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雲を紡ぐ  伊吹有喜

再読本。
付箋がたくさんのずっと手元に残しておきたい本。

美緒ちゃんの祖父絋次郎の言葉のひとつひとつが心に沁みます。


壊れかけた家族は、もう一度、一つになれるのか?
第8回高校生直木賞(2021)受賞作!

羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげられた「時を越える布・ホームスパン」をめぐる親子三代の「心の糸」の物語。
いじめが原因で学校に行けなくなった高校2年生・美緒の唯一の心のよりどころは、祖父母がくれた赤いホームスパンのショール。
ところが、このショールをめぐって母と口論になり、美緒は岩手県盛岡市の祖父の元へ行ってしまう。
美緒は、祖父とともに働くことで、職人たちの思いの尊さを知る。
一方、美緒が不在となった東京では、父と母の間にも離婚話が持ち上がり……。

「時代の流れに古びていくのではなく、熟成し、育っていくホームスパン。
その様子が人の生き方や、家族が織りなす関係に重なり、『雲を紡ぐ』を書きました」と著者が語るように、読む人の心を優しく包んでくれる1冊。
Amazonより

ミッドナイトバス、なでしこ物語でファンになった伊吹有喜さん。
この物語、感動間違いないです。

中高一貫の私立女子高に通う山崎美緒が主人公。
繊細で周りの目にいつも怯えてる。
周囲と上手くなじめず、部活の合唱部ではアビーとあだ名され辛くなり不登校に。

教員の母は生真面目過ぎるが故に狭く、持ち場のクラスも崩壊寸前。
美緒にもタッチが強く確執も泥沼に陥る。
父は家電メーカーに勤めるがリストラの危機に。

八方塞りとなった美緒、生きる為に頼ったのは岩手県盛岡に住む祖父だった。
祖父の絋次郎は羊毛を手仕込みで染め、紡いで織る工房を営んでいる。
美緒の居場所を与え、粉々に砕けた心が一つに紡ぎだすのをゆっくり待つ。

祖父絋次郎の言葉、北の大地、岩手盛岡の風景描写が素晴らしい。

鮮やかな色とりどりの糸、様々な手触りの織り地、羊毛の匂い、糸を紡ぐ織機の音、ホームスパンと出会うことで美緒は己の進みたい道を見つける。

美緒の変化によって親子、夫婦の絆、家族の在り方を再構築していく展開も見どころです。

触れて頂きたいのは祖父絋次郎の言葉。
何度でも読み返したくなります。

何が好きで、何が嫌いだ。

欠点と感じる凹んだ部分は裏から見れば突出した部分だ。


言葉が輝いてます。


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