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親友証明書と100の質問、弔事のこと。

子供の頃にとても大切にしていたものがある。
それは、幼なじみからもらった「親友証明書」だ。
少女マンガ雑誌の「なかよし」だったか、「りぼん」だったか、
記憶は曖昧だけれど、付録についていた「親友証明書」に
彼女の名前と誕生日、好きな食べ物や好きな本などが
幼い字で書かれた「学生証」のミニ版みたいなものだった。
もらったとき、あまりにも嬉しくて
宝物箱に入れて、ときどき取り出してみては
彼女の詳細が書かれた証明書を見入ったものだ。
好きな食べ物がなんと書かれていたか忘れたが
好きな本が「幻魔大戦」で、
好きなテレビ番組が「風雲たけし城」
あこがれの人が「ビートたけし」と書かれていたことは
その手書きの文字の形も含めて、いまだに鮮明に覚えている。

親友と証明されたことも嬉しかったが、
なにより彼女の取り扱い説明書的な
一問一答を密かに読むことが
とてもワクワクしたのだと思う。

雑誌でも、俳優やアイドルの一問一答の欄が好きだった。
好きな言葉、好きなおにぎりの具、
カラオケの十八番、最近買って気に入っているもの……
誰かの答えを読むのも、
自分が考えて答えるのも、
とてもおもしろい。
人によって、まるで答えが違うのも、とてもおもしろい。

自分が俳優にインタビューするとき、
時間が許す限り、必ずする質問がある。
それは、
太陽、月、空、星、風、自分をたとえるならどれ?
理由を含めて教えてください」
というもの。

ある人は「空」と答え、
「空には、太陽も月も星も風もすべてがあるから」と語った。
ある人は「風」と答え、
「風のように、人から人へ素敵なものを運びたいから」と話した。
またある人は、「このなかにはないけれど……」と断ったあと、
「花。多くの人が見て癒やされる存在でありたいから」と答えてくれた。
答えも理由も、人それぞれで
10人に訊けば、10通りの答えと理由が返ってくる。
その人がどんな人がよくわかる質問で
個人的にとても気に入っている「インタビューの武器」だ。

この質問を作り出すきっかけとなった本がある。
「谷川俊太郎の33の質問箱」というものだ。
詩人の谷川俊太郎が、ユニークな質問を
対談相手にぶつけていく対談集なのだけれど、
すべての相手に、同じ質問を繰り出していく。

たとえば、こんな質問だ。

素足で歩くとしたら、以下のどの上がもっとも快いと思いますか?
大理石、牧草地、毛皮、木の床、ぬかるみ、畳、砂浜。

「谷川俊太郎の33の質問箱」

自分がこんな質問をされたら、理由を含めて本気で考えるし、
ほかの人がどんな答えも出すかも気になる。
そんなことを思いながら、読んだ記憶がある。

おかげで、100の質問をつくり、
誰かに質問する機会をつねに待っている。
自分が考えた質問だったか、
なにかの雑誌で読んだ質問だったか忘れたが
「好きな電化製品はなにですか? その理由は?」
という質問も好きだ。

話は変わって。
先週末に受けたセミナーで、「弔事」がテーマになった。
自分が亡くなったとき、誰にどんな弔事を読んでもらいたいか、
という質問があったのだ。
誰に読んでもらいたいかを考えながら
誰の弔事を読みたいか、ということも考えた。
感謝したいひと、大好きなひと、たくさんの影響をもらったひと。
母親や妹、大切な友達、仲間。
絶対に弔事を読みたい人が頭に浮かび、
「私が弔事を読みますね」と約束をした。
このひとの弔事を読む!と決めたら
不思議とワクワクした。

もちろん、まだまだ先のことだけど
このひとが亡くなったとき、
どんなひとだったか、伝えられたらいいなと思った。
実際に弔事を読めるかどうかは別として
私の大好きな推したちの弔事も読みたい。

「彼女は太陽のような人でした。なぜなら……」とか、
「好きな家電はレコーダーでした。理由は……」とか、
そのひとの、どうでもいいような、
でもそのひとがどんなひとかわかるような
そんな弔事を読めるといいなと、
それまでは死ねないなと、
もっともっと深く知りたいなと、
そんなことを思った。

自分自身にもこんな質問をしてみたら
もっと自分のことが、わかるかもなぁと
好きな電化製品を真剣に考えながら
楽しんでいる。

そのひとのことを知りたくて
考える質問っていいよなぁ。



谷川俊太郎の33の質問箱




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