拝啓、愛しい人

「拝啓、愛しい人。

ーどうしていますか」


たくさんの時間一緒にいて、2人でいろんなところ行ったり、色んな事を経験したり、時には喧嘩もしたり、そういう風に積み重ねていくうちに私はあなたが好きなんだと気がついた。

でもあなたには大切な人がいて、そのあなたが大切な人は私にとっても大事な幼馴染であったから、あなたへの気持ちを考えると心が苦しかった。あなたは私がこんな気持ちを抱いているなんて微塵も気がついていないでしょう。

だから私はこの気持ちを誰にも明かさなかった。あなたや大切な人、家族や友人にも誰にも。


そんな時大切な人が事故で亡くなった。

私もショックを受けたけど、きっと私が想像できない位あなたは悲しんでいたんでしょうね。亡くなってから1年経ってもあなたが心から笑ったり楽しんだりしていないなっていうことはわかっていた。

亡くなってからも私はずっとあなたに寄り添って少しでも元気になってもらえるように頑張っていたつもりだった。

だからかな?私の事を好きになってもらえたらそんな悲しい思いはさせないし、あの人と同じ、いやそれ以上大切に愛する。そんな事を考えていたらあなたへの気持ちは今までよりも膨れていった。


抑えきれなくなって、あなたへ打ち明けた。案の定あなたは困惑していた。それと同時に嫌悪感に満ちた表情で、「女同士で?冗談でしょう?」と一言。

私はなんとなくそうなるだろうなって思っていたから、そうなると今までの関係には戻れないともわかっていたから、だから私は終わらせる準備をしてきていた。

「今までありがとう。出会ってからずっと大好きだったよ」

そう一言伝えて自分の鞄から包丁だしてドクンドクンと脈打つ心臓へと突き刺す。

あまりの突然の出来事にあなたは呆然としていたね。最期は大好きなあなたの笑顔が見たかったな。

そう思いながら少しずつ意識が遠のいていく。立っていることが出来ずに壁にもたれてずりずりと下がっていく。

想いを伝えられた事、今までたくさん一緒にいられた事を思い出していると、自然と涙が溢れてきた。

そして私の濡れた睫毛がゆっくりと下を向いた。

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