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各金融事業者が公表した「顧客本位の業務運営」 に関する取組方針・KPIの傾向分析(2018年11月7日)

これから資産運用をはじめるひとは、金融庁が発表した「各金融事業者が公表した「顧客本位の業務運営」 に関する取組方針・KPIの傾向分析」を必ず読むべきです。しかし、残念なことに「顧客本位の業務運営」をうたっている金融庁は検索エンジンと相性が悪いうえ、スマートフォンなどの携帯端末で表示しづらいPDFファイルが大好きです。

誰に忖度しているのでしょうか?

金融庁から怒られないと思うので見やすいHTML版をここに記すことにします。忙しい人はページ後半の4項から読むことをおすすめします。

※投資信託の販売会社における比較可能な共通KPIについては以下のURLをご参照ください。

1. 「原則」の採択状況

18年9月末までに「顧客本位の業務運営に関する原則」(以下、「原則」)を採択し、取組方針を公表した金融事業者は1,488社。そのうち416社が自主的なKPIを、39社が共通KPIを公表。

18 年3月末以降、「原則」採択事業者の増加ペースは鈍化。

※グラフは省略します。

2.公表状況

全体の傾向

概ね、各原則に対応して取組方針を策定し、定期的に見直す旨、記載。

主要事業者の多くは、取組方針に加え、それを実現するための具体的な施策(アクションプラン)及び成果指標(KPI)を時系列で公表。一方、成果指標等を踏まえ、取組方針や具体的な施策の見直しを実際に行っている先は、主要行等以外では限定的。

好事例

グループとしての共通の基本方針のもと、銀行・信託・証券・資産運用といった傘下エンティティ・機能毎に、共通軸で取組方針やアクションプランを策定、グループ一体で取組む姿勢を明確化。

顧客本位の業務運営に関して、外部有識者の意見を反映する枠組みを導入。

取組方針とアクションプランやKPIの関係について、図表を活用しわかりやすく体系立てて説明。

 専用のタブをHPのフロントページに設定し、顧客が取組方針やKPIの公表ページにアクセスしやすいように配慮。

懸念事例

「原則」の文言を若干変えた程度、あるいは、過度に簡略化した取組方針を策定しており、「原則」の趣旨・精神を自ら咀嚼し、具体的に実践するスタンスが欠如。

取組方針は公表しているが、具体的な施策やKPIなどが公表されておらず、どのような取組みを行い、足下でどのような状況にあるのかが不明。

取組方針やKPIをHPの投資家向けのページに掲載するなど、一般の顧客がアクセスしにくい掲載。

3.自主的なKPI

銀行における自主的なKPIには、以下の事項が公表数上位に並ぶ。

• 提供しているサービスや商品に係る事項(FP等資格保有者・保有比率、顧客向けセミナーの開催回数・参加者数、運用商品の商品ラインナップなど)
• 取引規模に係る事項(積立商品保有者数、預り資産残高など)

一方、利益相反管理や手数料等の明確化、業績評価体系等に関する事項は限定的。

こうした中、過去の実績値に留まらず、KPIの今後の目標水準も合わせて公表するなど、目指す姿をより具体的に開示している事例も見られる。

※自主的指標のランキングは省略します。

4.共通KPI-① 運用損益別顧客比率

さあ、ここからが本丸になります。

販売会社がどれくらいのリターンを個々の顧客に提供しているかについて、投資信託を保有している顧客の基準日時点の運用損益(手数料控除後)を算出した運用損益別顧客比率を見ると、数値を公表した36社合算ベースで、4割の顧客の運用損益率がマイナス

各販売会社について、運用損益率が0以上の顧客の割合をみると、9割台の販売会社がある一方で、3割台に留まる販売会社もある。特に、直販を行っている独立系の投信会社において、当該顧客割合が高い

なかなか衝撃的なデータです。銀行に預けるよりもお金をふやすことを目的に資産を預けた結果、4割のひとたちが資産を減らしているという話になります。はっきりいって異常でしょう。この世界にはボッタクリ会社とボッタクリ商品が存在しています。資産運用をするなら自分と金融庁だけを信じるしかありません。これから資産運用をはじめるひとはいまは金融の知識をもっていませんから、なにから学ぶかを考えないといけません。

歪なグラフが異常さを物語っています。約40%の顧客が資産を減らしています。手数料負けしている状態だと想像できますね。

一方で、約35%の顧客が資産を10%以上増やしています。
「パチスロですか?」

4.共通KPI-② 投資信託預り残高上位20銘柄のコスト・リターン/リスク・リターン

各販売会社の投資信託預り残高上位20銘柄のうち設定後5年以上の投資信託について、コスト・リターンを検証したところ、概ね、コストの上昇に伴いリターンが低下する傾向が見られており、コストに見合ったリターンは
必ずしも実現していない。


リスク・リターンは、リスクの上昇に伴いリターンも一定程度上昇する傾向が見られたが、シャープレシオ(リターン/リスク)で見ると、1.6台の販売会社がある一方で、0.2台に留まる販売会社もある。

業態別に見ると、銀行よりも証券会社や(直販を行っている)投信会社の方が、数値のブレ幅が大きい。

コストは、販売手数料率(税込)と信託報酬率(税込)の合計値。リターンは、過去5年間のトータルリターン(年率換算)です。
トタールの手数料が低いほどトータルのリターンが高くなります。
金融庁「ここテスト(結果)に出るからね」

明快な指標が記されています。一部の証券会社(ネット証券)ならコストを抑えながらリターンを得て資産を増やすことができることになります。

4.共通KPI(総括)

共通KPIを公表するためには、経営陣を含む関係者が、顧客のリターンや提供商品のリスク・コスト・リターンに関心を持ち、当該数値を把握するためのシステム対応を図り、モニタリング体制を構築することが求められる。今後、こうした取組みを行う事業者が増え、共通KPIが数多く公表されていくことを期待。

個別に見ると、直販を行っている独立系の運用会社において、運用損益率が0以上の顧客割合や取扱商品のシャープレシオが高い。 (注)シャープレシオが高くなるにつれ、運用損益率が0以上の顧客割合が高くなる傾向。

直販を行っている独立系の運用会社は、積立投資を行っている顧客割合が高く、運用効率の良い商品を積立形式で提供することにより、より多くの顧客にリターンを提供していることが窺われる。

販売会社、運用会社ともに顧客本位の視点で二極化しているとわたしは感じます。

原書は小さくて読み取れないので拡大しました(笑

まずこれらの会社は、金融庁に報告しているだけましな販売会社、運用会社といえます。

ネット証券は運用損益0以上の顧客割合60%台でほぼ横並びです。ネット証券は全般的に低コスト商品を揃えていますが、海外債権やFXなどハイリスク商品があるぶん顧客の損益にばらつきが出ているものと推察します。

上位2社のコモンズ投信とレオス・キャピタルワークスはアクティブファンドを運用する会社です。どちらも信託報酬率1%前後のアクティブファンドですが、運用損益0以上の顧客割合が90%を超えています。アクティブファンドよりインデックスファンド、信託報酬率は低いほどトータルリターンが高くなるのが資産運用のコツですが、この2社は例外的な存在になってます。

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