ぷうさん、君はやはり副会長だ

年末のある日。
今日はワシたちが普段お世話になっている食堂の大掃除の日。

「じゃあ、ぷうさん頼んだで」

ワシとあんちゃんは箱いっぱいに落ち葉が詰め込まれた段ボールを担ぎ上げたぷうさんを見つめながら、声をかけた。

しかし、ぷうさんは一言も返事をすることなく我々の間をくぐり抜けて歩いていった。
あまりにも華麗なスルースキルにワシは思わずマスクの下から吹き出してしまう。

「おいおい。ぷうさん、一言ぐらいかえしてくれや…」

あんちゃんは呆れながら笑って去っていくぷうさんの背中に声を投げた。
黄色いもこもこダウンを来たぷうさんはくるっと顔だけこちらにむけた。
その顔にはニタっという音が一番似合う笑顔が見えた。あんちゃんから目を逸らさずにずうっと白くて綺麗な、歯を見せながら爽やかに笑っている。
ニタニタ。ニタニタ。ニタニタ。
ねっとり前に進みながらこちらに顔だけ振り返って何も言葉を発さずーー。
おい、なんでそんな爽やかな笑顔を見せてくれるんだい?それよか、何か言葉を発してくれ!
その姿、正にくまのぷーさんやないかい!
ふと横のあんちゃんを仰ぎ見るとチベスナキツネのすんっとした目でぷうさんをみつめ、溜息をついた。

ワシはあんちゃんに「やっぱりあいつに生徒会長は無理だったね」と笑った。

「ほんまに…」

あんちゃんも苦笑した。
ぷうさんはきっと心臓に毛が生えてるに違いない。
このニヤニヤ笑いを副会長に選ばれたときの一言でもぶちかますのだから、さすがだ。

*

つい先日我が学校で生徒会選挙が行われた。
聞いて驚くかもしれないが、2年制のこの養成機関にも生徒会が存在する。
ちなみに全校生徒計6名。 
一年生が3名と二年生が3名で細々と生活している。
そもそも神職養成機関、と聞いてもピンとこない人が多いと思われる。
神職養成機関とは、短く言えば神主になるための専門学校。
全国に何校かある内の一つが我々の学校だ。
大きい神社の付属学校であり、その神社で実習を積みながら二年間を過ごす。
大学と違って完全に住み込みで朝から晩まで神道漬け!!
生徒は2年間寮生活を全うし、協調性と団結力を身につける。
楽しいこともあればもちろん苦しい、辛いことも多い。
(気になった方は是非検索してみてください)


そんな当校でリーダー役を誰にするか、決めるのが生徒会選挙である。

ニ年生はもうすぐ卒業、そろそろ歳末だし新しい生徒会長決めとこーぜって感じで期末テストが終わったら開催されるのが昨今の流れらしい。
書くとどんどん長くなるから短縮短縮!

ここでまず後輩の1年生を紹介!!

・ぷうさんーー内気で消極的。大人しく基本声が小さすぎて相手に聞こえない。一番歳上なのに一番幼く見える

・にまいめーールックス全振り。ムードーメーカーでもあるがちょっとおふざけが過ぎるところがある

・かいじんーー年齢の割にしっかり者。真面目で優秀だが一人よがりなところが見受けられる

以上三名が期待の後輩たち!!

投票の結果、当たり前といえば当たり前だけど、かいじんが生徒会長に選ばれた。
でも実はぷうさんと、かいじん投票数は3対3で同点だったのだ。
実は2年生は全員ぷうさんに入れていた。
それぐらい期待値と生徒会長になったら変わってくれると思われていた。
しかし!!!それもつかの間。見事に期待を裏切ってくれるのが我らが愛しきぷうさんです。
生徒会長が決まり、その他の役割が決められて、(結局人数が少ないから全員何かしらの係につくのだ)
前に出て一言挨拶、この段になったとき。
かいじんはまあ、普通に良い心意気が感じられて、皆うんうんと頷いていた。

しかしぷうさんお前はだめだ!笑
副会長になるのかそれで!!ワシら2年生3人が君が前に立って話し始めた瞬間思ったよ「あ、こいつに生徒会長は無理だ!笑」と。

ぷうスマイル炸裂なんだもの。
「じゃあ副会長のぷうさん」
先生がこのように声をかけたら、
ダミ声で「…はい」
のっそりと席から立ち上がり俯きながらににたにた前傾姿勢でニタニタのそのそ…
教壇に上がって、鼻こすってニタニタ…
「これから…頑張ります。……よろしくお願いしまs…」ニヨニヨ。みんなの顔ちろちろ

おい!!しっかりせえ!!笑  
挨拶それだけか!!笑


挨拶終わった後、あの生真面目なエリート先生ですら、「ふっ…」てちょっと吹き出してたよあなた!!
まったく…!


    *


という流れを、見返りぷうさんのニタニタ顔見て思い出した。
ああ、生徒会長になって変わってくれるのを期待してたんだけどなあ。
でもぷうさんののんびりしてるところを見てるとうまい具合に副生徒会長を案外こなしてるのかな〜、なんてワシは思うよ。
ま、副会長って何もやること無いけど!!
ワシがそうだから!

ぷうさん、君はやはり副会長だね
生徒会長のかいじんを支えてあげてな


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