杀破狼1-1

国境の田舎町、雁回には将軍塚と名で知られる丘があった。その尊大な名前とは反対に、実際は背の高い人なら頂上まで容易く見渡せる程に低いただの小山であった。

将軍塚は昔からあった訳でははない。14年前に、大梁一の装甲騎兵隊である玄鉄軍隊が北部の十八蛮族を殲滅した帰りにこの町で血に染まった鎧や兜を脱ぎ捨てていったのだ。そうして山積みになった鎧や兜が長年に渡って風雨にさらされ、将軍塚となったのだ。

将軍塚は不毛の地だった。どんな種をまいても芽吹かず、雑草でさえ生えていなかった。こっそり情事を重ねようとする者を隠すような茂みすらなかった。この気味の悪い土地はなんの役にも立たなかった。町の老人達は皆玄鉄軍隊が殺した人の数があまりに多かったために怨念が将軍塚一帯に立ち込めているのだという結論に至った。

やがて、それが噂好きによって辺境の町の怪談話として広められ、将軍塚を訪れる人はいなくなった。

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