物理学で見る御坂美琴


図1:とある科学の超電磁砲

とある科学の超電磁砲

こんにちは、こんばんはinductuionです。今回は「好きなアニメ紹介したいけど、物理学にも触れたい!」という意思により空想科学ということになりました。本記事はCCSアドカレ2023の18日目です


ご存じの方も多いでしょうが、とある科学の超電磁砲(レールガン)はとある魔術の禁書目録(インデックス)の外伝です。
東京西部を開拓して作られた学園都市では、超能力を科学的に解明し、最先端の科学技術によって超能力を使えるように育成する研究が行われています。能力には様々な種類があって、空気を操る能力(空力使い(エアロハンド))や、瞬間移動する能力(空間移動(テレポート))、窒素を操作する能力(窒素装甲(オフェンスアーマー))などなど、色んな能力があります。
特にベクトルを操作する能力(一方通行(アクセラレータ))は有名ですね。

図2:圧縮圧縮、空気を圧縮!(大気のベクトル操作中)

学園都市では能力の希少さや戦闘面、研究面での利用価値が高い順にレベル分けされており、上から順にレベル5、レベル4、、、レベル0(無能力者)と分類されます。レベル5は学園都市内に7人しかおらず、図2の一方通行(アクセラレータ)は第一位に君臨しています。


前置きが長くなりましたね。
今回主に見ていくのは主人公で、レベル5第三位の御坂美琴です。
彼女の能力は電気を操作する能力(電撃使い(エレクトロマスター))で、音速の3倍でゲーセンのコインを打ち出す能力から超電磁砲(レールガン)の異名を持つ(下のURL参照)。


彼女は元々の能力は微弱なものだったのですが、類まれな努力によってレベル5の座まで上り詰めました。今では名門常盤台中学のエースです。実は子供向けのマスコットなどが好きで、ゲコ太というカエルのグッズをたくさん集めています。かわいいですね(| )

図3:御坂美琴

物理学で超電磁砲を考察

とあるでは超能力を使う際、どのように能力を使うかを頭で演算しているという。今回はアニメ準拠でどのような原理でコインを打ち出しているのか、御坂美琴のレールガンを物理学を用いて考えてみましょう。

図4:レールガンを放つ御坂美琴

レールガンの仕組み

まずは、簡単にレールガンの仕組みを見ていこう!
図4の超高速飛翔体、電機子はまとめて弾と呼ぶことにすると、弾にかかる電磁気力F(N)は弾を流れる電流の大きさをI(A)、レールの間隔をL(m)、弾にかかる磁場の大きさをB(T)とすると、F=IBL(N)と計算できる。弾がレール上にないと電流が流れないので、レールが長くないと加速される時間も短くなってしまう。

図5:レールガンの原理

概算でいろいろ求めてみる。

先行研究として以下のURLを紹介。

 先行研究同様に、一話のレールガンで車を吹き飛ばすシーンを試料として用います。このシーンでは車は変形せずに回転しながら放物軌道を描いて落下している(下の動画参照)。先行研究ではコインの運動エネルギーが全て車の位置エネルギーに変換されるとしており、地面と水平方向の速度は一定とみなして計算している。まあ、いろいろ強引ではあるが計算しやすい場合で考えて良しとしましょう。
 今回は基本的にこの過程に基づいて計算しますが、車の慣性モーメントも考慮に入れて計算してみましょう。とはいえ車の形はとても複雑なので、直方体(密度一様)近似で考えます。


図6:直方体

図6のように、直方体の質量をM、三辺の長さをa、b、lとすれば、直方体のz軸周りの慣性モーメントiは
i = m(a^2+b^2)/12
となる(具体的な計算は下のURLから見れます)。

a、b、lはアニメ内の車に近そうな車種の寸法の平均値で与えることにします。今回は2023トヨタクラウンを参考にします。

上のURLから、全長b = 4.875(m)、全幅l = 1.875(m)、全高a = 1.520(m)とする。
車が吹き飛ばされているとき、動画時間にして12(s)で車は浮いてから着地する。放物軌道(空気抵抗無視)なら、6秒間自由落下するので軌道の最高点の高さHは、H = gt^2/2 = 9.8*36/2 = 176.4(m)となる。また、3秒間で車体が2回転して見えるから、車の重心周りを角速度ω = 4π/3で一定と見なす(これで許して…)。百円玉の質量が4.8gなので、今回飛ばすコインは質量5gとする。吹き飛ばされた車とドライバーの合計質量をMとすれば、
ようやく、エネルギー保存則から
1/2*(M(a^2+b^2)/12)*ω^2 + MgH = 1/2*(コインの質量)*(マッハ3)^2
が立式できる。音速は340(m/s)として、Mについて解くと、
M ≅ 1.49(kg)
となる。つまり、車(ドライバー付き)が1.5Lの水とほぼ同じ質量ということになる。逆に、車が1.5tくらいならコインの質量は5(kg)ということになる。
どうやら、この世界では車や人が超絶軽いもしくはコインがクソ重いようだ。

衝撃波はどうなるだろうか

衝撃波はどうなるでしょうか。

図7: 衝撃波

 図7のように、音速を超えるとコインがある地点から別の地点に移動する間音波を出し続けているので,これらの円形(球面)波の共通接面のところに衝撃波ができている。先端角θの大きさはsinθ = V/3V = 1/3より
θ ≅ 19.5°
となります。ソニックブームは衝撃波の形によるので、質量ではなく、コインの形と、音速を超えてどれだけの速さかに依存します。2θの内側では衝撃波は受けません。実際の拳銃で物体を弾がかすめた場合、その物体にも衝撃波により傷がつきますが、その程度です。つまり、上に挙げた動画内の道路の破壊などは、コインの衝撃波によるものではなさそうです。先行研究の裏付けになりましたね。

反作用やばすぎ...?

 先行研究ではレールガンのアニメ内での道の破壊具合や弾が通った後の光線が生じるためにはレールが敵直前まで伸びているのでは?と考えています。これは私も同意見です。これが美琴の能力によるものでしょう。レールに生じる電磁気力はどんどん大きくなり、その力は反作用としてレールにかかります。この反作用の平均の力の大きさFを求めてみましょう。

 コインの最高速度がマッハ3であるとすると、初速が0m/sで、50m地点での速さがマッハ3なら、平均速度をマッハ1.5とすれば、本編中での本人曰く、コインの場合射程が50mなので、コインが50m進むのにかかる時間tはt = 50/(1.5*340) = 0.0980… ≅ 0.098(m/s)となる。tが非常に小さく運動量保存則が成り立つとして、空気抵抗は勿論無視すると、コインの質量を5gとすれば、5*10^(-3) * (マッハ3 - 0) = F * 0.098となり、
F ≅ 52(N)
となる。これは5.3kg分の力がかかることになります。かなり重いですが、これなら耐えれそうですね。一方で、コインが5kgだった場合は
F ≅ 5.2 * 10^4(N)
となり、これは5.3t分の力がかかることになります。この場合、美琴が普通の人間なら、まず消し飛んでしまいますね…

実際の拳銃と比較してみましょう。
9ミリパラベラム弾(約8g)を使う拳銃は初速がおよそマッハ1.1~1.2程度です。弾丸の持つエネルギーは、発砲時は運動エネルギーのみであり、銃も反作用を受ける。弾丸の初速をv、質量をm、拳銃の反動速度をu、質量をMとすれば、運動量保存則より、0 = mv + Muとなり、|u| = m/M * |v|となるから、美琴のレールガンでコインの質量が5g程度なら、衝撃(運動量)は拳銃の3倍程度になる。先ほど計算した5.3kg分の力がこれに当たることになりますね。

終わりに

今回は御坂美琴のレールガンについて考察してみました。
普通に大変でしたが、だんだん楽しくなってきて書きすぎましたね…
ここまでご覧頂きありがとうございました~!


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