「君たちはどう生きるか」君たちはどう生きてきたか

この作品は鏡だ
だからこそ、どう生きるか未来を説教されるのではなく「どう生きていたか」を問われていると感じた

この作品に限っては批判も絶賛も全てが正解である
人は経験した出来事や価値観で物事を見るという
言説そのものだろう
私は某YouTuberの「この作品を見て泣く奴はADHDか自閉症だ」発言すら間違っていないと思う
社会的には差別だから不適切発言ですよ。でも、上のように感じた心は間違っていないと思う
それは彼が障害持ちの人間を軽蔑しなければならなくなるような苦い過去があるのと同時に、本作のような抽象的で起承転結がキッチリと定まっていない映画に拒否感を感じる性分だからだろうと思う
生まれ持っての性質だとしても同じだ
何かしらの経験や性分でしか引き出されない彼だけの感想で、宮﨑駿の「君たちはどう生きるか」によって映し出された彼の証左
己の生きてきた人生を問われ映し出される作品だから「君たちはどう生きてきたか」
そう考えるとこの作品のタイトル凄いよ(あくまで個人の感想です)


この映画、ものすごい量のオマージュがある
浅学な黒豚は気づいていなかったり記憶にはあるが名前を知らない物もたくさんあるだろう
宮崎駿とジブリの過去作のセルフオマージュ
美術作品、遺跡、神話、日本のどこかの風景、ゲームの背景、小説
自分の人生で見たことがある物を彷彿とさせ、潜在の記憶にあるものを蘇らせる魔物こそが「君たちはどう生きるか」の正体ではないか

幼い頃からジブリを敬愛している人間ならアシタカやハウル、アリエッティなどを思い起こされるシーンもあったし、田舎育ちなら見たことがある風景もあるだろう
しかし、何故だろうか私はずっと記憶の奥のどこかにあるような望郷に苛まれた
知っているような背景、物語。でもハッキリと名前が出てこない
この映画の魔物である

ストーリーラインこそ宮﨑駿の半生や失われたものたちの本がベースにあるが
観客自身の物語でもある
眞人の自傷行為の理由が全く語られないのもその一つだと思う。宮﨑駿は意図してそこに眞人の動機を入れなかったのかは不明だが、真意について己から導き出される答えは自分が思春期の頃に感じていたものではないだろうか

親の気を引きたかったのか、父親の力を使っていじめた子供達に報復したかったのか、被害者を演じたかったのか、受け止められない環境の変化と脳裏に焼きつく母の死に呑まれ衝動的に自分を壊すことを選んだのか

思春期に自傷行為の衝動に苛まれたことがない人間には最後の感覚は導き出されないだろう

ただ単に塔の世界への導入として学校を休む為の口実のご都合主義に思える人は恐らく作家の端くれかもしれない

ただ作中で何も物語られない以上どれも今のところは正解だ

本作はナウシカのようにガチガチに世界設定を作り込んではないし、作品の中での悪人も設定されていない
起承転結もない、思いつきかインスピレーションで構成されているので、分かりやすい!テーマが明確!伏線は回収!起承転結がちゃんとあるのが正しい映画と定義する人には駄作以外の何者でもない

まぁ、いってしまうと

描写省かれすぎて自分で考えるしかない映画


ただこれは宮﨑駿が老いてしまった故に省かれたのか、意図して書いていないのかは分からない
それはパンフレットが発売されていないことに理由があるのではないか
パンフレットかあったら勿論答えは簡単に得られてしまう
鑑賞後にも観客に考えてほしいのかもしれないし、そうではないのかもしれない

実際積み上げる石が何故13個なのか問題がある
これは流石にパンフレットでは語ると思うが、宮崎駿がこれまでに作った長編映画13本に由来していると考察されている

ただ実際どうだろうか
私は安直すぎて少々萎えた
私は別の説を直感的に思い浮かんだ
宮崎駿が長編映画のみを自作としてカウントし表現するのかという疑問があったからだ
要するにこうした考える時間を作ってほしかったのではないか

答えを出してしまう前にクソ映画と怒り狂ったり、眞人や大叔父の行動の意味を観客なりに感じてほしかったのではないか
宮崎駿信者の私はそう思った

似たように圧倒的に描写不足説明不足であった「バブル」にはそう感じなかったのは、宮崎駿がこれまで積み重ねてきた作品の実績があるという主観である
ただバブルは作品の芯を読み取ることができなかった
自ら手放したのにずっと進撃の巨人の亡霊に取り憑かれて類似作ばかりつくる監督や
本作に乗り気じゃ無い脚本家
新海誠が忘れられないプロデューサー
の浅ましいクリエイターとしては呆れた堕落しか見えなかった

母親への執着心と描きたいシーンを詰め合わせた映画を作る方が余程クリエイターの魂を感じる
オマージュも自身が生み出してきた物だしね
立体機動はwitの某氏が作った物じゃ無いからね

私はWITが進撃の巨人を手放して結果的に良かったと思っているが、手放したくせに立体機動のまがいものを作り続ける某社は度し難い
私怨があるから、自分で考える作品だーとは思わなかっただけなんだけど

手の指だけでは足りないほどに名作を作り続け
二番煎じはしない宮崎駿の作品ではある
全く見る価値のない映画では無いだろう






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