たのしみは 次の日休みの金曜日 六時間目の チャイムなる時。 小学三年生のときだっただろうか、担任の先生から、「たのしみは」から始まる「五・七・五・七・七」の短歌を次の日に書くと予告を受けた。学校からの帰り道、明日は誰よりも良い短歌を披露してやろうと、私は必死になって考えた。いや、クラスだけを視野に入れていたのではない。県の優秀作品に選出されて、全校集会で表彰されて、名前を呼ばれて立ってみたい。そんな野望まで胸に隠していた。 自分が一番楽しみなことはなんだろう。学校か
まさみは、旅に出た。旅先はベトナム。青森のド田舎出身で、人生で一度も海外には行ったことがない。東京にすら行ったことがない。それでも、ベトナムに行こうと思ったのは、約一年前だった。小学校から高校まで、地元の公立高校に通い、平凡な生活を過ごしていた。朝は毎日7時に起きて、学校へ行く。学校が終われば部活に行って、家に帰って寝る。土日はたまに近所の蕎麦屋でバイトをして、小銭を稼ぐ。当時は高校二年で、進路について考える時期だったが、私はなんとなく地元の短大に行こうと決めていた。県外の大
先日、少し暇をとって、ひさしぶりに実家に帰った。家族、友人、先生など、ご無沙汰していた縁に水やりする忙しい数日が過ぎ去ると、すぐに時間に余裕ができた。散歩でもしようかと外にでると、懐かしい公園や緑道、マクドナルドが私の胸をしめつけた。ノスタルジックな気持ちのまま一度家に戻り、自転車を用意すると、私は秘密の花園に向かった。隣町にある図書館である。家の前の急な坂道を駆け下り、洋々と流れる大河を渡り、コスモスが満開に咲いている川辺をひたすらに走り続けると、その建物が現れた。大屋根の
「スタバでは、チョコレートチップフラペチーノが一番好きだよ。」 「と思ったけど、やっぱりチャイティーラテかもしれない。」 「駅まで迎えに来てくれたの?ありがとう。」 「こないだ迎えに来てくれたから、今日はこちらの番ですね。」 「桜見がてら、遠回りして帰ろうか。」 「ビール飲みたくなってきちゃった。」 「映画館は意外と前の席の方が没入感があっていいんだよ。」 「でもここはさすがに近すぎるかも。」 「ここのミスド、他のところよりも生地が美味しくない?」 「温めてもらうと尚