5-6始祖ドラ論

はじめに

 この記事では、マジック・ザ・ギャザリングのカジュアルフォーマットである「統率者戦」において、「《始祖ドラゴン/The Ur-Dragon》をジェネラルに選択したレベル5-6デッキ」を扱います。論、などと銘打っていますが、レベル感のすり合わせが難しいと言われる「5-6レベル帯」のデッキを組む際のサンプル程度になればいいな、というものです。

デッキリスト

使い方

 序盤は緑のカードでマナ加速を行い、白の全体除去でターンを稼いで、最終的にはドラゴン達で制圧する「ドラゴンビートダウン」デッキとなります。このデッキの「やりたいこと」は上記を設定しているため、ドラゴン以外のクリーチャーや勝ち手段は非採用としています。またティアマト等のドラゴン・クリーチャーで無限コンボを行う為のキーとなるカードも選択されていません。
 「はじめに」で書いた通り、このデッキはレベル5-6程度を想定して作成しています。普段はcEDH環境で遊んでいるプレイヤーでも、友人が新しく始める等の理由で「あんまりお金をかけずに5-6くらいのデッキが欲しいな」と考える場合があると思います。そうした場合の参考にしてみてください。
 なお、5-6帯の対戦募集に参加する際には「自分の5-6感」を説明できるようにしておいた方が無難です。対戦する前に、大抵の場合は各自統率者の能力紹介があると思いますので、その際に「無限コンボは採用していないこと」や「全知・ヘルカイトの狩猟者など、始祖ドラゴン一枚からいきなり勝利するようなカードは採用していないこと」、「やりたいことは有翼のドラゴン達によるビートダウンであること」などを説明できる機会があれば説明しておきましょう。
 上記が何故必要であるかというと、始祖ドラゴンというジェネラルは有志による熱心な研究が進んでおり、対戦経験のあるプレイヤーからは警戒されやすいジェネラルです。もとより、5色のジェネラルであるという事だけで強力なカードやコンボを採用しやすいため、妨害を受けやすいデッキであると言えます。ジェネラル自体はデッキレベル7より高いレベル帯でも見かけるジェネラルですので、そうしたデッキとは「やりたいこと」が異なることを事前に伝えておくことをお勧めします。

 それでは具体的なデッキの回し方を説明していきます。

マリガン

 キープ基準は土地加速込みで5マナ域迄到達が見込めるかです。2マナのマナ加速があればなおよいですが、フェッチ+るつぼのような継続的に土地が置ける見込みがあればキープして構いません。とにかく5マナ域にたどり着ければ、とりあえずターンを繋げる全体除去か、アドバンテージを稼げるドラゴンか、ドロースペルのいずれかが使用可能になります。ドラゴン達は後で連れて来ればよいので、オジュタイかシルバークイル以外は流してしまってよいでしょう。

序盤

 上記でキープした通り愚直に土地加速をしていきます。このデッキにおいては森タイプを持つ土地はサーチしやすく、次いで平地がサーチしやすいので、それ以外をサーチできるカードでは可能な限り森・平地以外をサーチしましょう。
 なお、タップインを処理する際はショックランドから処理するのがオススメです。バトランは後半アンタップインできるようになるため、特にライフのやりとりが多いこのレベル帯では安易にショックインしないよう注意が必要です。勿論、全除去等を急いで撃つ必要がある時は別です。

中盤

 相手も加速や準備が終わってジェネラルが出始める頃です。明確な脅威やアドバンテージ源があるようなら、可能な限り引き付けつつ全除去で流していきましょう。タイミングの説明は難しいのですが、継続的なドローエンジンが場にある場合や、こちらを明確に殴る意思がある場合、誰からも対処が期待できない場合などがそれに該当します。
 通常、誰か一人が好調な滑り出しであれば、まずはその人を止めようという流れになりやすいのですが、人によってはとにかく空いている所から殴って数を減らそうというプレイヤーもいます。そういう考えである以上、放置すればずっと殴られ続けるので、ブロッカーを用意できない場合は早目に流してしまいましょう。とはいえある程度好きにさせておくことで他のプレイヤーからの除去を期待するという戦術もあるため、あくまでも自分に被害があるなら処理していくというスタンスで問題ありません。
 その他、適度にドラゴンをキャストしつつ土地加速を続けます。ドロモカやコラガンは後述するフィニッシャーに成り得るので、それ以外のドラゴンで中盤をしのぎましょう。目安は、ジェネラル及び歯と爪双呪可能な9マナ+5~6マナです。大規模アクション+中規模アクションといった形です。
 それまでの繋ぎとして、特にシルバークイルはアドバンテージ源とブロッカーを兼ねるので見た目以上に優秀です。プレインズウォーカーが出てきた時などは、他プレイヤーへ積極的にトークンを渡して殴らせていきましょう。

終盤

 相手の攻勢を全除去でしのぎ、ドロースペルで補充し、土地を十分伸ばしたらいよいよジェネラルの出番です。特別な理由が無い限りは最後までキャストしないことを勧めます。というのも、始祖ドラゴン自体の書いてあることが強すぎるため、ピン除去があればまず間違いなく撃ってきます。中盤タップアウトの盤面でドラゴンが居るような場面であればキャストも手ではありますが、龍王ドロモカなどのバックアップと一緒にキャストしていく方が無難です。あまり器用なデッキではないため、しっかり耐えて、勝つべき時にしっかり勝ちに行きましょう。
 なお、仕掛ける際は基本的に「始祖ドラゴン+別なドラゴン」になります。殆どの場合、龍王コラガンから速攻で戦闘に入る形になりますが、中盤ブロッカーとして出したドラゴンが生き残っているようであれば他のドラゴンに殴らせていきましょう。最終的に、ある程度墓地にドラゴンが居るような状況になれば、龍王ドロモカからの上古族の栄華な再誕で決めに行ったり、歯と爪から強力なドラゴンを呼び寄せて勝利に繋げます。
 組み合わせはいくつかありますが、後述する「アタルカとパワーを上げられるドラゴン」でワンショットキルが出来ますし、妨害がありそうであれば龍王ドロモカから入る事で防げます。上記のように、結構墓地を使う事が多いので、墓地対置物や生物は早めに処理しておくようにしましょう。

採用カード

大枠毎に解説していきます。

土地

 前提として土地基盤ではあまり無理をしなくてよいと考えています。筆者が5-6を組む時には所持しているカードだけで組むか、ストレージを探していてたまたま見つけたものを採用しています。例えばデュアルランドが一部採用されていますが別になくても構いません。
 むしろトライオームを増やした方がマナ基盤としては安定しますし、基本土地が多い方が採用できるランパン(不屈の自然に代表される土地加速のこと)が増えます。その場合はもう少し色を絞るべきですが、彩色の灯篭などで解決できます。
 ご自身の参加されている環境が早目であればショックランド、逆にかなり遅めで大振りなカードが多いようであればバトランで十分です。そうした環境ではライフ2点が勝敗を分ける事もあるため、必要以上にタップインを嫌わないようにしてみてだくさい。
 さて実際の採用基準ですが、基本的に「全色出るよりも基本土地タイプを持つカードを優先」しています。これは探しやすさを重視しているためです。特に平地と森を優先し、次点でよく必要になるのに探しづらい黒と赤です。これはこのデッキに限った事ではありませんが、多色を組む際に安くデッキを仕上げたいのであれば緑、ついで白に寄せるべきです。
 理由は、まず森カードが一番サーチしやすく、次いで平地カードがサーチしやすいからです。今回は筆者が白青の土地を多めに所持しているため、青は平地サーチのついでで揃いやすく、赤黒は揃いにくいためサイクリングデュアランなどで補っています。根本原理やスナップダックスを外すことでもう少しバントカラーに寄せられるので、不要と感じたら抜いてしまって構いません。
 ただし、全体的に便利なドラゴンは赤に多く存在します。特に龍王コラガンはキーカードであるため、赤黒基盤の削り過ぎには注意してください。
 フェッチランドも上記と同じような理由で採用されています。特に、ミラージュブロックのフェッチランドサイクルは、起動にライフを支払わなくてよく、かつ30円程度で購入できるためオススメです。タップインが嫌いな方にはオススメしませんが、タップインや悠長なランパンを繰り返すことで、序盤のヘイトを下げる効果を期待していきましょう。
 上記の繰り返しになりますが、そうしたゲームではフェッチ起動の1点やショックインの2点は積み重なってライフを圧迫してきます。ドラゴンかつ絆魂持ちでの実用的なラインは限られているため、可能な限り避けていきましょう。特にるつぼからのフェッチランドは疑似ランパン手段なのですが、ロングゲームをやりたい時にはタップインフェッチから使っていくのも有効な手段です。基本的にこのデッキは20ターンといった長い時間を居座り続けるデッキです。焦らずどっしりと構え、制圧していきましょう。

マナ加速

 マスデス(全体除去)カードを大量に採用しているため、マナファクトや継続的にアドバンテージが得られるような置物は殆ど採用していません。どうせ壊れるからです。基本土地サーチが多すぎるように感じるかもしれませんが、削ると一気にマリガンが厳しくなります。耕作は安定して5マナ圏に連れて行ってくれるカードの為、できれば削りたくないカードです。
 変えるとすれば未開の狩りや戦利品、レインジャーの道、成長のらせんなどが候補に挙がるでしょう。リスト作成時点で所持していなかったため入っていませんが、三顧の礼あたりに変えるのが一番良いかと思われます。
 これらのようにサーチ先を森に寄せていく場合は、森タイプを持つトライオーム等を優先して採用してみてください。もし、さらにもう少し効率を考えるのであれば基本土地を氷雪にするべきです。(筆者は好みの柄が無かった為、氷雪基本土地は採用していません。)
 土地の際に述べましたが森カードはスペルによるサーチがしやすいため、逆に森以外がサーチできるカードでは森や平地をサーチしないようにしましょう。具体的には遥か見や基本土地サーチなどです。ちなみに戦争門でもランパンができます。一番のオススメはるつぼとクローサの境界を揃える事でずっとランパンし続ける使い方です。序盤の命題はとにかくマナを確保すること。戦争門ランパンは後半ドラゴンを連れてくる使い方より強いため、積極的に狙ってみてください。

全体除去

 さてここまでに悠長かつどっしり構えていきたいという方向性を書いてきましたが、当然相手もこちらが悠々と土地を伸ばしているようであれば積極的に殴ってきます。後半になればなるほど有利になるのは統率者領域を見ればわかるため、自衛する必要が出てくることになります。
 しかし、5-6くらいの大振りなカードが多く採用されるデッキでは、ピン除去やカウンターなどでいちいち対処していては捌ききれません。ロングゲームをしたいデッキではありますが、相手に継続的なアドバンテージを与えるカードや4点以上のクロックを複数許しているようでは生き残れない為、そうした状況にまとめて対処できるよう全体除去を大量に採用しているわけです。
 当然ビートダウンを主軸にしたデッキは全体除去を嫌うため、破壊不能を付けるカードをよく目にすることになります。その為、生け贄に捧げさせるカードやライブラリーに帰してしまうカード等が採用されています。追放除去を採用するのも手ではあるのですが、自分のドラゴンも追放されてしまう可能性があるため、あまり多くは採用したくないところです。
 また、クリーチャー破壊が基本ですが、ファイレクシアの闘技場や危険なアーティファクトなどの置物を流したい時が多々あるため、土地でないパーマネントを全部対処できるようなカードも多く採用しています。土地加速で述べたように全体的に白に寄せる構築のため、白白白はそこまで厳しい要求になりません。場合によってはヘイトの高いカードを敢えて残してあげることで、コンバット先を相手に向かわせるなどの見きわめをしながら戦っていきましょう。

採用ドラゴン

龍王オジュタイ

 数少ない継続アドバンテージの取れるドラゴンです。このデッキなら4マナで出せるのも強いところ。このデッキはシャッフルを多く行うため、重いドラゴンやフィニッシュ手段、使わなくなった基本土地サーチなどはボトムへ送っていきましょう。殴り先は余計なヘイトを買わないよう、細心の注意を払って選択してください。理由が説明できる先が一番良いと思います。

シャドリクス・シルバークイル

 緊急時で一番サーチするカードです。オジュタイと違いキャストしたターンからアドバンテージが取れるのが売り。また、相手にトークンをあげたりカウンターを載せたりして、他のプレイヤーと協調路線を取る事も可能です。前述した始祖ドラゴンとアタルカが居る状態のとき、カウンターを載せるモードを選ぶ事でワンショットキルが可能です。これは返ってきた刃の翼や、疾駆持ちのコラガン(運命再編に収録)でも可能になるので覚えておきましょう。

龍王ドロモカ

 ドラゴンデッキの堂々たる撤廃者。本人も打ち消されない為、キャストする時は決めに行くつもりで仕掛けましょう。本人が伝説なため、上古族の栄華な再誕に繋げやすいのが特徴です。また根本原理や命運の核心などをキャストする場合も、スタックしてテフェリーの防御や英雄的介入を撃つことを封じる事ができます。本人に絆魂が付いているのも高評価。歯と爪双呪はだいたいコラガンとドロモカを持ってくることになります。

龍王コラガン

 このデッキのフィニッシャーの一角。基本的には相手が疲弊しきったところを始祖ドラゴンで勝ちに行くのですが、その際にこの速攻がとても生きてきます。下の能力はネズミや使徒デッキと当たった時に確認することがあるかないかくらいです。
 逆に彼女が居ない場合は相手に一度ターンを返してしまうため、別な手段での速攻付与が必要になります。キャストする際は特に追放除去を受けないよう細心の注意を払いましょう。コラガン再誕を狙う際には敢えて墓地に埋めとくというのもアリです。

帰ってきた刃の翼

 コンボパーツに成り得るドラゴンですが、このデッキでは単に墓地のリソース再利用という使い方と、前述のジェネラルによるワンショットキル用のカードになります。人によってはこれだけで怯える人も居るので、キャストするタイミングには注意しましょう。再誕で拾えないドラゴンをついでに拾えたりするので便利です。
 なお、能力はドラゴン・クリーチャーを強化するため、同じドラゴンデッキに当たったときは相手も強化してしまう事に注意です。逆にプレインズウォーカーや落としたいプレイヤーが居る際には交渉出来る事を忘れないでください。

死致の執政

 クリーチャーである全体破壊。ごくまれにガドック・ティーグ等に遭遇して全体除去が撃てなくて困ったり、ノンクリーチャー呪文のカウンターが見えている時などに便利なカードです。墓地から釣るメリットはありませんが、通常全体除去は4~5マナである事を考えると、追加2マナで飛行ブロッカーが付いてくると思えばお買い得だと思います。

ヘルカイトの暴君

 若干の趣味枠ではありますが能力は強力。概ねコラガンやドロモカのサポートが無いとコンバットは難しいと思いますが、通れば通常のドラゴンでも稼げないアドを稼いでくれます。特殊勝利はまず考えなくていいでしょう。波止場には十分注意してください。

鋼のヘルカイト

 無色でキャストできる為、色事故の際に時間を稼いでくれるカードです。このデッキは必要な箇所だけ残して除去する事が難しいため、要所要所を落とせる良いカードです。場の脅威は全て自分が対処する必要はないため、自分にとって嫌なものだけを対処していきましょう。

移り気のピルー

 趣味枠と侮るなかれ、貴重なクリーチャーによる全体除去かつライフゲイン手段。基本的にはアップキープ維持を放棄してのサクリファイスですが、状況によって相手のエンド前(第二メイン終了前)にネクロマンシーで釣り上げることで、インスタントでの全体除去に成り得ます。あまり狙うほどの事ではありませんが、50点以上のゲインが狙えたり、自分のドラゴンは無事だったりと便利なので覚えておきましょう。

おわりに

 以上が自分の5-6環境用始祖ドラゴンデッキの組み方と使い方になります。普段のメインデッキではレベル感に差があると感じた時のため、サブデッキを持っておきたい方は多いと思います。そうした際の参考の一つにしていただければ幸いです。
 余談ではありますが、こちらで採用されているドラゴンの採用理由の大半は好きなドラゴンだからです。筆者はタルキールで言うドロモカ氏族やアタルカ氏族のような前足(腕?)が太いドラゴンが好きです。8↑に連れていけないようなドラゴンでも、使いたいという気持ちがあれば採用理由に成り得ると思います。プロモパック剝いたら出てきたとか、30円で売ってたとか、きっかけはそんなものでもいいと思います。

是非、あなたの好きなドラゴンで戦場を駆け抜けてください!

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