テクノロジーは仕事のストレスを解消するか

結論から言うと、それは起き得たとしても非常に部分的だと考える。

この話をする前に、まずは仕事でストレスを感じるパターンを整理したい。
相当ざっくりではあるが、だいたい以下のような形に分けられると思う。 

 ①壁の高低:仕事が上手くいかない/簡単すぎる、設定した(された)目標に届かない/簡単すぎる
⇨これは一見違う2つのように思えるが、結局目標設定の問題なので、根本的には一つの問題であると考えられる

②負荷量:やるべき仕事の量が多すぎる/少なすぎる
⇨この問題は①と密接に関係している。求められる質を満たすために投入時間の多さでカバーする、なんていうことはよくあることだし、むしろ質を担保する要素の一つとして「投入時間」が見られるということさえあると思う。

③自己実現:自分のやりたいことができないことによって発生するストレス

④社会/環境:職場の人間関係や業績から来る不安など、自分ではコントロールしにくい部分

上記のストレスのうち、テクノロジーで解消できるものは、①と②だろう。

テクノロジーによって、仕事が効率化されれば、質に費やせる時間も増え、好循環が回る。
③と④にテクノロジーが関与できないわけではないだろうが、主たる要因は当事者たちの考え方やコミュニケーションそもそもにある。

そのため、この場で言う「仕事のストレス」とは、①と②に関するものだと考えていただきたい。
要するに、テクノロジーによる、量的/質的な向上が、我々をストレスから解放してくれるかどうか、という話である。

そしてやっと冒頭の結論の話になるわけだが、その理由を端的に言うと、世界が資本主義経済で回っているからである。

これまで我々は、テクノロジーによって効率化できた分だけ、コストを下げて受注を増やし、競争を激化させながら次の新たなテクノロジーへの投資を続けてきた。

資本主義である以上、市場は少しでもコストが安いものを期待するし、それができるように企業が努力するのは必然的なことであり、そうやって経済は発展してきた。

一部の、コストを下げない戦略を取ることができる企業は、それを成し得るだけの圧倒的な強みを持っているわけだが、それでも市場における相場とのバランスは常に取らなくてはならない。

つまり、どれだけテクノロジーで効率化ができたところで、それは市場価格に反映され、より多くの販売数が必要になるため、働く人に余裕ができるわけではない。

少し捕捉を入れると、例えば自宅や田舎からリモートでも仕事ができるようになって、居住地や通勤のストレスが解消し、結果生産性が上がる、ということはあると思う。しかし、日本全国の人がそうなれるかというと、やはり少なくとも当面はそうではないし、そもそもリモートでは解消しないことの方がやはりどうしても多いと思う。

ということで、テクノロジーでは仕事の量は減らないし、それどころかストレスという意味では今後どんどん増えていくとさえ考えている。

どれだけソフトウェアや人工知能の発達によって作業の効率化を図ろうとも、こなせる仕事の量的限界はあるのではないかと思う。

人間が処理できる情報の量には限りがあって、今は、その限界を超える情報が溢れかえる、いわゆる「洪水」の状態にある、とはよく言われていることと思う。
それと同じことが、仕事においても言える。

話を聞くに、昔は資料を作ろうにも、パワーポイントやエクセルなんてものはないものだから、大変効率の悪い手作業をしながら、検討内容の試行錯誤をしたり、関連する色々なことを考えたり、むしろ頭を休めたりしていた。

今は、そしてこれからはさらに、資料などの作成自体には時間がかからなくなってしまい、「やりながら考える(考えない)時間」が減ってしまっている。

資料自体はパワポとエクセルでできてしまうし、プリンタのスピードと品質も昔と比べれば格段にあがっていると思う。

そういった意味で、もしかしたら昔の方が労働時は長かったかもしれないが、処理しなければいけない情報の量は、今の方が多いのではないだろうか。

そして、その情報量が、人間の脳のキャパを超えてきているのではないかと思う。

この手の話になると「テレビが〜」「スマホが〜」という話も出てくると思うが、それは別に個人の意思で使わないこともできるし今回の主旨にはそぐわないので、考えていない。

最後に話をまとめると、一見、我々を雑務から救ってくれるかのように見えるテクノロジーは、その余白をさらに頭を使う仕事で埋めることにつながり、これまで以上にフル回転で働くことを促し、結果として量的(質的)なプレッシャーによるストレスに、我々はこれまで以上に苛まれていく、ということである。

「じゃあどうすべきか?」という話は、まだ考えがまとまっていないので、また何かしら考えがまとまったらしたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?