女の直感はAIよりも強し #青ブラ文学部
「所長、女性の第六感を見くびってはいけませんわ」
「どういうことだい?」
「女性のシックスセンス、第六感のデータを集め合わせて作られたこのワタクシが申し上げるのですから、奥様の直感は当たっていらっしゃると思われますわ」
「やっぱり、そうでしょ。あの人、浮気しているんでしょ!」
女性の甲高い声が、さほど広くはない探偵事務所内に響き渡った。
「奥さん、ご主人が浮気していると断定できるほどの証拠はつかめていないんですよ」
探偵事務所所長の貴家大気が依頼人であるご婦人を宥めるように言った。
「それでは奥様、ワタクシが提示いたします内容にお答えください。それらの項目チェックで、大まかな事実が確認できますわ」
貴家大気探偵の助手を務めるミス・和都村が言った。
「わかりました」
「では」
①急に「残業」や「休日出勤」が増えた
はい、この数週間、今日も残業だ。今度の日曜は勤務だって。
なるほど。
②ゴルフになんか興味なかったはずなのに、急に週末のたびに接待とか言
い出して、早朝から出かけるようになった。
はい、ゴルフ道具は友人の車に乗せてあるとか何とか言って、身ひとつで 出かけています。
③クレジット明細書や預金残高を確認させてくれなくなった。
はい、お金の管理は俺がするから心配するなと、言い張りまして。
では、最後に。
一番大切な質問です。
④何より、セックスをしなくなった
はい、ここ数ヶ月。まったく……。触れ合うこともしません。
「では、決定的な確認事項として行って欲しいことがあります」
貴家所長がご婦人に優しく伝える。
「はい、頑張ります」
①財布・カバンの中身をチェックしてください。家族で行ったことがない
場所のチケットが出てきたら要注意です!
くれぐれも、確認し終えたらバレないように元に戻しておいてください。
はい、そっとですね。
②自宅の車の中をチェックしてください。
車内の匂い。香水や化粧品の匂い。
ダッシュボードなどに入っているレシート類。
はい、匂いとレシート類ですね。
「でも、奥様なら大丈夫。簡単に証拠をつかむことができますよ。
女の第六感は、シャーロック・ホームズやエルキュール・ポアロなどの名探偵よりも、はるかに優秀なんですわ。所長」
そう言って、ミス・和都村が貴家大気を見て妖しく微笑んだ。
#青ブラ文学部 #女の第六感
山根あきらさん
企画に参加させていただきます。
よろしくお願いいたします。