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「なんだか、マグロみたい」

 父の入院をきっかけに、母、姪、私の三人で、実家で過ごした今年3月のこと。姪が言ったのか、私自身の口から出たのか、とにかく、その時私が感じていた思いを見事に言語化したのが、この“マグロ”発言だった。

 マグロみたいと形容されたのは、母である。

 いったいどこからその気力は湧いてくるのかと不思議に思うほど、超パワフルなのだが。

 特徴その一、思い込むと真っ直ぐ。真に受けやすいと言うか、信用しやすいと言うか。特殊詐欺に引っかかってしまうのではないかと心配になる。未だその手の電話がかかって来たことはないらしいが、野生の勘で「コレは大丈夫」「コレはダメ!」と正しく判定される事を願う。

 特徴その二、筋金入りの心配性。
父曰く、家族親族は当たり前、友人知人やその家族、挙げ句の果てに、ニュースで見聞きした見知らぬ国の人々に至るまで、その身の上に思いを馳せ、心配し、心を痛めているらしい。

 特徴その三、じっとしていない。 
これこそが、最大の特徴だ。じっとしているのは、おそらく眠っている時だけ。しかし、なかなか眠れない体質なので、眠っているはずの時も、じっとしていないかもしれない。

 私の考える“じっとしている”とは、例えばソファーに腰掛けて、テレビなんか見ながらお煎餅食べてぼ〜っとしている、なんてことを指しているが、そういう時がほとんどないのだ。

 人間にはありますよね?たまにはそういう時が。

 両親は二人暮らし。家事における父の担当は、朝食後に食器を洗う事。残りのほぼ全ての家事は母の双肩にかかっている。

 掃除洗濯はもちろん、買い出し、調理、休みなく。
 食材をたくさん買い込んだ日は、台所でずっと下拵え。朝食が終われば昼食、昼食が終われば夕食と、常に次の献立を考えている。
 昨今の難しいゴミの分別もきちんと。新聞、広告、雑誌、そして生協のカタログまで、情報チェックに余念がない。

 ベランダで花を手入れし、鉢植えに話しかけ、愛でる。仏壇の切り花も大切に扱うので長持ちする。
 細かい手仕事も得意で、時間があれば何かを作り出す針仕事に勤しむ。最新作はもふもふのシマエナガちゃんと、ミビちゃん(小猫のぬいぐるみ)のお洋服。
 突然、ブィーンと音がする。百均でゲットした毛玉取り器の出動だ。洋服の毛玉は絶対に許さない。

 揺るぎなき主婦魂。主婦界の4番バッター!いや、大谷翔平か?二刀流なんてもんじゃない、何刀流だ?

 とにかく止まらない止まらない。


 マグロという生き物は、泳ぐのをやめない。この世に生まれたその日から眠っている時も泳ぎ続けるそうだ。やはり同一生物か?


iPadでLINEのチェック。ついでにちょいと麻雀ゲーム。テレビ体操の時間だわ!あ、明日は古新聞出す日、束ねておかなきゃ。おとーさんお水飲んでる?◯◯ちゃんどうしてるかな、電話かけてみよう。あらやだ、よく聞こえない。ちょっと補聴器直しに行って来ます。

 うわッ!
 マグロどころの騒ぎではない💦

 あのぉ〜、お忙しいところ申し訳ございませんが、ちょっと宜しいですか?
 先日迎えた満88歳のお誕生日、おめでとう🎉

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