ただ、そこにいる

なんてことのないことが、わたしをつくり彩っているのだと思う。

民放ドラマを久しぶりに見る。
アンメット、まだ3話だがめちゃくちゃに好きだ。
記憶障害の後遺症を患った外科医の主人公は、文字通り記憶障害があり1日単位の記憶で生きている。過去のことは日記に残す、それを読んで、記憶を取り入れることから1日を始める。
そんな彼女に同僚がこう言葉をかける。
「強い感情は忘れない。どんなに記憶を無くしたとしても、その時に強く感じた感情は心に残る。」(曖昧)

私は幸運にも五体満足で心身共に健康だ。歳を重ねる度に、記憶に残したくない出来事ほど頭にこびりつくのはなぜだろう。

2年前、22歳の私は、恐らく新しい世界を見た。目の当たりにした。体感した。
ここでは詳細は書かないが、生命を循環することに一直線な人々と出会った。
ある晩、いつもの様に皆で円になり夕食を食べ、そのままだらだらと昭和歌謡を聴きながら大豆の選別をしていた。この豆はAランクだ、その豆はBランクだ、今の歌手は誰だ、と話しながら。
なんてことのない時間。ただ、これだけの時間に、泣きそうになった。いや多分泣いてた。私はこの時間にずっといたいと強く、強く願った。あの時の心の衝動が2年経った今でも忘れられない。障害を患う同僚にかける医師の言葉の様に、この記憶は、頭にではなく心に残っている。


死ぬまでに見たい景色、知りたい感情、出逢いたい瞬間がある。
世界一周だってしたいし、自分のブランドだって作ってみたい。今の私が描ける夢は沢山ある。
だけど、ほんとうに欲していることはきっと文字では書けない。心が感じ取った強い感情が私が行く道のコンパスになっている、と思う。

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