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東電福島第1原発事故現場の長く深い悩みは廃炉工程そのものがいつまで経っても開始できない現実

 処理したという核・汚染水を意図的に違えて処理水とよぶのは日本だけであった。汚染水の問題をいくらかはなごませるつもりで,原発に関係させるかのように,ホタテを話題に挙げて語る「東電流の脳天気」さ加減など。

原子力村の新聞紙から

 

 ※-1「処理水放出でもゼロにできず 汚染水対策,迷走の12年」『毎日新聞』2023年9月13日 07:00(1847文字),https://mainichi.jp/articles/20230907/k00/00m/040/159000c

 補注)この解説記事は,つづいて紹介のためにその本文を利用する『毎日新聞』2023年9月14日朝刊13面「科学」(「科学の森」)と,ごく一部をのぞいてほぼ同文である。

東電福島第1原発事故現場

 この画像は,こう説明されていたる。「処理水の放出が始まった東京電力福島第1原発=2023年8月24日午後1時20分,本社ヘリから幾島健太郎撮影」。ただし,これは9月14日朝刊「科学の森」の記事には添付(利用)されていなかった。

 a) 東京電力福島第1原発事故からの12年半の廃炉作業

 東電の汚染水対策は,日々発生する汚染水との闘いでもあった。汚染水を浄化した処理水の海洋放出は,今〔2023〕年8月にようやく始まったが,完了までには30~40年かかる見通しだ。汚染水対策の「迷走」の歴史を振り返る。

東電福島第1原発のその後

 補注)ところで,この「30から40年」という期間には,その間にさらにくわえて溜まっていくはずの汚染水(処理済・核汚染水)を,計算に入れているか? ここでは分からないまま記述をおこなっている。

 東電の汚染水対策は,大きく三つあった。

 一つは高濃度汚染水への対処だ。事故からしばらく,最大の懸案だった。

 汚染水は,溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)に触れた冷却水だ。これが海沿いにあるピット(立て坑)やトレンチ(配管などが通る地下トンネル)にたまり,一部が海に漏れていたことが,2011~13年に相次いで判明した。

 東電は汚染水を抜き取って漏出を食い止めようとしたが,線量が高くて人が現場に近づけず,作業は難航。おがくずやドライアイスまで投入するなど試行錯誤し,水あめ状の液体「水ガラス」や水中で固まる特殊なコンクリートを使って止水した。

 さらに汚染水を貯蔵する地下貯水槽やタンクでも,継ぎ目などから敷地へ漏出していたことが2013年に判明。鋼板をボルトでつないだだけのタンクから,継ぎ目を溶接したタンクに建て替えるなどの対応を余儀なくされた。

 二つ目は,汚染水の浄化だ。将来的な処分を見据え,放射性物質を除去して線量を下げるのが狙いで,一部は燃料デブリの冷却に再利用する。

 主に,セシウムを除去するサリーやキュリオンが2011年に稼働し,2013年にはトリチウム以外の62種類の放射性物質を除去できる多核種除去設備「ALPS(アルプス)」が試験稼働。汚染水を処分可能なレベルまで浄化した「処理水」にするめどが立った。

 ただ,アルプスは稼働後に不具合を起こし,性能を十分に発揮できなかった。さらに東電は2018年になって,タンクにためている水の8割で,放射性物質を十分に除去できていないことを公表した。「線量を下げることを優先したため」(東電)などと釈明したが,「処理水」と説明してきた水の大半が,実際は処理水ではなかったことになり,大きく信頼を損ねた。

 補注)つまり「処理水=汚染水」という意外に,その本質的な理解はできないはずである。とりわけ,その許容しようとする線量の限界値をどこに置くか(引いておくか)が,その処理水(!)と当初の汚染水(?)とを,相体的に判別するための基準に使えるのであれば,その区別(識別)の仕方としてはある意味,どこにでも適当に設定することが可能である。

 処理水だと自信をもっていうためには,限りなく零(ゼロ)に近い判断基準を設定しなければならないはずだが,一定・特定にその処理内容がなされた汚染水についてはとりあえず,この「汚染水は処理水とみなせる」というふうな操作・工夫が「認定」されていた。

 放射性物質の人体に対する悪影響に関して「閾値」という判断基準が,もともと科学的に合理性がありうる概念として用意されていた。しかし,そのれ未満は「いっさい有害(悪影響)はない」とみなす思考方法は,間違いであった。すなわち,その閾値をもって,ある物質の有害性に関した「影響の有無」を判別するための「絶対的な仕切りのための基準」に使うことは,不適切であるとみなされた。

 血液検査を例に出していおう。要検査になる制限値(上・下限のどちらでもいいが)内であれば,なにも問題がないという判断は,とりあえずの観察の仕方であって,仮にその制限値ぎりぎりの値が出ていたそれぞれの場合,それなりに用心が必要であると考えて,なんら不思議はない。むしろ,今後(未来)に対する用心が,より慎重に要求されることもありうる。

 b) ここでは,東電福島第1原発事故が発生したあと急に,原発問題に関連して話の中身が変えられた話題を指摘しておく。

ICRP(国際放射線防護委員会)が勧告する,「一般の人びと」の健康を守るための基準としての「公衆被曝線量限度」は「年間で1mSv(ミリシーベルト)」とされている。

 従来,人間にとって「年間における追加被曝線量の限度1mSv(ミリシーベルト)」という水準が,放射性物質に晒される人間にとって「安全に生活するための基準として設定されている」。

被曝量比較表

 ところが,東電福島第1原発事故以後,日本は「子どもに対するその被曝量の限度」を20ミリシーベルトという上限に,急遽,変更していた。

 この変更に猛烈に抗議した関係者が,当時の民主党政権のもとで内閣官房参与を務めていた小佐古敏荘(こさこ・としそう)東大教授であった。

 小佐古は,福島県の学校の暫定使用基準について,年間放射線被曝量上限を20ミリシーベルトと定めた政府の決定に対して落涙してまで抗議・辞任したことで注目が集まった。

 原子力発電所の『放射線管理区域の設定基準』は,「外部放射線による実効線量が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えるおそれのある区域」と指定している。これだと,年間の総量では5.2ミリシーベルトになる。

 ところが,東電福島第1原発事故発生した直後,福島県内の小中学校の汚染レベルは,その放射線管理区域(毎時3マイクロシーベルト)を超えた学校が75%もの割合を占めていた。

 そのために,多くの学校が使えない状況になっており,この事態に対応させた暫定的な学校の使用基準の設定が求められた結果,政府は2011年4月19日付で「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な考え方について」を通達し,それが20ミリシーベルトであった。

 今日は2023年9月17日であり,「3・11」からすでに12年半が経過した。その悪影響が疫学的に無害だという明白な証拠はない。むしろ,その事実がほとんどをないものとして決めつけておいた「事後における政府の態度(自民党政府のこと)」が,あからさまであった。

 すなわち「あったものをなかったものにしたい」,現在の自民党政府と原子力村の狂想的な思いが,そこには貫かれてきた。
 
〔記事に戻る→〕 三つ目は,汚染水の発生量の低減だ。福島第1原発は,もともと地下水が豊富に流れる場所にある。汚染水が増えるのも,地下水や雨水と混ざるためだ。

 東電は2014年以降,地下水を建屋より上流部でくみ上げて海に流す「地下水バイパス」,建屋周辺にある井戸「サブドレン」でくみ上げた地下水を浄化して海へ流すなどの低減策を講じてきた。

 「関係者の理解なしに(処理水の)いかなる処分もおこなわない」という,政府・東電と地元漁業者との約束は,サブドレンの浄化地下水を海に放出することとの引きかえに交わしたものだ。

  ★ 原発の汚染水対策の概要 ★

 なかでも,政府と東電が切り札と位置付けたのが「凍土遮水壁」だ。地下を凍らせて建屋の周りを囲い,地下水の浸入を防ぐ大がかりな設備で,稼働すれば汚染水の発生がゼロにできると期待された。

 しかし,冷却液が漏れるなどのトラブルがあり,全面凍結まで約2年かかった。これまで400億円以上を投じたものの,凍結後も遮水効果ははっきりしていない。

 2015年に1日あたり約500トン発生していた汚染水は,2923年には同90トンまで減った。しかし,各対策の詳しい効果はわかっておらず,東電は当初かかげた「発生量ゼロ」の目標を取り下げた。

 汚染水の発生がゼロにできなければ,水はたまり続ける。タンクを増設しては満杯に近づくいたちごっこが繰り返された。いずれ処分に踏み切らなければ,敷地が限界に近づくのは目に見えていた。

  ★ 福島第1原発の汚染水対策の歴史 ★

 原子力規制委員会は2015年,処理水を海洋放出して処分する方針を初めて示した。その後,経済産業省が二つの有識者会議を設置して海洋放出や地層注入などの処分方法を検討。政府が2021年,2年後に海洋放出する方針を正式決定し,汚染水対策の解決に向けためどが立った。

 だが〔2023年〕8月に海洋放出が始まっても,2015年に約束した「関係者の理解」がえられたとはいいがたい状況だ。

 汚染水対策以外にも,福島第1原発の廃炉には困難が山積している。敷地内には大量の固体廃棄物がたまっており,処分のめどは立たない。最大の焦点である燃料デブリの取り出しに至っては,工法すら決まっていない

 日本原子力学会・福島第1原発廃炉検討委員会の宮野広委員長(元法政大客員教授)は「まだ地下水の流入は続いているし,(損傷した原子炉から)冷却水が漏れて汚染水になる状態はそのままになっている。燃料デブリを取り出すとなったさいも,先にこれらの根本的な課題が解決していないと難しいだろう」と話す。(引用終わり)

 以上に引用した解説記事は冒頭で,「福島第1原発 12年半の廃炉作業」と表現していたが,この内容をとらえて「廃炉」と呼ぶのは的外れであった。それはあくまで,廃炉以前においてなされている「後始末」の問題であるゆえ,くわえて,それを片付けてからこそ「通常の廃炉工程」に入れるものゆえ,現段階の状態を「廃炉」と呼ぶことは,まったく当たらない。

 つまり,それ以前の廃炉工程に進むための準備段階としての作業,いいかえれば,現場の整理そのものがいまだに,つづけられている段階にあるに過ぎない。

 地下流水などが汚染水になっていたから,これを浄化装置に通して処理水に変化させえたところで,これが廃炉という作業工程の一部そのものになるわけがない。その事前段階で,事故を起こした原発ゆえに抱えこんでいる,それも12年半もの長期間にわたって,いまだに格闘を強いられている相手であった。

 ある時になったら確かに,廃炉工程に相当する段階が開始できるかもしれないが,汚染水の発生を完全に押さえられるまでは,それ以前の段階にあったまま,「廃炉にまでは到達しえていない〈後始末〉のための作業」が,現状において,それこそ延々となされていくだけである。

 このように現象しつづけてきた事実を直視しないで,しかも「汚染水⇒処理水」の後始末問題に汲々とするだけに映る現状把握は,いまにあって存在する困難な問題を一時的に紛らわせる話題作りにしかなっていない。

 

 ※-2「原発から廃棄される熱に関するメモ」『原子力資料情報室』2021年10月1日,https://cnic.jp/40373

 以下に,この原子力資料情報室の文章を参照するが,その前につぎの記事を読んでおいてほしい。この記事の内容にめだつ「ホタテ:うんぬんの〈枝葉末節性〉」に注目してほしい。

ホタテと原発の間柄は?

 この記事のなかには「風評・風評対策・風評影響」とか用語が出ていた。だが,事故原発をめぐっては非常に困難な諸問題が終始立ちはだかっている状況のなかで,この「風評というコトバ」を使える話題が,あたかも “鎮静剤代わりにあてがわれて” いる。この記事はいってみれば,一時の気休め程度にしかならない「現状をめぐる説明」の一事例であった。

 なお,以下につづく『原子力資料情報室』による記述の引用においては,学術的な作法によって添えられている註記は,ここでは割愛しても不都合なしとみなし外してある。

以下が前掲,原子力資料情報室「メモ」の引用となる。

 a) 原子力発電所や火力発電所は,発電に利用できない余分な熱を環境に廃棄している

 これらが海沿いに建てられているのは海水を介して熱を海に捨てるためである。なお,火力発電所では日本では唯一の空冷式大型発電所の真岡発電所が2019年に運転を開始している。

 原発の発電効率は低く,核燃料でお湯を沸かして発生させた熱エネルギーの1/3しか電気に変えることができない。出力100万キロワットの原発は,発電しながらその倍の200万キロワットもの熱を捨てている。取水した海水を放水するさいの温度上昇の上限は7℃と定められていて,放水量は,1秒あたり68トンにものぼる計算となる。

 補注)この原発から出る廃熱は,前段で参照した記事においては,きわめて好意的に原発の「廃熱」としてあつかっていた。それでもって,原発そのものを,なんらかの意図で擁護する意図も含めたつもりかもしれない。しかし,枝葉末節の話題だという点で変わりはなかった。

 発電所から捨てられる水に含まれるのは熱だけではない。設備への海洋生物付着防止のための塩素も添加されているし,原発からの排水には液体放射性廃棄物も含まれている。取放水時の機械的・化学的・熱的な刺激がとくに小さな生き物へダメージを与え,海洋環境を悪化させている

 補注)この段落の説明は,原発から排出される廃熱だけが問題ではない事実,一般論として観察してみても「原発が海洋環境に全般に与えるほかない悪影響」に言及している。

 b) 業界別の排熱量

 発電施設だけでなく,化学・鉄鋼・食品業界なども熱を利用した製造・加工をして余った熱を環境に廃棄している。それらと比較すると発電設備からの熱量はどれくらいのインパクトがあるのだろうか。

業界別の排熱量

 産業分野別の排熱実態調査報告書の全国推計値によれば,年あたりの総排ガス熱量は全国で約74万テラジュール(約2,000億キロワット時)であるのに対し,電力業界が26万テラジュール(35%),鉄鋼と化学業界が各10万テラジュール(14%),清掃業界が約6万テラジュール(8%)という順となっている(図1)。

 これは一定の前提を置いた推計値だが,電力業界の排熱量が飛びぬけて大きいことは明白だ。その特徴は低温の未利用熱の割合が大きいことだ。150℃以下の排熱の割合は,電力業界で90%,鉄鋼業界で30%,化学業界は23%だ。

 同報告書の「温度帯別の未利用熱活用ニーズ」によれば150℃以下のニーズが圧倒的に多いとされ,電力業界の未利用熱活用のポテンシャルが高そうにも読める。

 しかし,原発由来の熱に関しては,放射性物質を取り扱うために安全性や心理面でのハードルが高く,原発はもともと都市から離れた場所に立地されるので近隣にニーズが少ないことから,今後も有効活用されそうにない。

 補注)そこで海産物のホタテに関してだが,前掲の記事のように,なんらか関連がありそうにも話題化されていた。
 
 c) 電源ごとの排熱量の比較

 電力業界からの排熱のもとは火力発電や原発であるが,東京電力福島第1原発事故前の2010年度と2019年度の発電電力量と電源構成のデータをもとに,電源別にどれくらいの排熱があったのかを計算した(表1)。

電源ごとの排熱量

 発電効率は原子力33%,石炭42%,LNG52%,石油39%とし(4),新エネと水力は対象外とした。その結果,電力業界から廃棄される熱のうち原発由来の割合は,原発の発電電力量が25%だった2010年度で約4割だったのに対して,それが6%の2019年度では約1割と減少している。

 d) 発電所ごとの排熱規模

 発電所立地地域における排熱影響の大小を検討するために,火力及び原子力発電所のうち設備容量(電気出力)が大きい順に50位までまとめた(図2)。グラフの黒色が原子力,灰色が火力である。

発電所立地地域における排熱影響の大小

 もっとも出力の大きい発電所は東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)であり,原発特有の低い発電効率のため,排熱量はほかの火力発電所とは比較にならないほど大きくなる。

 もし柏崎刈羽原発が全基稼働した場合,ヒートアイランド現象が深刻な東京23区における夏季の環境への人工排熱量(2003年時点)の約3割にも相当する。なお,原発は蒸気温度や圧力の条件に制約を受けるため発電効率の向上は望めない。大規模発電所からの熱が地域の環境や気候に与える影響が懸念される。

 環境影響の少ない再エネ発電の拡大がめざされているが,電力需給の調整力として短期的には火力発電の利用は避けられない。そのさい,効率の悪い古い発電設備から運転実績のあるより高効率な発電設備への置き換えが求められる。

 なお,環境負荷の高さから世界で「脱石炭」の動きが高まっているにもかかわらず,現在,国内で石炭火力の新規建設がおこなわれていることが問題視されている。

e) 核燃料の崩壊熱

 火力発電は発電を停止して火を消せばすぐに発熱が止まるが,原発の核燃料は運転停止したあとも崩壊熱を発生しつづけるところが根本的に異なる。2年間運転したウラン燃料の場合,発熱量が運転時の1%まで減少するのに数時間,0.1%になるのに4か月,0.01%になるのに3年かかるといわれる。脱原発を達成したあとも原発の熱は環境を温めつづける。

 補注)この e) は,廃炉工程に入ったあとにもまだ,熱そのものを発散しつづける原発の「熱性」のタチの悪さを指摘している。繰り返しになるが,そこで前段のごとき「ホタテ」の話題が遠回しに関係づけられていた。せいぜい,気休め程度にしかなりえない話題であったが。

 温暖化の問題として有名な本が,アル・ゴアの『不都合な真実』(日本語訳は枝廣淳子訳,実業之日本社,2017年)であったが,温暖化の観点からすれば「原発はよくない」に決まっていた,ということになる。
 

 ※-3 む す び

 経済産業省関係のホームページには,原発の廃熱に関して高等数学を使った数式をともなった説明もあったりで,しかも,たいしたその廃熱の問題ではないかのようにその語られていた。

 それにしても,この「地球の自然環境が水球」だと表現される点に対して,原発というものがわざわわざ不要・不急に,いつも暖め(熱し)あげるための装置・機械になっている現実の姿は,SDGs(持続可能な開発目標)の視点からみて全然そぐわしくない。

日本の原発は全基が海岸線に立地しているが,たとえば,フランス(大部分)や中国(半分くらい)では,河川の水を冷却水に利用する場合も多い。そちらでは,その河川が渇水状態になると発電を停止せざるをえない場合もなかったのではない。

 この『木偶の坊』たる原発にいつまでも執心する原子力村の人びとが,特定の利害を結んでは,エネルギー問題をめぐり「いまだけ,カネだけ,自分だけ」の利害を追求する姿は,しょせん,未来へと継続できる永続的なエネルギーの利用方法になりえない。それゆえ,エネルギーの領域では「原発は末世の世界観」を示唆しつづけてきた。

 なんといっても,世界のどこかでもう一度「レベル7:最高度の原発事故」を起こしたとしたら,この地球環境は決定的に悪化する。中国や韓国の原発が大事故を起こしたら,その核汚染が日本をじかに襲う。ウクライナでロシアが戦術核攻撃の代替のつもりで,仮にザポリージャの原発にミサイルを打ちこんだら,近隣各国にも甚大な核汚染をもたらす可能性大である。

 ところで関西電力の場合,もうしばらくしたら保有する原発全基を稼働できる体制になるかもしれない。だが,それはそれで,人類の悠久の歴史のなかではほんの一瞬の出来事である。その間だけは,もっと電気料金を下げることができ,利益も上がるかもしれないものの,あとには必らずやってくる廃炉のための長期間におよぶ事業は,間違いなく「本格的に」イバラの道として待ち受けている。

 廃炉をするならなるべくお早めしたらどうかというほかない。東電福島第1原発事故原発の廃炉はおそらく,21世紀中には収拾できる見通しがえられないままでいく。デブリの取り出しを諦めないかぎり,廃炉の問題は次世紀にまで取り残されるのではないか。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故は,その課題を判断するための先例を明示している。この事実を認めたくないとでもいうのか?

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【参考記事】

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