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闇夜の来訪者 #ふぉれすとどわあふ

②オーウェンは魔女の魔の手から逃れる

③影のない男に会う

から続きます。

 森の夜は深い。
 魔女に憑依された者は、生気を吸い取られるため体力をかなり消耗する。
国王として君臨していたビレートンの人々や動物たちも悪魔に魂を奪われてみな衰弱していった。
 危険を顧みず『薬草の書』を取り返しに行った勇敢な若者を死なせるわけにはいかない。今度こそ、この森の住人たちを守ってみせる。
 時の旅人オーウェンがヨークが休んでいる部屋から出ようとした時、うめき声をあげ苦しんでいるヨークのそばへ近寄ったオーウェンは、見覚えのある女性の姿に豹変した者に口づけされて生気を吸い取られそうになった。気を失いそうになったその時、背後から力強く引っ張られ、オーウェンは魔女から離された。
「オーウェン、この薬の粒を魔女の口へ!」
 背中越しに聞こえてきたのは、ヨークの声だった。
大きく口を開けていた魔女は薬を含むと、ゴクンと飲み込んだ。
 そして、魔女は静かに目を閉じた。
「死んでしまったのか?」
 オーウェンは小声で訊いた。
「いいえ、眠っているだけです」
 その声色は、ヨークのものではなかった。
 急いで振り返るオーウェン。
「貴様、どうやって入った!」
 背後にいた者にはランプに照らされた影がなかった。オーウェンは、ヨークの隣にいた白髪の中年男性の胸ぐらを掴んで言った。
「ちょ、ちょっと待って。この人は味方だよ」
「何?」
「申し遅れました、陛下」
「陛下だと?」
「私は、エルフ族の医術師モリスと申します。陛下とは何度か、お目通りさせて頂いておりますが」
 オーウェンは、とっさにモリスと名乗る男の耳元を確認した。エルフ族ならば耳に特徴があるため、すぐにわかる。
「モリスとやら、私はもう国家君主ではない。陛下という呼び方はやめてくれ」
 そう言うとオーウェンはモリスに話を続けるよう促した。モリスはオーウェンに対して深々と頭を下げた。
「オーウェン様も確認なさったと思いますが、ここに眠るのはエルフ族のケイラ姫で間違いありません」
「姫? 魔女は、エルフ族の姫だったのおおー!!!」
 ヨークが驚いて大きな声をあげたので、ミユとシドニーが勢いよく部屋に入ってきた。
「ヨーク! 大丈夫?」
 ミユがヨークを心配する声をかけた。と同時に、そこには未来へ行ったはずの医術師モリスがいたことにまず驚き、次いでヨークが休んでいたベッドに仔猫のケイのママのママ。つまりケイの母猫の飼い主であるケイラが眠っていたことにかなり驚いていた。
「これは、どういうこと?」
 ミユの設問は、この部屋にいる誰に対してなのかわからず、刹那沈黙が流れた。
「それでは、私からご説明いたしましょう」
 この間、オーウェンはベッドで静かに眠るダークフォレストの魔女と恐れられたケイラを見つめていた。
 モリスはエルフ族の姫ケイラが、なぜ恐怖の魔女としてあらゆる種族、あらゆる時代の者たちから恐れられるようになってしまい、そのケイラが『薬草の書』を追い求めていたのかを説明し出した。

 オーウェンが国王としてビレートン国を統治していた時代。ともに生きてきたエルフ族とドワーフ族、そして人間。その平和の均衡が遠い別世界から疫病を持ち込んだ悪魔グルヌスによって崩されてしまった。 
 疫病は瞬く間に、人間を襲い、それはドワーフ族へも蔓延していった。
ところが、魔術を扱うことができるエルフ族は疫病に対する特効薬の作成にいち早く取り掛かっており、出来上がった薬はエルフ族にはすぐに効果が現れたが、人間やドワーフ族にはその効果が発揮されることができなかった。
 そうすると、必然的にエルフ族への疑念が生まれた。
その疑念は魔術を扱う悪魔の手先だといことにまで拡大していった。 
 さらに疫病から復活できた者を魔女狩りと称して次々と捕らえていった。
そして、その恐怖の根源はエルフ族の王女ケイラが仕組んだものだという噂が流れ、みながケイラの成敗行動に走っていった。

仔猫ケイのママ、クレア

 ケイラは守り神である黒猫のクレアを連れて時空を超え、このふぉれすとどあわふの森へ逃げてきた。
「薬草探しをしている時に、時空を超えて過去から飛んできたケイラさんとケイのママに出会ったってわけね」
 とミユはオーウェンの肩越しに、眠るエルフ族の姫ケイラの寝顔を見つめて言った。
「私も、ずっと君を探していたんだよ。愛しのケイラ」

次のテーマ
①エルフ族のケイラ姫・医術師モリスとミユの協同作業
②今ある『薬草の書』の解読
③ぜ~~んぶ、吹っ飛ばしてパーティータイム

  何とか、落ち着かせて~~~💦

#ふぉれすとどわあふ #リレー小説 #賑やかし帯


サポートしてほしいニャ! 無職で色無し状態だニャ~ン😭