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金色の雨粒をあつめたら #シロクマ文芸部

金色こんじきに輝く雨が降る。
 路地裏で愛を確かめ合っていた恋人たちの興奮して開いた毛穴に否応なしに入り込んでくる。
 皮膚の奥底まで混入した酸性の水滴は、肌に焼きごてをあてたような強烈な熱さと痺れを与える。
 金色に輝く雨は、遠い昔に降り注いだ黒い雨のように、人間を蝕んでいく。

「宝石みたいに、こんなに綺麗なのに」
 女は手の平の上に、金色に輝く雨粒をあつめている。
「どんな化学兵器よりも恐ろしいんだぜ」
 男は火傷のあとのように、ケロイド状になった背中を女に見せた。
「どうせ、この世界が消滅しちまうんならさ。こんなキラキラ輝く金色の雨の中で、ずっと愛し合っていようよ」
 そう言うと女は、一糸纏わぬ姿で大きく腕を広げ天を仰いだ。
 そして、口を開け金色に輝く雨粒を飲み込んだ。
「私は雨が大好き。どうしてだかわかる?」
 女は男に問うた。
 男も女のように天を仰いで答えた。
「わかんねえ」

「どんなに泣いたって、誰にも知られることがないからよ」
「オマエが泣いたって、オレ以外、気にしちゃあいないだろ」
 女は天を仰いだまま、静かに目を閉じた。
「それも、そうだね」
 金色に輝く大降りの雨の中、恋人たちは楽しそうにいつまでも踊っていた。
                            了              

金色に輝く酸性の雨



#シロクマ文芸部 #金色に #賑やかし帯
小牧幸助さん、企画に参加させていただきます。



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