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【観戦録】超RIZIN3、朝倉未来vs平本蓮 「残酷で儚く、そして美しい結末」


いよいよ迎えた7/28。

さいたまスーパーアリーナスタジアムバージョンに観客5万人弱を集めて開催された超RIZIN3。

そのメインイベントを飾るのは因縁の対決、RIZINフェザー級ラストマンスタンディングタイトルマッチ、朝倉未来vs平本蓮です。

⬇️(見当外れな)試合前プレビューはこちら


平本選手の朝倉未来選手への憧れから始まり、5年弱の年月を経てやっとたどり着いたこの試合。

コアなMMAファンからはもちろん、格闘技界外のライト層ファンからも絶大な注目が集まります。

平本選手の入場。たまアリのスタジアムバージョン、さすがに広く花道もとても長い。

いつものTravis Scottの1曲では曲が足りないのか、3-4曲の曲の繋ぎ合わせによる入場。

いつもに増して華があり、自信に満ち溢れたような表情です。

一方の朝倉選手はお馴染みのBattle Scarsによる入場。

曲の長さが足りないと考えたのか、ゴンドラを降りたあと、走ってリングに向かいます。

こちらは何か落ち着いた表情で、獲物の首を虎視眈々と狙うハンターのような目。

お互いにこの試合にかけてきた気持ち、コンディションの良さが伺えます。


RIZINフェザー級ラストスタンディングタイトルマッチ
朝倉未来(日本)17-4(8KO 1SUB)
VS.
平本蓮(日本)3-3(0KO)


お馴染みの平本選手のリングコール時のポーズ、今回は赤コーナーポストに詰め寄っての中指立て、そしてその後の一礼。

朝倉選手は両手を広げ、まさに主人公のような様相。

いよいよ試合が始まります。

お互いに向き合うと平本選手の体の大きさが目立ちます。

アイルランドに行き、マクレガーのもとで修行を積む中でフィジカルの大切さを実感し、帰国後も筋トレを継続していたそうです。

平本選手は前戦までの構え方とは異なり、サウスポーでアップライトに軽くステップを踏みながらの試合序盤。

自分から攻撃を仕掛ける姿勢がこの構えからも読み取れます。

何となく堀口恭司選手を彷彿とさせるステップだなと思っていたのですが、試合後インタビューを見るとやはり意識していたということでした。

一方の朝倉選手は遠い距離からの蹴りを多用し、タックルのフェイントなども入れながら様子を見ている印象。

リング中央での見合いが続き、朝倉選手がプレッシャーをかけると平本選手はワンツーで撃退、距離を詰めさせません。

平本選手はオーソドックス、サウスポー共に器用に使いこなせる選手であり、スイッチして詰め寄ってのワンツーなども効果的に見えます。

そして第1Rの残り時間が3分を切ったところ、体を左右に揺らし、ステップインしながらのジャブを放つ平本選手。

そこに下がりながら得意の右フックからの左ストレートのカウンターを狙う朝倉選手ですが、そこに合わせて平本選手の左のエルボーが炸裂。

平本選手も左のストレートを狙っていた感じですが、距離が近くなったことで臨機応変に肘に変えた感じでしょうか。

ぐらつく朝倉選手。平本選手はラッシュを仕掛けます。そして一旦距離が離れ、平本選手が詰め寄ったところにまたしても右フックのカウンターを狙う朝倉選手ですが、これも完全に見切られ、平本選手が完璧な左ストレートを合わせ朝倉選手ダウン!

そこから強烈な右のパウンドを振り下ろしレフェリーストップ!

平本選手の1R TKO勝ち!

平本選手の距離設定が素晴らしく、朝倉選手がタックルに入れないギリギリの距離を保ち、そこから独特のステップでスイッチしながらのワンツー。

朝倉選手がプレッシャーをかけてきた時にもワンツーで撃退し、ロープを背負わないように、常にリング中央で戦えるようにしていました。

終始距離を支配された朝倉選手は何も出来ずに負けてしまう結末となりました。

連打から最後はストレート気味の左フックで相手をなぎ倒す様子は、K‐1時代のゲーオ・ウィラサクレック戦をフラッシュバックさせます。

個人的にはずっと待ち望んでいたあの頃の平本蓮選手が帰ってきたような気がして、懐かしく、しみじみしたような気持ちになりました。

勝利後すぐに泣き叫び、チームと抱擁する平本選手。

その腰には榊原CEOからラストマンスタンディングベルトが巻かれます。

一方の朝倉選手は呆然と座り込み、何が起きたかよく分かっておらず、状況が把握出来ていないような様子。

あまりに残酷なコントラストです。

しかし、同じリング上に勝者と敗者が存在し、そのリングというキャンバスにこの残酷なコントラストを映し出す格闘技に、私たちは同時に美しさのようなものも感じてしまう。

上手く言葉では言い表せないですが、それこそが格闘技の魅力なのかなと、個人的には感じます。

約5年の歳月をかけて、2人の主人公が作り上げた1つのストーリー。

平本選手の試合前の「この試合のために初KO勝ちをとっておいた」という発言も有言実行ということになり、完璧な形でこのストーリーを締めることになりました。


朝倉選手はメイウェザー選手とのエキシビションマッチでKO負けしてから脳へのダメージが溜まっているのもあると思います。

実業家としての顔も持つ朝倉選手、セカンドライフのためにもこの2人のストーリーを最後にして、引退を決断してもらうのが個人的にはいいのではないかと思います。

勝った平本選手はこの先どのような相手と戦い、どのような道を進むのかはまだ分かりませんが、朝倉未来という長年憧れてきた大きな壁を越えたことで、燃え尽きてしまわないことだけを祈っています。

長年RIZINフェザー級を牽引してきた朝倉選手の引退、彼に引導を渡した平本選手。

激動のRIZINフェザー級で世代交代、新時代の到来を予感させる試合でした。

そして、この大きなストーリーを編み上げ、私たちに常に興奮を届けてくれた2人に感謝したいです。

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