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自動ドア

前回で顔の存在が認められなかったことを書きましたが、僕自体の存在も疑われているようです。

自動ドアに立ち塞がれました。自動ドアは人を選ばず通してくれるものだと思っていたのですが、今日の僕は通してくれませんでした。

さすがにそんなことはあり得ないと思って、自動ドアに僕という存在をアピールし続けましたが、開けてくれません。ここを通りたい気持ちをスピーチすれば通してくれたでしょうか。人間の言葉は通じないと思ったので、身振り手振りで伝えようとしたところ、自動ドアの向こう側から歩いてくるおじさんが見えました。公園に座っていそうなそのおじさんは、腰が痛そうな仕草をしながら自動ドアへ突進していきます。このままではおじさんが自動ドアに顔をぶつけて、検温機に認識されなくなってしまうと察し、この自動ドアは壊れていますと伝えようとした瞬間。ウィーン。腰が痛そうなままにおじさんは歩き去って行きました。壊れていたと思っていた自動ドアが何事もなかったように開き、なんで、と思いましたが、まずは開けてくれたおじさんに、すいませんありがとうございますと声に出してみましたが、聞こえてないみたいでした。

とうとう僕という存在自体がないものになってしまいました。これなら検温機が僕を見つけられないのも無理はないですね。

誰も僕のことが見えていないのかもしれない不安が募っていきましたが、帰り道で人感センサーライトに4回引っかかったので、僕が見えないことはないみたいです。

でも、あれに照らされるのは、急にスポットライトを当てられてる気分になるので、少し嫌いです。

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