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路傍に隠れし、春めく星の瞳  #青ブラ文学部

   ほんのりと春めく風に誘われ、散策に出かける気になりました。
 今を感じたくて、のんびりと歩いてみると、新しい発見が色々とあるものです。
  家から駅前を通って、高架橋を抜けます。いつもは抜けた先を右に曲がっていますが、今日は左に曲がって行こうと思います。どこまで、真っすぐ行こうかな。そんなことを想いながら歩いています。
 この道は、一部がレンガ敷きになっていて趣を感じます。
 本日の散策のお供は、アダム・レヴィーンの『『A Higher Place』の1曲だけを入れたプレイリストを何度も何度もリピートしながら歩きます。

 You take me to another place 
 あなたは別世界へ連れて行ってくれるの

 You take me to a higher place
 あなたはもっと、もっと高い所へ連れ出してくれるの

 この曲を聴きながら歩いていると、どこまでも遠くへ行けそうな気がします。だけど、この辺で、少し違う道を選んでみようと思います。

 小ぶりの商店街だったのか、ところどころシャッターが降りている店舗があります。ここは〇〇3丁目なんだなと、引っ越してきて10年以上経つというのに初めて知る喜びと驚き。レンガ敷きの道も、どことなくほつれているように感じます。
 個人経営のクリーニング屋さんに、レトロな喫茶店。閉店のお知らせが貼ってある花屋さん。シャッターは降りていませんが、店内は枯れた切り花の残骸や花瓶が所狭しと転がっているのが見えます。その数軒となりの書店もシャッターが閉ざされています。昔ながらの幌が架かる店舗。その緑色だったであろう破れた幌から微かにわかる書店の文字。

 春めいた生暖かい風が、こっちへおいでと誘います。
 小ぶりの商店街を抜け、さらに左に曲がって行くとガラリと趣が違った風景が広がってきました。
 レンガ敷きとは打って変わり、ゴツゴツとしたアスファルトの道が続いています。その先に、大きな公園に出会いました。来たことがない公園だなと思いながら、公園内を入っていきます。小ぶりのベンチが数か所に配置してあり、四季折々の樹木を楽しむことができるのだなと感じました。ベンチに腰掛けてしまったら最後、お尻を上げることができなくなりそうでしたので、めげずに歩き続けることにしました。
 今日は、私の住む街散策ですから。
 公園を出ると、さきほどのゴツゴツとしたアスファルトの道が再び現れました。しばらく歩いていると、農地を見つけました。こんな近くに何やら作物を育てている場所があることを知り嬉しくなりました。東京の小松菜や大根、ネギなどは実に美味しいです。この畑は、すでに収穫が済んでいたようです。葉物の野菜の畑だったのだろうと推測できる物が数か所ありました。
 収穫あとの畑を抜けると、道はさらにゴツゴツとしてきました。新しめのマンションなどが少ない住宅街に入りました。
 靴の紐を縛り直そうと屈むと、側溝の脇にたくさんの蒼い花を見つけました。こんな道端にネモフィラの花が咲いているなんて、と思いました。
 路傍にひっそりと咲いていたのは「オオイヌノフグリ」というネモフィラよりも小ぶりで可愛い花です。
 

オオバコ科クワガタソウ属 大犬の陰嚢

 オオイヌノフグリは路傍や畑の畦道などに見られる雑草。大犬の陰嚢、ワンコの睾丸だなんて、何て可哀そうな名前をつけたのだろうと不憫に思っていたのですが、他に「星の瞳」とも呼ばれていると知って、安堵しました。
 側溝前に座り込んで、じっくりと「星の瞳」を観察しました。本当に、その可憐な花は、星の中からじっと私を見つめているようでした。
 路傍の花は、きれいで価値のある花です。
 ここに咲いている意味があるのです。側溝の影でひっそりと咲きながら、私を、街の人たちを癒しているのです。
 ほんのりと春めく風に吹かれながら。
                               了




 #青ブラ文学部 #春めく #投稿企画 #イラスト #パステル画 #コピック #星の瞳
 「春めく」という言葉には、なぜか心躍る力がありますね。
 今週も参加させていただきました。


サポートしてほしいニャ! 無職で色無し状態だニャ~ン😭