「PERFECT DAYS」代々木八幡宮

以前も書いたが8月は仕事がなかったため、家で悶々とする日々を過ごしていた。9月より仕事は再開の予定だったが、昼夜逆転生活をしていたので
一抹の不安を抱えつつ月曜日を迎えた。
夜は寝られず遅くまで起きていたが、朝はちゃんと起きれた。
「以前はどうしてたっけ?」と朝の準備に若干手間取ったが、1か月ぶりに職場へ復帰した。
不安はあったものの、職場の方々は以前を変わらず接してくれてひと安心。
挨拶がてら不在の間の状況を教えて頂いている矢先、電話が鳴った。
上の人の名前が画面に表示されている。
電話に出たところ、再開延期との内容だった。延期ということは帰らなければいけない。さっき挨拶したばかりなのに。まだ来て30分。気まずい。
「ちょっとまたしばらく出まーす」と努めて明るく自然に職場を出た。
「もうここに居場所はないのかも」と感じた。まだわかんないけど。
家に帰る途中、さて「今からどうしよう?」という思いが頭をよぎった。
せっかく早起きをして外に出れる状態だ。台風も消えて空は青い。
一旦、家に帰り荷物を降ろしてバスに乗って駅の喫茶店に向かった。
平日の午前中のため、店内は静かだ。この時間はモーニングをやっている。ホットドッグをパクついてからタバコを吸ってようやく落ち着いた。
さてさて、またしばらくやることがなくなってしまった。
とはいえ家で悶々としていてもしょうがない。とりあえずこのまま何処かへ
出かけようと思い、行きたい場所を考えた。
真っ先に「代々木八幡宮」が浮かんだ。
そう「PERFECT DAYS」で平山が昼食をとっていた場所である。
映画を観たあと場所は調べていたが、涼しくなってから行こうと先延ばしにしていた。気温もそこまで高くないし天気もいい。行くしかない。
そうと決まれば気持ちも少し上を向いた。すべては気の持ちようだ。
楽しいと思えば楽しいし、つまらないと思えばつまらない。

目的地までは電車で約1時間。この時間帯なら電車も空いているはずだ。
会計を済ませ喫茶店を出て駅に向かう。改札に向かう人はまばらだ。
電車は案の定ガラガラで、この時間は出かけるには丁度いいなと感じた。
電車に揺られていると旅したいなぁという思いに駆られた。
私は旅行したことがほぼない。家族旅行は片手に収まるぐらいでそもそも
旅行という概念がないに等しい。まだしばらく休みだし旅行もいいなと
思いつつ外の景色を眺めていた。
電車を乗り換え、物思いに耽っていると代々木八幡宮駅に到着した。
駅からしばらく歩いていると右側に緑が見えた。ここだ。
入口近くの茂みに丸々とした黒猫がいて毛づくろいをしていた。
中に入ると木々が多く風もあり、葉が揺れる音がとても気持ちよかった。
本堂まで到着したが、初めて来る場所なので念のため色々調べようと辺りを
見るとベンチがいくつかある。ベンチはとてもありがたい。
調べてみるとどうやらお参りする順番があるらしい。
正直なところ、お参りの際に何か叶えてもらおうとは思っていない。
ちょっとお邪魔しますぐらいの感覚なのでルールはあまり気にしていないが
初回なのでセオリー通りに回ってみた。
お賽銭に関しても情報があったので、普段は100円玉を投入しているが
ちょっと変えてみた。
お参りが終わり平山が座っていたベンチを探した。
ご神木近くのベンチですぐに見つけることができた。

目的のベンチには先客がいたため、OLが座っていたベンチに座った。
「あぁここでサンドイッチを食べ牛乳を飲んでいたんだなぁ」と考えると
感慨深くなった。
上を見上げると、高く伸びた木々から降り注ぐ木漏れ日が何とも言えない
心地よさでしばらくの間そこから動けなくなった。
平山よろしく写真も撮った。ご神木にも触った。
ベンチに座ってボーっとしていると、親戚の訃報の連絡が入った。
親戚と行っても1回会ったか会わないかぐらいの記憶しかない。
いつもであれば「行かないといけない」という思いに駆られるところだが
ここ最近、時間があったので自分と向き合うことを自分なりにしてきた。
まだしばらく休みだし、時間も早かったので行こうと思えば行けたが
それに伴う諸々を考え秤にかけて行かない選択肢をとった。
以前の自分ならば秤にかけることはしなかったと思う。
周りから見て正しいと思うことを優先し、自分のことは置いていた。
でも今はそう思わなくなった。このままではもたないと思ったからだ。
選択をするときに正しいか正しくないか今はわからないが、選択したかしてないかでは自分の中で大きく違う。
今居るこの場所も自分が選択したかしていないかで意味が変わってくる。

「PERFECT DAYS」の中で平山は自分の居場所をいくつか持っていた。
家、車、職場、銭湯、飲食店、本屋、カメラ屋、コインランドリー。
基本的には無口だが店の人とは顔馴染みで会話をする。
家族と上手くやっているとは言い難いかもしれない。
それでも日々を楽しんでいる。
自分の居場所を作ることが、人生を充実させるのかもしれませんね。


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