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ランドマークサテライトの考察と攻略

今年のWSOPからサテライトがすべてランドマークサテライトになりました。ランドマークサテライトは、通常の生き残りを賭けたサテライトとは違い、ある一定のチップ量に達成すると権利を獲得し抜けることができます。WSOPのサテライトは参加者のレベルが低くスキルエッジがとても出る印象です。僕は2023年は11回出て5回インマネ、2024年は15回出て4回インマネしました。僕のようにバンクロールが小さいプレイヤーにとってはとても重宝するトナメです。

WSOPで参加したランドマークサテライトは通過した場合は通過者のチップは破棄されシートアウトします。破棄されたチップ量に関係なくランドマークの取得条件は変更されません。ランドマークがなくなった場合は余ったキャッシュを残りの参加者で取り合います。大抵の場合はラスト1個をディールする事が多いように感じました。以前ポーカー連盟が行っていたMastersやASPTで行われていたサテライトはランドマークを買い取るという形で、残ったチップで再参加可能というものでした。今回取り上げる内容はシートアウトし1権利のみ取れるものを想定して記事を書いております。

相似点と相違点

通常のサテライトは終盤にバブルファクターが大きくなりすべてのハンドで降りるのが正しいプレイという状況が生まれます。極端な例を示すと、10人通過で残り12人、自分はBBで20bb、BTNの30bb持ちからAll-inが来ました。左隣は2bb, 1.5bb, 3bbのようなスタックを持っているプレイヤーの場合、仮にBBでAAが配られたとしてもランダムハンドに対して85%のエクイティでは、85%で得られるチップの利益よりも15%でバストしてしまう損失のほうが圧倒的に大きいのでコールすることができません。このことを理解しているのであれば、プリフロップは何bb持っていたとしてもバブル時にAll-in以外のサイズを使うことがEVマイナスなのがわかると思います。もしAAで2bbオープンしたとしても、カバーしているもしくはエフェクティブスタック(ES)が近いプレイヤーからAll-inが飛んできた時にコールするための正当性が得られません。

通常のトナメは如何にプレッシャーを掛けるかを大事にするゲームです。一方、ランドマークサテライトは生き残ることよりもランドマークを取得できるチップ量を稼ぐのが重要なゲームです。よって、通常のサテライトとは異なり、チップEVのみで損得を考えるゲームと実際にプレイする前は思っていました。実際には概ね正しい考え方ですが、ランドマーク取得付近でEVの非対称性が生まれる事に気が付きました。

EVの非対称性

ここでのEVの非対称性というのはスタックサイズによりプッシュ側とコール側でEVが異なることによる違いを指します。ポット獲得後のスタックがランドマークの基準を満たない場合はチップEVが適用されるのですが、ポットの獲得後のスタックが基準値を多く上回る場合はチップEVとは異なるEVになります。

具体的な例をあげると、100kでランドマークを達成する時、BTNで90k(45bb)持ちでAAで4k(2bb)にオープンしました、BBから30k(15bb)のAll-inが来ました。この時のEVを考えてみます。BBのEQは仮に強めに20%とした場合、EV = 18.5bb(15+2+1.5) x 0.8 - 13bb x 0.2 = 14.8bb - 2.6bb = +12.2…としたいところですが、必要なチップは5bbなのです。なので、 EV = min(18.5bb, 5bb) - 2.6bb = 2.4bb しかありません!損失は青天井なのに利益にはキャップが掛かってしまう。これをEVの非対称性と呼びました。今回はカバーされてない15bbでしたがこれが90k(45bb)ESだと、EVは-3.6bbとなりAA(EQ80%)だとしてもマイナスのEVになってしまいました。

ChipEVとキャップされたEV

はみ出すスタックが大きければ大きいほど得られる期待値は小さくなります。逆に言うとある程度スタックを持っている場合は通常のサテライトの様にビックスタックを持っている人に対してプレッシャーをかけることができます。つまり、後ろのプレイヤーのスタックサイズによって戦略が異なり、自分のスタックサイズとはみ出すスタックサイズを意識しながらプレイするのが大事になります。

リーサルコンボのプランニング

なんとこのゲーム、ランドマーク取得付近のスタックでBBになるとコールできなくなります。他のプレイヤーのミスがない限りブラインドで絶対に2.5bbを失うゲームと変わってしまうのです。つまり、BTNからUTGまでにスチールしきってランドマークを取得する必要があります。またブラインドの上昇もとても大事で終盤になるとBB+SB+Anteがランドマークの1/10を満たすことがあります。つまり、あと10bbで良いのであれば4回ブラインドをスチールすれば良いわけです。逆にいうとスチールしてもランドマークを達成しない場合は無理せずにブラインドの上昇を待つほうが得策です。タイマーを気にしながらレイトポジションでブラインドが上昇するのを伺いましょう。実際、僕がランドマークを達成したほとんどはブラインドの上昇後にスチールしてそのまま達成するでした。そのうち1回はコールされてラッキーして、もう1回はチップを失ったけどディールが成立したやつです。逆に負けたサテライトはスチールに失敗し砂利スタックになってそのまま飛翔というのが多かった気がします。(BTNでAnyAll-inしたのを後ろからハンド覗いて笑った中国人許さん…!めっちゃ悩んでたAハイにコールされて負け→砂利→飛翔でした。)

ランドマークの推移

ランドマークサテライトに参加する前まではランドマークの取り合いになるという認識でしたが実際はそうではありませんでした。フィールドが緩いということもありポストフロップが多く開かれ、タイトパッシブなプレーが広く見られました。そのためか終盤までほとんどランドマークを取得する人がいなく通常のサテライトトーナメントのような推移をしました。実際3betする人は殆どいなくPFAIになることはほとんどありません。なので多くて20bb程度の増減を繰り返すので、レイト後のブラインドで100bbを集めないと行けない条件だと、ほとんど達成するのが不可能かなと思いました。

想定としては後半はランドマークの取り合いになるという予想でしたが、実際にはそんな事はありませんでした。参加人数と分散によってランドマークの達成頻度が予測できると思うので余裕があればシミュレーションしてみようと思います。

おわりに

ランドマークサテライトを実際にプレイして通常のサテライトとの相違点、ChipEVとの乖離について考察しました。木原さんがNipponSeriesの日記にランドマークサテライトについて言及している記事があるようなので後ほど比較してみようと思います。

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