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オメラスに寄り添うために|本の紹介


家族で、慰安のため日帰り温泉へ向かった。


男性ふたりに女性は私ひとり。


暖簾を前にして、温泉を上がれば、
一階の休憩場所で合流しようと
右と左に分かれた。


身体を洗い清めたあと。


日帰り温泉の定番、
マッサージ風呂にジェット風呂。


最近の流行りなのか、
微細な泡が立ち上る気泡風呂。


サウナに入り、
身体を温めて汗を流し、露天風呂へ。


駐車場で眺めた白い半月は、
そこでは見えなかった。


―――月はどっちに出ている?


外気は冷んやり。
湯気混じりで潤された顔。


ごつごつした岩に囲まれた、
良い加減のお湯に
すっぽりと浸かりながら、
至福の時を味わう・・・


―――


御簾みすで覆われた、
ふたつめの檜風呂には、
大型TVが設置してあった。


『報道特集』。



国営放送かと思うような
厳格なグレーのスーツの解説員と、
実直そうなツイードジャケットの
コメンテーターが会話している。


コメンテーターが話している最中さなかにも、
年配の解説員は
生真面目にペンでメモを取っている。




「・・・国は情報を操作している。

〇〇党にとって不都合な文言、説明は

事実と異なる他の内容にすり替えら

れ・・・」

「・・・同様なことが、福島の原発に

おいても、パネルの指し示すように

事実が捻じ曲げられ・・・」

(記憶の中の『報道特集』)


―――


お湯が張られた中で
存分に手足を伸ばしていたが、
TVに見入るうちに
思考だけシリアスに転換してきた。


同時に浮かんでくる顔があった。


ホームヘルパーをして、
見てきた孤独な高齢者の方々。

ハローワークで、常連のように
訪れるどこか寂しげな求職者の方々。

サナトリウムで、所在無げに
配られる食事を待って並び座る、
患者の方々・・・

(注:必ずしも、それが悪いわけでは
ありません。念のため)




『 ―――人びとは、

リベラルな【パライソ※】を実現しよ

うとしている。



時代じだいの政府は、民衆の望みを

満たすかのように、情報を操りながら

演じている・・・。



民衆への締めつけは、きつくなったり、

ゆるくなったり変化《へんげ》

してきたけれども、



【パライソ】は、永遠に実現すること

は無い。




それは、政府だけでなく、

―――民衆そのものが、

『既得権』を意地でも行使しているか

だ。

そのよろいを剥ぎ取らない限り、

真の【パライソ】は 現れな

い・・・ 』



※パライソ[ポルトガル語]
〔キリシタン用語〕天国。楽園。パラダイス。パライゾ。ハライソ。

『BRILLIANT_S 脳内思考』





お湯に浸かりながら独りごちる私の
思考のもとは、
『ゲド戦記』から偏愛してきた、
ル=グウィンのある小説にあった。

↓ ↓ ↓

▶君の名はオメラス。【MOZU】

(→ル=グウィン『オメラスから歩み去る人々』の一部引用。
ドラマ【MOZU】の予告編より)


▶この短編集に収録。





・・・たまには、恋愛ばかりでなく、親の顔になったり、真面目に
考えることもあります。
今夜はとくに(振れ幅大きいですが)、
そんな日でした。


ル=グウィンは、哲学的思考を小説にシリアスに組み込みつつ、読んで
惹き込まれるダイナミックな世界観を展開しているので、超絶お勧めの作家です!!是非、手に取ってみて下さいませ。


↓ ↓ ↓

▶Wikipedia



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