株価はランダムなのか? その5
前項で期待値が初期値を上回る結果を得た。
例えばD=0.05、 初期値$${s_0}$$=1000としてt=5とすると以下のようになる。
株価が上がる確率も下がる確率も1/2としてランダムに動かすと期待値が初期値を上回る。中央値は初期値なので儲かる人と損する人は半々になるが、分散投資すれば期待値に近づくので儲かってしまう。
株には保存則はないのか!? なんか直感に反するけど。
株価の動きをランダムとするモデルがそもそもおかしいのか?
率で変動
よく考えると、もう一つ前提があった。上がる・上がるは額ではなく率であった。「その1」で株価をsとして対数をとった変数xを考えた。
これが同じ刻み幅Δxで確率1/2で左右に移動する(下がる・上がる)とした。
対数xで同じ刻み幅でも株価sでは値が小さいほど刻みが小さくなり、大きいほど刻みが大きくなる。つまり大きく上がって小さく下がるので結果として上がり幅の方が大きくなる。
対数をとって正規分布だった曲線が値の小さいところでは横軸方向に縮んで(33)により縦軸方向で上がり、値の大きいところでは横軸方向に伸びて(33)により縦軸方向で下がる。
期待値が初期値を上回る、言い方を変えると平均株価が上がって分散投資をすれば儲かるのは率で動くモデルを考えたから。
収益率
収益率を考えてみよう。
時間tの単位を年として年率(α)にすると
になる。具体的な値は、例えばD=0.05ならば
Dが小さければαはDに近い値になる。
拡散係数Dが大きければ収益率も高くなる。
よく動くほど儲かるようだ。
こんなことが成り立つメカニズムを考えてみる。
メカニズム
マネーゲーム村
株の売買だけやっている村があるとする。村人は儲けることを目指して株を売買するが、そのためには収益率αに見合うようにお金が増える必要ある。ベースマネーが増えるのか信用マネーが増えるのか分からないが、とにかくお金が増えないと成り立たない。株価とお金が増えていくだけなので収益率αはインフレ率と言ってもいいだろう。
この場合は期待値は初期値と実質的に同じなので、損する人の方が多くなる。
上場企業村
上場企業と株の売買をする村人からなる村があるとする。株価は企業の利益に比例するとして、収益率αは企業の増益率に等しくなる。企業は増益率で評価される行動をとる。すなわち毎年増益を目指す。
現実の社会は上場企業村のモデルに近い気がする。本当のところは分からないけど。
率で利益を増減させる振る舞いをする企業があって、株価は利益に比例して、どの企業が成長するか分からない状況、を表すのがランダムに動く株価モデルであるというのが現時点の私の理解だ。
率で評価される社会
現代社会は率で評価される社会だ。GDPは対前年x%アップ、企業も売り上げ・利益が対前年y%アップといた具合に。この前提のもとで人々は行動して株も売買される。率、すなわち指数関数的にフローもストックも増えていかないと人間は満足できないのかな。期待値が指数関数であるとか、異常な気がする。
過去100年とか200年では経済規模は指数関数的に大きくなり生活レベルも飛躍的に向上した。しかし、このまま数十世代先までこの状況が続いていく気がどうしてもしない、というのが最近のモヤモヤだ。
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