喪服あるけど「喪服持ってません」。……何故?

こんにちは、慈岳です。
先日こんな記事を書きました。

ここで語ったのは和装の話ですが、今回のネタは洋装の雑記です。ご当地のどマイナーなローカルルールにも触れていますので、ざっくりとでもご覧頂けたら伝わりやすくなるかなーと。

現代喪装は洋装が一般的。何かしら使えるお話があるやも知れませぬ。なお、女性の場合のお話でございますわよ。ではどうぞ!

●正喪服、準喪服、略喪服

洋喪服にも着物同様『格式』があります。

  1. 正喪服:シルク、共布の黒アンサンブル

  2. 準喪服:化繊もOK、異素材の黒ツーピース

  3. 略喪服:パンツスーツ、地味な色のスーツなど

1と2は現代は、一般庶民は喪主でも弔問客でもあまり使い分けない印象です。シルク高いしクリーニングめんどくさいんで、見た目はさほど変わらないため、喪主でも近頃は2をお召しになりますね。

3は弔問客の装備で、仕事や家事をほっぽって『取るものも取りあえず』駆け付ける時の服装です。特に告別式において『平服で』と喪主からお気遣いがあれば、3でOKです。

●女性のパンツスーツは略装なのですよー

喪に限らずフォーマルな場において、女性の装いはスカートのほうが格上です。化繊のスカートアンサンブルとシルクのパンツスーツでは、前者が格上です。パンツは男のモノだと認識してください。

「アタシはバリキャリで男勝りだからスカートなんて有り得ない!」「おれは見た目女だけど心は男だし?」と、パンツスーツをお召しになるのは個人の自由で個人的に構わないのですが、弔問客ならともかく喪主やご遺族の立場となったときはイヤでもスカートが女性の正装です。

タカラジェンヌの男役さんでも、格式高い場での洋装はスカートなのですよ。

『式』と付くフォーマルな場は、自己表現したり、オシャレ心を出したりするものではありません。年齢が高くなればなるほど人の見る目は厳しくなりますので、25歳を過ぎたら無闇な主張をやめましょう。ビジネスやカジュアルではいくら男装しても構わないです。でも、お葬式ではぐっとコラえてくださいね。 

●突然の訃報には『喪章』という伏兵が使える

台付き袱紗(お香典を包むアイテム)を買いますと、黒い腕章が付いていることがあります。これは『喪章』と呼ばれるもので、腕に着用することで簡略的に弔意を示す優れものアイテム。

たとえば仕事中に突然訃報が入り、「今日の18時からお通夜です」と知らされた場合、アフターファイブの仕事用スーツや作業着に喪章を着用することで、弔意を示すことが可能です。

職場にいつでも喪服を準備しておくことは、たいていの社会人には難しいと思います。その点喪章は場所を取らず、自分のデスクなりカバンなりに常備できますので、こっそり忍ばせておくと良いですよ。

●当地のしきたりと本末転倒

私はヒヨコながらお歌民です。当地では『エラい人』が亡くなると、お弔いの歌をお唱えするため詠歌隊(キリスト教の聖歌隊みたいなもの)として、仲間とともに集団で馳せ参じます。なんでもかんでも和装の当地において、弔問客カテゴリに入るこのときだけは洋装です。

実はわたくし……当地に来るときに洋装の礼服はぜんぶ処分しちゃったんですよね。当地はなんでも和装だと聞いていたので、着物は正礼装から略式までフルで揃っていますが、いやぁ早とちり。

あるエラいさんのお通夜で『洋装指定』があり、なんだよ!結局洋装も要るのか!と内心で発狂して取り急ぎ洋喪服を注文したものの、お通夜には間に合わず。

たまたま私は仏門に片足を突っ込んでいて、ベテラン尼僧からやや渋られ気味に「ないなら今回はお坊さんの衣体で出ていいよ」と許可を得られたのですが、同期の在家女性はもちろんお坊さんの着物など持っていません。彼女いわく「喪服ないので出仕はやめておきます」との発言。

……何か違いませんかね?

服がないからお葬式に出ません。そんなのでいいのか。式服がないからという理由だけで弔問をやめてしまうのは、真違うと思うのです。

●喪服は心の表し

日本は難しい国です。故人のことを思えば正礼装で参列したいけど、ご遺族のことも配慮しなきゃならない。エラいさんのご葬儀を出す立場のご遺族は弔問客にお気遣いをされ、弔問客はご遺族に配慮する。

そのへんのバランスを特に田舎では上手く取らねばなりませんから、都会出身で「黒ければナンでもいい」と勘違いしていた私はまだまだ当地初心者です。袈裟ひとつ、数珠ひとつ、お師匠や先輩に聞かないとほんとに住む土地が変われば分からないんです。

本稿をご覧いただいた方の中で、土地を離れて『おヨメに行った』女性方は、ぜひ土地のおばあちゃんやおばさんに教えてもらってください。

それではまた次回!

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