焼肉部位解説⑪人気の牛ミノ、トリッパ、センマイなど
写真: ©ayustety から Tokyo, JAPAN - Flickr, CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2752870による
その昔、牛の胃(ミノ)は欧米ではほとんど食べられずに捨てられていた。それが1970年代になると牛肉や内臓の輸入が始まり、食肉商社のバイヤーが海外に買付けに行くようになった。
筆者も1980年代後半から米国や豪州NZのミートパッカー(食肉メーカー)を訪問し、食肉や内臓類、牛タン、上ミノ、ハンギングテンダー(サガリ)、アウトサイドスカート(ハラミ)などを買付けたり、カッティング方法、水洗い方法、パッキング方法などの指導をしたものである。ミノなど欧米人がほとんど食べないため、カット指導には苦労したが、90年代に入ると上ミノなどは牛ロース肉より高くなったためパッカーの連中も真面目にパックするようになった。
余談だが、牛の胆のうからは胆石がとれる。海外でもと畜場の人達はこれを集めて販売していた。意外と高くうれるので、彼らの良い小遣い銭稼ぎとなった。牛の胆石は牛黄という漢方薬になるのである。
14-7 ミノ
【別名】トライプ、ルーメン
【英語】Rumen tripe(ミノ)
【中国語】牛胃(niu2wei4)、牛肚(niu2du3)
【牛の部分】 牛には4つの胃袋があり、その中で最も大きいのが第一胃(ルーメン)である。
【特徴】主として牛の第一胃で、上ミノは乳牛(経産牛)や雄牛からとれる。穀物肥育した和牛など霜降り肉になる牛の胃は薄いため上ミノは取れない。上ミノを取った残りの薄い部分や肥育牛の第一胃は、主として中華材や煮込みに使われる。
【用途】中華材、煮込み
14-8 上ミノ
【別名】マウンテンチェーン トライプ
【英語】Mountain chain tripe, Rumen pillars
【中国語】瘤胃肉柱(liu2wai4rou4zhu4) 上等牛胃(shang4deng3niu2wei4)*
【牛の部分】 牛の第一胃(ルーメン)で、厚みのある部分が上ミノとなる。
【特徴】主として乳牛の第一胃で、内臓としては最も高価な部位の一つである。1970年代に上ミノを初めて我国に輸入する際に厚みのある部分が山脈のように見えるためマウンテンチェーン(山脈)トライプと日本人(筆者の知人)によって命名された。 なお、厚いミノ(上ミノ)は主として牧草肥育の経産牛からとれるため、欧米から輸入されていた上ミノが、BSE月齢制限によって長期間輸入が限定され、豪州NZ産が主流となっていた。また、和牛や国産牛など穀物肥育牛では、飼料が柔らかすぎて第一胃は薄く、厚みのあるミノは取れない。
【用途】皮を向いて焼肉(上ミノ)にする
14-9 ハチノス
【別名】トリッパ、ハニカム
【英語】 Honeycomb tripe (北米 豪NZ)
【中国語】网胃(wang3wei4) 蜂窝胃(feng1wo1wei4) 金銭肚(jin1 qian2 du4)
【学名】reticulum
【牛の部分】 牛の第二胃
【特徴】網目状のためハチノスと呼ばれる。柔らかく味が良いため煮込みや蒸しものなどに広く使われている。イタリア料理のトリッパ(ハチノスのトマト煮込み)や飲茶の醤汁金銭肚(ハチノスの煮込み)によく使用される。
【用途】フランス・イタリア料理、中国料理、飲茶、煮込みなど
14-10 センマイ
【別名】バイブル
【英語】 Omasum, Bible(北米 豪NZ)
【中国語】瓣胃(ban4wei4)、牛百葉(niu2bai3ye4)
【牛の部分】 牛の第三胃
【特徴】突起やヒダが無数にあり、センマイ(千枚)が由来である。同様にバイブルの名称はその幾枚も重なった状態が聖書のページのように見えたからとの事。元々のセンマイは黒色であるが、東アジア以外の海外ではパッカーにある大型洗濯機のような機械で洗浄漂白(ブリーチ)したものが好まれる。
【用途】センマイ刺し(加熱済)、中華食材(炒め物や飲茶)、煮込み
14-11赤センマイ
【別名】ギアラ、アボミ
【英語】 Abomasum(北米 豪NZ)
【中国語】皱胃(zhou4wei4)
【牛の部分】 牛の第四胃。
【特徴】若干赤みがかっており、脂肪も付いていて柔らかい。第一胃ミノ、第二胃ハチノス、第三胃センマイまではに分類上は食道であって、第四胃の赤センマイだけが、本来の胃であって唯一消化酵素を分泌する。
【用途】焼肉、煮込み