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支店長の「高校教師型」化(地銀向けニュースレターVol.55)

検討のキッカケに

ニュースレターでは、本心から「こうしては」「こうあってほしい」ということを書いています。しかし、今回はそこまで信念を持ったものではありません。「可能性を拡げるための検討のキッカケ」になればいいな、という思いで投げかけます。

「高校教師型」

投げかけるアイデアは、支店長の「小学校の先生型」から「高校教師型」への転換です。

現在の支店長は「小学校の先生型」です。小学校では、担任の先生が、クラスに関わる責任を負っています。国語・算数・理科・社会等、ほぼ全ての教科を担任の先生が教え、一部の専門科目(音楽等)のみ科目専担の先生に委ねています。

地方銀行もこれに類し、M&Aなど専門性を要する一部業務は本部の専門部隊や外部に委ねるものの、それ以外は支店長の職責となっています。

それに対し、高校では、担任がクラスの責任を負うのは変わらないものの、直接授業をするのは自身の専門科目のみです。それ以外は、各科目のプロである他の先生に授業を委ねています。

この形式を採り入れるのが「高校教師型」です。店の業績・運営等に関する責任は支店長が持ち続けます。支店長が得意な領域も、引き続き支店長が指導します。一方で、それ以外の業務は支店長から切り離して、「適切な」他者(本部役職員・別の支店長など)に委ねるのです。法人先・個人先にかかわらず、お客様対応の進め方や提案にむけた作戦の検討も、切り離しの対象です。お客様Aは現・支店長が営業担当者の相談相手となるものの、お客様Bは本部の〇部長、お客様Cは他店の△支店長が相談相手になるイメージです。

組織全体で「適切な」人がサポートし、組織全体で向き合い取り組むことで、お客様対応も含めた支店業務を、進化・深化させていく考えです。

3つの背景

アイデアを考えた背景は3つあります。

1つは、支店運営の大変さが増していることです。昔より少ない人数・短い時間で支店業務をまわし、若手の離職増加への心配など「人」に関するケアの必要性も高まっています。大事な資産である「人」への対応を疎かにしないためにも、”全て支店長”からの脱却の必要性を感じました。

2つめは、ソリューションの多様化です。「小学校の先生型」は、支店長が担当者よりも知識・経験が豊富で、適切な指導が期待できるときに機能します。融資獲得が絶対的中心の時代には、その道で経験を積み重ねてきた支店長に指導を委ねるのは理に適っていました。しかし、提供可能なソリューションが広がっていくなか、支店長が未経験なものも数多くあります。研修が担当者に偏っているため、支店長より担当者の方が知識・勘所を持っているケースも珍しくはありません。ソリューション提供の面からも、全てを支店長が指導することの限界を感じます。

3つめは、女性登用の側面からの制約排除です。近時、女性支店長が増えてきました。これまでの経歴をもとに、個人特化店での支店長を任されるケースが多いようです。この図式だと、女性支店長の数は、個人特化店の数に制約を受けます。融資経験が豊富でないと、指導への不安から一般店の支店長になれないのは、可能性を狭めてもったいないことです。

お客様も嬉しいはず

「高校教師型」を、お客様も望む可能性は大いにあります。前提として、お客様は自社・自身にプラスとなる、良い活動・提案をしてほしいと思っています。

今の支店長ではなく、すごく世話になった何代か前の支店長(現・本部のD部長)が考えてくれた提案の方が、お客様の深い理解に基づいていて受け入れられるかもしれません(この場合、当該お客様に関する営業担当者の適切な相談役は、D部長)。ある業界のお客様への提案は、その業界への対応経験が豊富な別の支店長(E支店長)の方が、業界特有の事情を踏まえた、痒いところに手が届くものとなりそうです(同、相談役はE支店長)。M&Aなど専門性の高いソリューションの提案も同様です。

お客様は、銀行組織全体のなかで「適切な」人が一緒に考えてくれたものを、より良い活動・提案と思うのではないでしょうか。

荒唐無稽だろうか?

先ほど、アイデアを考えた背景は3つあったと書きました。正確に言うともう1つあります。「オンラインミーティング環境の発達」です。コロナ前のように、行内の日常コミュニケーション手段が対面か電話しかなければ、この案は成り立ちません。しかし、各行とも急速にzoomのようなオンラインミーティング環境が整備され、離れた場所(本部や他支店)にいる人とも、顔を見ながら、資料を共有しながら相談をすることができるようになりました。物理的な場所の制約は、過去の遺産になったわけです。オンライン環境が整ったことで、あながち「高校教師型」は荒唐無稽な策とは言えなくなったのではないでしょうか。

今回は、「可能性を拡げるための検討のキッカケ」として投げかけました。0(やらない)か1(やる)かの2択で考える必要はありません。新任から2店目までは「高校教師型」で3店目から「小学校の先生型」というやり方や、特定のエリアだけ「高校教師型」というやり方だってあり得ます。この検討は、突き進めると「地方銀行の支店とは」にも繋がる意味あるものだと考えます。
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変化の時代にあって、多くの組織で、固定概念にとらわれず、可能性を拡げる検討が進むことを期待しています。
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以上、高橋昌裕からのYELLでした。


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