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「プレイヤーからマネジャーへの転換」vol.8

2019/07/05 野元義久

企業における最も古典的な断絶であり、ダイバーシティ対応への鍵ともなる、
「”優秀な個人プレイヤー”から”チームを率いるマネジャー”への転換」をテーマに連載しています。
月刊人事マネジメント(株式会社ビジネスパブリッシング)

今号は「巻き込むためのスキルを備える」です。
これまで、マネジャーの視界で問題を発見することをお勧めしてきました。
その具体的なヒントとして問題設定型・問題創造型で、自らありたい姿を定めていくことも紹介しました。
しかし、問題のレベルが高くなると自分一人では解決が難しくなります。
当然ながら、自部署の後輩だけでなく、上司や関わる部署のメンバーの協力を集めて問題解決に臨むことが必要になります。今回は、“問題解決にメンバーの協力を集めるヒント”を考えてみましょう。

vol.8 ◆◆巻き込むためのスキルを備える◆◆

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関わって欲しい人をたくさん挙げ、期待する役割を考える

まず、協力してもらえると嬉しいメンバーを出来るだけ多く挙げます。その時に“この人はダメだろうな・・”とか“苦手だからな・・”“自分から声を掛けられる関係にないからな・・”というオモイがよぎるかもしれません。
しかし、ここではリストから外さずに、名前をたくさん書き留めておくことが大切です。何よりも、これまでの自分では解決が難しい問題に取り組むのですから、小さな可能性を大切にして幅広く考えてみましょう。そしてリストに挙げながら、その人にどんな役割や行動を期待しているのかを考えてみます。

役割の例:
・上位層に説明してもらう役割
・予算配分の承認してもらう役割
・一緒に作業してもらう役割
・アドバイスや情報をもらう役割
・部署をまたぐときに調整してもらう役割 等々

意欲と能力を観察し、働きかける

さて、次はリストに挙げたメンバーの観察です。観察の切り口は2点です。

・やりたいか?:この問題の解決に関心・意欲があるかどうか
・やれるのか?:期待する役割・行動を担ってもらう能力・経験があるのか

観察を踏まえて、協力を仰ぐ働きかけを考えます。
特にやりたい度を上げるためには、その人にとっての問題解決の意味をクリアにしてあげる必要があります。“そもそも、その人は何をやりたいのか。何を気にしているのか、大事にしているのか”を普段から把握しておかないと、本人にとっての意味と協力して欲しいことをつなげられません。もう少し具体的に言うと“その人が日ごろ、何を、良く話しているか。どんなことに喜怒哀楽を表しているか”をみておくことです。そして“その人の言葉”とつなげた説明をしていくと上手く進むことが多くあります。

あなたから直接お願いしにくい人には、誰かを通じて働きかけねばなりません。誰と誰がよく話しているか、誰と誰が肯定的なやり取りが多いか等をみておくと、協力が仰ぎやすくなります。「関係者マップ」を書いてみることもおすすめします。自分と関わって欲しい人たちのそれぞれの関係の“質と量”を表現してみます。近い人には話しやすいのですが、自分と遠い場所にいる人に協力してもらえるかが鍵です。関係者マップを眺めて、誰から、どのように働きかけていくかを考えてみると新たなアイデアが出てくるかもしれません。

関係者マップ【例】

相手に合わせて働きかけを調整する

自分からの働きかけを相手の好む(好まない)コミュニケーションに近づけていくこともおすすめします。例えば、相手が単刀直入に結論から話すことを好むのか、それとも、急に迫らないでじっくり何度も話していく方がすんなり聞けるのか、を見極めます。ここでは好むコミュニケーションを見極める代表的な手段の一つとしてソーシャルスタイルを紹介します。

・感情の表出が強いか・控えめか
・自分の意見の主張が強いか・控えめか

この2つの軸で、結果4つの象限で相手のスタイルを分けてみます。
それぞれの特徴は添付資料に譲りますが、大切なのは、
それぞれのスタイルは“どんなコミュニケ―ションを好むのか(好まないのか)”を考えてみることです。

ソーシャルスタイル

例えば、ドライビングスタイルには“単刀直入に結論から”“こちらも凛とした強い姿勢で臨む”方がスムーズに進むと言われています。逆にその人の権限を脅かすような関りをすると反撃に合います。好む誉め言葉は“さすがですね”だそうです。

エクスプレッシブスタイルには“(アイデアに対して)面白いですね”、
エミアブルスタイルには“いつもありがとう、あなたがいるから上手くいくんです”、
アナリティカルスタイルには“(考えが)深いですね”だということです。

ただし、スタイル分けには注意が必要です。
万能のように思いこみ、決めつけることで、かえって誤解やストレスを与えることが増えてしまいます。
便宜上、4つの象限を使っているだけで、本来は一人一人が好むコミュニケーションは異なります。
4つのスタイルにシンプルに分けると言うよりは、その人において“どのスタイルがどれくらい強いだろうか(人はすべてのスタイルを内包している)”という観察が適切です。

さらには、自分がどんな事実を観察して、相手のスタイルを見極めたのかを認識しておきましょう。
一つの事実をもとに相手の特性を決めつけてしまいがちな自分に注意して、“このスタイルかな”という仮説を持ったら、他の事実も観察し続けて見分けを調整していくと良いでしょう。結局、この観察を続けることが、相手の望んでいることを丁寧に推察できるようになり、その下地が相手を尊重し誤解を生みにくいコミュニケーションへとつながります。
最後に、“相手に迎合する”のではなく“少し自分を調整する”ということを忘れないでください。
自分を変えるのではなく、ちょっと調整をしてみるという軽い気持ちで臨むことをおすすめします。

“巻き込む”とはいうものの、簡単なことではありません。
ある程度のヒントはありますが、人間相手なのでいつも上手くいくとは限りません。
マネジャーとしての行動は、自分を含めて“人を丁寧に観て、考えて、やってみて、振り返って調整する”ということを続けるということに他なりません。

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