『かさじぞう』と『ナビレラ』と
オタクが集まる新年会で
発表しあった今年の目標で
印象的だったものがあった。
韓国ドラマ『ナビレラ−それでも蝶は舞う』のように
若い時代にやりたいと思っていた夢を
思い切ってやってみる！というものだった。
『ナビレラ』は、70代のおじいさんが
若い時代の夢だったバレエに挑むお話で
いくつになっても、
情熱は生まれる、
いくつになっても
やりたいことは始められる、
そんな勇気を与えられる名作だ。
幼い日の夢や憧れに限らず
子供時代の出来事は
少なからずいまの自分に影響している。
私の場合、それが『かさじぞう』だ。
小学１年生だったか２年生だったかの授業参観日、
国語の授業で、『かさじぞう』がテーマになった。
貧しいおじいさんが新年を迎えるにも餅さえなく
お金を稼ぐため笠を町に売りに行くが、
ひとつも売れず、とぼとぼと帰途につく。
帰り道、雪をかぶって寒そうなお地蔵様を見て
「寒かろうに」と、売れ残った笠をかぶせてやるのだ。
おじいさん、それ売り物！というツッコミはさておき。
その晩、くだんの地蔵たちが
笠のお礼にと、おじいさんの家の前に米俵やら金貨やらを置いていく
というものだ。
これを読んで、どんな感想を抱いたか、
発表するというものだったと思う。
これに、幼い私はこう答えた。
「売り物の笠をすべて地蔵さまにあげてしまい
無一文で戻ってきたおじいさんを見て
『いいことをされましたなぁ』と褒めた
おばあさんは優しい」
この発表を聞いたうちの母親は
この日からことあるごとに
「その視点は素晴らしい」と褒めてくれた。
それが、幼い少女は嬉しかったのだろう。
以来、私は物語の感想を伝えること、
感動を伝えることに夢中になり
おとなになって、“ライター”になった。
自分の仕事に悩みが生じるたび
母が褒めてくれた『かさじぞう』を思い出す。
おそらく誰の心にも
幼い頃に心に刻まれた「バレエ」や「かさじぞう」があって
それはおとなになったいまも
どこかしらに生きているように思う。
『ナビレラ』では、バレエを学ぶおじいさんだけでなく
70代の弟子を持つことになる20代のバレリーノ（スランプ中）や
その師匠、おじいさんの妻や子供たち、
さまざまな登場人物が出てくるが
それぞれにドラマがあり、
見る人によって、主人公は違って見えるだろう。
私は、おじいさんの妻を見るたび
『かさじぞう』のおばあさんを思い出す。
話は飛んで。
2023年に観た映画のなかで、
とりわけ泣いたものが『THE FIRST SLAM DUNK』だった。
これは、宮城リョータの視点から描かれたストーリーだ。
かの有名な、桜木花道でも、流川楓でもない。
だからなんだっていう話だが。
『SLAM DUNK』は、どのキャラクターも主人公なのだと思った。
主人公が誰かは、受け手次第。
ドラマもそうだし、マンガもそうだし、映画もそう。
私の場合、『かさじぞう』の主人公は、おばあさんだった。
だって、新年を迎える餅を買ってくるねと言って出かけた旦那が
手ぶらで帰ってきたんだよ。
１つ売れば、いくらかになる笠を
売れなかったからといって、道端のお地蔵さんにあげてきちゃったんだよ。
その話を疑わずに受け止め、
「いいことをなさった」と言えるって
どんな愛だよ！と思う。
小学生なりに、こんなおばあさんになりたいと思った。
思ったまま、いまだ独身でいるが、
いつだってこんなおばあさんになりたい（笑）。
さらに、話は飛んで。
昨年末、オタクの私は、オタクの友達と
推しのグループのライブビューイングを見に行った。
同じメンバーを推すオタク同士、
大きなスクリーンでメンバー全員が観られるにもかかわらず
ひたすら推しを追いかけていた。
歌っているメンバーにごめんねと思いながら
歌っていない推しを追いかけた。
スクリーンから見切れたら、見切れた先を探すという……
そんな話をしていたら、
うちの母親が「わかる」と言い出した。
「学芸会で、孫だけ探しちゃうのと一緒でしょ」
まさに！
学芸会で、主役だろうが、セリフのない木の役だろうが、
うちの子、うちの孫が、家族にとっては主人公で
大切な推しだ。
同じく、どのメンバーも、
彼（彼女）を推すオタクたちにとって主人公だ。
裏を返せば、自分もまた、主人公だし
主人公でありたいと思った。
私が定期的に見返す大好きなドラマに
『応答せよ1997』という青春ロマンス（？）がある。
泣きのポイントも、笑いのポイントも
胸キュンのポイントも、多々あるが
個人的にとても好きなのが、最終話、同級会の席でのくだりだ。
主人公のユンジェ（ソ・イングク）＆シウォン（チョン・ウンジ）が
ああだこうだと、いがみ合う姿を見て
同級生たちが口を揃えて言う。
「あれだけケンカばかりで、
いつ恋愛したんだ？」
2人は答える。
「普通の恋人と一緒よ」と。
でも、視聴者はわかっている。
1話から15話までをかけて
彼らがどんな恋愛をしてきたか。
友人や家族が見ていない、知らないところで
彼ら2人だけが知る、2人だけの物語を紡いできた。
彼らの人生では、彼らが主人公だ。
それが、とっても美しいと思った。
新年会で、いろいろな人たちの今年の目標を聞いて
1人1人に物語があるんだなと思った。
それは、とっても素敵なことで
聞きながら幸せな気持ちになった。
今日も今日とて、とりとめのない話になっているけれど。
幼い頃にやりたかったこと、やっていたことを
もう一度やってみたくて
noteを始めたのかもなぁと
あらためて思ったという話です。
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