/tosan/syukei/2311.html

・倒産件数:773件 前年同月比:+35.6% 前年同月:570件
倒産件数は19か月連続で前年同月を上回る結果となっています。

倒産の業種別にみると、「サービス業」(196件、40.0%増)、「小売業」(170件、63.5%増)と高水準を記録。
倒産の主因別にみると、不況型倒産が632件。19か月連続で前年同月を上回る結果となっています。

コロナ禍の影響で収益の減少や、人件費高騰が原因で会社の経営を圧迫。
コスト面に対応できない会社が沙汰されている状況になっています。

派遣会社は衰退する3つの理由

◆リモートワークの発展

ネット環境が発達したことにより、面接や会議でPCがあればZOOMなどのアプリを使用して、相手がどこに居ても容易にコンタクトを取れる時代になりました。

リモートワークは世間から認知され、わたしたちの生活にも浸透しています。
リモートワークの発展は、出社をせずに完全在宅勤務を可能にしてコストカットもできるメリットをもたらします。
それらのメリットから、リモートワークで働ける企業も出てきています。

優秀な人材を迎え入れるためにネックとなる、働き手の地理的な制約が解消されれば、企業が派遣会社に依存しなくなることは充分にあり得ます。

クリエイティブ系のお仕事や事務、コールセンターなど主力の派遣雇用がリモートワーク主体に変われば、派遣会社が営業利益を生み出すことは難しくなります。そうして派遣会社が規模を縮小していくことも考えられます。

サービス業や運送業など、肉体労働が必要になる業種に派遣をする会社が残ったとしても、企業のニーズに合った人材を提供できるかはわかりません。

子育てで短時間の勤務を希望したり、就業期間を短くして都合のよい働き方をしたいと考える派遣労働者は多いです。

定着率が悪い現場を回していくことや、人員確保に四苦八苦する企業が求めることは、長期的に活躍してくれる人材を希望するでしょう。

すると、短期間だけ働くために利用することを考えている人や、子供の休養でシフトに融通が利くことを希望する人の考えとは、お互いのニーズをマッチさせるのは困難となります。

高コストになる人材費用を、派遣先企業が負担できずに事業が途中で頓挫したり、社会保障の負担がかからないパート・アルバイトに依存する企業が増える可能性もあります。

そうしてお互いの利害が一致せず、価値提供も難しくなり、利益を生み出せなくなった派遣会社が衰退していくことは考えられます。

◆人材不足、人手不足の加速

人手不足が原因で倒産する件数は増加する中、国が有効な政策を打ち出してはいません。
企業にとって優秀な人材を確保することが難しくなっていますが、有効策の一つとされる労働者の「賃上げ」には依然として、国が消極的な姿勢であることに変わりありません。

派遣が浸透した理由として、
・長期で雇い入れることは難しいので、ほしい時に働く人を提供してほしい
・人件費のコストカットや社会保障の負担を軽減したい
といった企業側のニーズが、派遣会社との間で合致したことが考えられます。

特に、会社の経営が悪化した場合「人件費」が真っ先に削られる傾向にあります。
正社員に比べ、解雇されやすいのは派遣のデメリットです。
働き手もよりよい条件を求めて転職をする人が増えたことで、優秀な人材が他の企業へ流入していくようにもなりました。

企業にとって正社員を多く抱えると、人件費や社会保障で負担が大きくなってしまいます。
その結果、中小企業や資金力が厳しい会社にはアルバイトや派遣労働者が増えていきました。

正社員で働くための条件はより厳しくなり、正社員で働きたくても働けず、非正規労働の道を選択せざるを得ない人が増える結果となっています。

帝国データバンクの人手不足に対する企業の動向調査(2024年1月)によると、正社員の人手不足は「52.6%」と高い割合となっています。
非正社員の人で不足の割合は「29.9%」となっています。

正社員の人手不足は会社の利益にも影響を与えるものです。
企業が良い条件で雇用することができなくなると、その後に衰退してしまう可能性はあるでしょう。

◆雇用情勢が変化する可能性

昭和60年に労働者派遣法が制定されてから、時代に合わせて政府は法改正を実施してきましたが、派遣そのものが禁止になる可能性はあります。

例えば平成24年に、「日雇派遣の原則禁止」となりました。
(ただし条件を満たせば日雇いでの雇用は可能)

日雇派遣の定義は”日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣”です。
現時点で条件付きの日雇派遣は可能ではありますが、日雇での労働は不安定な状況から抜け出すには困難な働き方です。

無職や日雇が増えれば国の税収も下がってしまいます。
国にとってもマイナスな影響が出てしまうのです。

派遣は都合よく働けるメリットもありますが、正社員との給与面や待遇面の格差が問題になっています。
業務量は同じであるのにも関わらずボーナスが支給されない、契約を打ち切られやすいといった不満の声が上がることがあります。

経済情勢は不安定な状況が続いており、収入の安定を望む声は大きくなっています。国民の要望に応える形として、不安定な雇用を解決するために国が動く可能性は低いですが、全くないとは言い切れません。

待遇面の格差是正が世論で高まった結果、すべての企業にたいして直雇用実施を義務化、一般的な業種で「派遣」という雇用形態を禁止する流れに変化することは、今後の影響次第では考えられることです。

まとめ

派遣会社の倒産は年々、増加しています。

今後、派遣会社が衰退する理由を3つ述べました。

・リモートワークの発展
・人材不足、人手不足の加速
・雇用情勢が変化する可能性

これらの理由から今後、派遣会社も経済情勢の悪化や時代の変化に対応できず事業縮小、倒産という形で影響を受けることは考えられます。

企業も労働者も派遣に求めるニーズが時代と共に変化しています。

労働人口の減少で派遣会社が優秀な人材を確保し、経営を維持していくために何をするべきか、この先派遣会社が直面する大きな課題となるでしょう。

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