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一番星からきたオレ、(創作)

夏の夕暮れ。
近道にしている山間の道を通り抜ける。

昼間の暑い日差しも陰って、
一日太陽の下で仕事をした
僕の体には心地いい時間。
夕暮れのちょっと涼しい風を感じたくて、
車の窓はいつも全開にしている。

そこそこ時間のかかる家までの道のりは
今日の出来事を振り返ったり、
ラジオに聞き入ったりしながら、
貴重なゆったり時間。

慣れた道を走りはじめると
最初のカーブ。ここにはカーブミラーがある。

ミラーを捉えたその瞬間、
僕の目に何かが映った。

?????

なんだ、なんだ!
ねずみか?
鶏か?
草むら目をやると何か動くものが!
え?
なに?なに?

頭の中ははてなでいっぱいだ。
車がほぼ通らない道にうごめく何か。
脇に車を寄せて停めて、近づいてみる。

わ、わ、わ!
白い小さい小さい、
かわいい子がいるではないか!!!!!
それも全身全霊で鳴いている。

にゃー、にゃー。にゃー。
ね!ね!ここだよ、ここだよ!
ここにいるんだ!わかる?!
連れてって!
おまえに会うためにここにいたんだよ!

と言わんばかりに鳴いていた。
僕は、いつの間にか
その小さな小さな温かい生き物を
両手で包みこんでいた。

小さい小さい白いそれは、
まだ目も見えていなさそうな子猫、
片手で収まるくらい小さい子猫。

とっさに首にかけていたタオルに子猫を包み、
軽トラの助手席にそっと置く。
運転もいつもより慎重に。
軽トラの揺れに安心しなのか、
拾われたことに安心したのか、
あっという間に眠りにつく子猫。

いま、僕の横の小さい命が寝息をたてている。
まったく予期しないこれはなんなんだ。
つい3日前、ゆりかぷちゃんが
「わたし、保護猫を飼うのはもう少しあとにする。
いつかきっとご縁があるもの。」と言ったばかりだった。
その3日後のミラクル。


追記
子猫を手に抱き抱えた時、
一番星が3回大きく光を放ったことに
僕は気付かずにいたようだ。

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