ドラえもんの空き地より良かった

 先日、ドラえもんに出てくる学校の裏山の植生についての考察の投稿をTwitterで見た。
本来あの地域には有り得ない、理想化された山の姿なのだそうだ。あの世界には土管のある空き地もあり、理想的な子供の遊び場が揃っている。

 自分が昔、子供の頃に住んでいた住宅街を思い出した。そこは山にほど近い田舎の住宅街で、空き地があった。
 正確には空き地ではなく、近くの工場の駐車場だったのだが空いているスペースの方が大きく、子供の頃の私達は自由に遊ばせて貰っていた。

 その空き地というのが、今思い返すと驚く程に豊かな環境だった。
 砂利の敷き詰められた駐車場では野球や凧揚げができ、端の方の小さな草原のような草むらではバッタが捕れた。
葛に覆われた茂みの下の石をめくればダンゴムシや、運が良ければカタツムリの卵を見つけることができた。
 草原の真ん中には沼があり、秋にはガマの穂を摘んで振り回した。彼岸花も咲いた。沼のほとりの姫リンゴは酸っぱくて食べられたものでは無かったが、折れた枝を肥後守で削ってみるととても綺麗な白色だった。
  角には竹林があり、春にはタケノコを採った。ツクシもとれたが、苦いしはかまを取るのが面倒でやがてタケノコだけ採るようになった。破竹だったのでアク抜きもいらず、母が作ってくれた味噌汁が美味しかった。 
 廃材置き場は、危険だから入り込むなと言われていたがアスレチックにして遊んでいた。案の定、木材のささくれが刺さり、小さく膿んだのを覚えている。

 私が育ったその時期、その地域は子供が多く、皆で群れて遊ぶこともあれば一人で虫取りにも行くこともあった。田舎でご近所付き合いが密接だったからこその緩さだったと思う。親は、あの時があの町の黄金時代だったと言う。私もそう思う。

 たまに、足を伸ばしてその町を通ってみることがある。あの時の友達は通りを駆けておらず、私はもう子供ではない。しかしカエルの鳴き声は変わらず、空き地も静かに豊かな様相を見せている。いつかまた、あの町に黄金時代が来るといいと思う。


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