結婚ものがたり10「宇和島の美しい海だけ」

宇和島に初めて行ったのは
能面父の実家があり
挨拶も兼ての帰省だった

能面両親と私と夫
気まずい4人
1台の軽バンに乗り
フェリーで四国に渡った

本心は、こんな窮屈な旅行
いやで仕方なかった

狭いし、遠いし、気まずいし

一番くつろげたのは
フェリーの中だけだった

私はただ、後をついて行くしかできないし
景色のことで話しかけても
会話ははずむことはなかった

印象的だったのは
宇和島の海

真珠を育てる海だから
瀬戸内海の穏やかで優しい水が
ちょうどいいのだそうだ

昔、那覇空港に着陸する時に
飛行機の中から見下ろした
コバルトブルーを思い出した

綺麗な海だった
海岸線を軽バンで走っている時に
ずっと見ていた


能面父の実家に着く前に
大きな神社に寄った時のこと

4人でおみくじを引いて
私は珍しく、いや、めったに引いたことのない
大吉だったので、ちょっと嬉しくしていたら

能面母が、何がでたかと夫に聞いて
吉だった~中吉だ~と話しながら歩いていた

私は、嬉しかったので気分よく

「私、大吉でした~」と
ニコニコしておみくじを能面母に見せた


能面母は、そのおみくじに一瞬目を向けたが

何も答えず歩いて行った

完璧な、無視、だった


どうしてそんな態度を取れるのか
本当に不思議だ

どこまでも私を下に見ているということだ

夫を見ていても
そんな底意地悪い遺伝子は感じ取れなかったのだが

無視する行為は

卑劣だ

そうやって、自分の立場を勘違いして
嫁である私、気に入らない私を
いたぶりたい

そんなことをして
何が楽しいのだろう、可哀想な人だな


無視されても私は黙っていた

相手にする価値もないと思ったからだ


こういうレベルの人とは
同じレベルになるのを避けるため
いちいち反応しないこと

そういう人のすごいところは
私以外の人に
めちゃくちゃ愛想がよく
めちゃくちゃ笑っているところだ

いじめをする人ってそんなだよね

心は決して
晴れやかではないだろう

いじめる側はそんなこときれ~いに忘れるけど
いじめられた側は

絶対に忘れないんだよ

顔も名前も、何を言われて何をされたか

絶対に忘れることはないよ
許すことも、できるならいいけど

どうでもいいと思える時がいつか来ても

忘れるってことは、絶対にない

いつの日か
宇和島の青い海に免じて、どうでもよくなるかもね


がんばってきたね、私

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?