見出し画像

ER(Employee Relations) for ER(Employee Retention)(地銀向けニュースレターVol.56)

多くの「変化」が起きている

近時の地方銀行は、以前よりも多くの「変化」が起きているように見えます。新組織の立上げや組織改編、特徴的な人事、戦略レベルの取捨選択、新たな商品・サービスの導入、前例のない施策の実施etc…。役職員の方から直接「変化」を教えてもらうこともあれば、間接的に業界紙誌の記事を見て「変化」を知ることもありますが、いずれにしても「変化」の数は増えていそうです。

結果として、地域特性や県内順位、こだわりなどによって、銀行ごとの特徴(らしさ)がでてきたのは望ましい動きと言えるでしょう。

”先行きPositive”と捉える人は増えてない

ところで、Vol.49『先行きPositiveと捉える人を増やしたい』では、組織内で前向き・具体的な「変化の数」が多いほど、業界や自行について”先行きPositive”と思う人が増える、と私説を書きました。これに照らすと、”先行きPositive”と捉える人がもっと増えていて然るべきなのですが、まだそうなっていません。

原因は、起きている「変化」を、行員(特に、営業店の若手)が”意味あるもの””明るいもの”と認識していない点にありそうです。「変化」が起きていないならまだしも、起きているにもかかわらず、それが心境変化に良い影響を与え得るメッセージとなっていないのは、勿体ない限りです。

「変化」の事実・意味を理解していない

さらに原因を掘り下げます。

「変化を」”意味あるもの””明るいもの”と行員が認識していないのは大きく2つの理由があります。

1つは、「変化」自体を知らないからです。

自信の処遇や業務に直接関係のないことを気に留めないのは、良くある話です。私が業界紙誌の記事で知って(=外部にも公表されている)、”これは面白いな”と思った当該行の「変化」について、行員との会話で話題にすると「そういうことがあったのですか」と、初耳な反応をされることは少なくありません。特に、営業店行員の場合、その傾向は顕著です。

2つめは、起きた「変化」自体は知っているものの、その意味合いを理解していないからです。

たとえば、自行が持株会社を設立したならば、当然に知っています。しかし、なぜ持株会社化をしたのか、その選択が意味するところや、将来に広がった可能性についてまでは分かっていません。そのため、「変化」が心躍るものとはならず、単なる事実としての把握にとどまっています。

これらのことから、せっかくの「変化」も、”先行きPositive”と思える材料とはなっていません。Vol49に書いたとおり、”先行きNegative”と思う人が多ければ、組織に活力は生まれず、その重い空気を感じて若手は「ここに居続けていいのだろうか」と不安を覚えます。これが早期離職の原因にもなっていきます。

「変化」の伝え方が不十分

本部からすると、事実だけでなく「Why(なぜこれをするのか)」や「So What(これがどんな意味をもつのか)」も含めて発信している、と言いたいかと思います。その通り、通達には、WhyもSo Whatもしっかり書いてあるでしょう。

しかし、現状では質(やり方)・量(発信数)ともに不十分という認識にたつべきです。

ER for ER

地方銀行は、投資家対応でIR(Investor Relations)の機能を持っています。類似のものとして、前述の目線での行員とのコミュニケーションに責任を持つER(Employee Relations)の機能を明示的に設け、担当者を置くぐらい力を注いではどうでしょうか。こうした、意図をもった丁寧で戦略的な行員へのコミュニケーションの積み重ねが、銀行で起こしている「変化」についての正しい理解、”先行きPositive”と思える感情の醸成、そして行員の定着(ER:Employee Relations)に繋がります。

ER(Employee Relations)for ER(Employee Retention)です。

なお、両ERともに”人事部門の機能”とする解説もありますが、私は”経営・企画部門の機能”とする方が良いと考えます(ただし、機能が発揮されることが大事なので、どの部門に付与するかは大きな問題ではありません)。

インタビュー形式の活用

Employee Relationsの質・量について、少し考えてみましょう。現状の発信方法では届いていない・伝わっていないわけですから、+αの打ち手が必要です。

本部から遠い場所にいる営業店の行員は、どのような発信(媒体・形式・内容)にはきちんと目を通しているかを把握し、Employee Relationsの手段として活用する手はあります。年次別や業務別の研修があるたびに、「変化」について伝える機会を設けても良いでしょう。

そのほか、オススメするのは、インタビュー形式のものです。動画でも、紙媒体の社内報でも構いません。”毎月”定期的に、先月あった当行の「変化」と、それにまつわるWhy・So Whatを、インタビュー形式で浮かび上がらせ、Employee Relationsの材料として使うのです。ポイントは、インタビュアーの選定です。興味を惹くためにも、「当たり前」的ではない人を選びましょう。

Why・So Whatをうまく引き出すことのできる外部の人材(伝えるべきメッセージを明確にする力がある人)、もしくは営業店の若手行員(同世代の行員が興味をもって見てくれることに期待)にやってもらうと目的達成に繋がりやすそうです。
        .
        .
ER for ERによって、「変化」を、事実として知るだけでなく、意味合いまでを含めて理解を促し、多くの行員が”先行きPositive”と思ってもらえる状態になることを期待しています。
        .
以上、高橋昌裕からのYELLでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?