カエルが跳んだ日 ~神決に至るまで~

はじめに

 此度開催された「第4期統率者神挑戦者決定戦」において、念願であった《ギトラグの怪物/The Gitrog Monster》を使って初日突破するという目標を叶える事ができました。今回はこの「神決」において、初回開催から第四期に至るまでの調整の記録のようなものを過去のデッキ解説を交えて書いてみたいと思います。

デッキリスト

 全部同じじゃないですか!?と言われそうな気もしますが、細部は大分変わっています。第一期のリストについては筆者のリストではありませんが、自分に大きな影響を与えたリストであること、僕がこの統率者を使うにあたってずっと参考にさせていただいてきた方のリストなのでご紹介させていただきます。長いので、デッキの中身自体にあまり興味の無い方は流し読みで構いません。

 一番最初に神決初日を突破したリスト。僕にとっては第一次カエルショックのリストです。元より筆者なんかよりもずっと長くこのジェネラルを研究してきた方のリストです。特筆すべきは型破りな妨害枚数、極限まで削ったサーチ。徹底的に環境に合わせた苦心の跡が伺えるリストです。細かいところでは、厳かなモノリスやbazaarまで抜いている所でしょうか。「すでにあるコンボに固執しないでほしい」とは四期神の言葉ですが、やはり強い人は従来の常識に固執することなく常に研究を続けていると思います。

 正確には神決に持ち込んだリストではないのですが、第二期神決頃に使用していた自分のリストです。この頃はまだクリンナップループへの指摘がある前の状態だった(過去、大会参加時にジャッジに確認した際はOKの裁定を貰えていた)為、ナイレアの介入やサイクリングランド全投入などの手札の嵩増しを多く採用しています。この時の神決は3-3、一回目と同じ人数だったら抜けていたのにと悔しい思いをしていました。

 クリンナップループの裁定が変更になった第二次カエルショック以降のリストです。これも正式には三期神決時のリストではないのですが、コマンダーサミットにおいて決勝卓まで進むことができたリストです。チャリスやアメとげ等の採用はターボむかつき等の早いデッキに少しでも抗うために採用しています。また敵対工作員やヤヘンニの巧技など、実際に大会に出て苦手だなと思った相手を意識したカードをいくらか選択しました。結果は2-2-2。振り返ってみると、勝つべき時に勝ちきれないリストだったなと思います。

 今回のリストです。調整点としてはサーチを増強し、妨害をギリギリまで削りました。また、土地をかなり(🐸視点で)削っている代わりに、色事故防止の印鑑が採用されています。これによりマリガン基準はかなり楽になりました。端から見ると地味な調整だとは思いますが、それなりに勇気のいる変更でした。この後もう少し詳しく解説します。

カエルの足跡

・一期~二期

 この時期はあまり大会に出れない状態だったため、第一期は不参加の状態で配信を見ていました。普段から一緒にやっている人らが続々と結果を出す姿は、正直に言えば嬉しさ半分、悔しさ半分といった感じでした。そこに颯爽と現れた型破りなギトラグ。「ま、負けた…」と思いつつも、初日を突破できるジェネラルであることは励みになりましたし、いつかこの結果を追い越したいという目標の一つになりました。リスト自体は参考にしつつも自分には真似できないと思い、違う型での調整を続けていました。

・二期~三期

 初日突破ライン付近まで来れた事に手ごたえを感じたのもつかの間、クリンナップループの裁定変更によりデッキを大幅に変える事になりました。ちなみにこのこと自体に不満はありません。ルールへの指摘自体は正しい事だと思いますし、今までがカジュアルなフォーマットということでお目こぼしを貰っていただけだという事だと思います。
 ただし、このことが拡散された際、「ギトラグは終わった」なんていう人が一定数居て(対面で直接言ってくる人も居ました)、こちらについては到底聞き捨てならない言葉でした。逆に「何としても結果を残して『ギトラグは終わってない』事を証明したい」、という目標を立てるに至りました。

・三期~

 この頃になると周囲でもログテヴェ等を使う人が増え、為す術無くボコられる日々が続きました。対抗すべく一期のリストを殆どコピーして回してみたりしましたが、肝心の墓地対の打ち所をよくわかっていませんでした。
 恥ずかしい話ですが、ここに至るまで自分はブリーチもオラクルも撃ったことがありませんでした。自分が撃った事も無いのにわかるわけないだろと、三期が終わったあたりで入賞した方のログサイを完全コピーして回したりしていました。結果は20連敗。最後の方はグリクシス使いの知人に応援されるような体たらくでしたが、使ってみるとブリーチも面白いものでしたし、得た知見は違うデッキを組む時の参考にもなりました。

・四期直前

 直前までログテヴェやティムクラ、マル砕きと言った強い人の強いリストを参考にさせて貰ってフリープレイで遊んでいました。最初にログサイを選んだのは、一番自分の性質と真逆のデッキだと思ったからです。だからこそ学べる点も多いはずだと思いました。このぐらいの頃から、自分が強さのわからないカードは入れても仕方ないと思うようになりました。結局自分が使い方をわかっていない為、入れてても有効に使えないといった感じです。
 筆者は雰囲気でしかデッキ調整ができないため、逆に自分の感覚には従うようにしました。理屈では強いんだけど、これ引いたときに有効に使えてた事あるか…?と見直してみたりして、ずっと入れてた「幽霊街」も抜き、サイクリングランドは1マナで起動できるもののみに絞り、無色マナしかでなくてキレてるから印鑑入れて…といった形です。

※細かい話ですが幽霊街をどう見ているかというと、「10枚目のアンタップインフェッチランド」です。今でも入れていいカードだと思っていますし、もう少し土地に寄せた構築の際は戻したいなと考えています。ただし、現在の環境だと引いたときにあんまり嬉しくない場面が増えたので思い切って抜きました。(なお、某所の動画では相手の土地を割るのに使っていましたが、基本自分の土地以外に起動しちゃダメですよ!)

 ちなみに、上記のような高Tierのジェネラルで練習しているときに、「そのデッキで出るんですか?」と何度か聞かれた事があります。自分が使った感触としては「もし使うとしたらログテヴェかなあ…」と思っていました。高速で仕掛ける事ができるデッキでありながら、除去コンのようなじっくり戦う事もできる緩急が性に合いそうだと感じたからです。
 もとより練習の為に使っていたデッキですが、選ばなかったことにも一応理由があります。一つは、これらのデッキを使うなら自分よりも慣れている人がごまんといること。同時に多くの人に睨まれていることです。実際に高Tierジェネラルの練習をしていた時、「普段(ギトラグ)より全然止めやすい」と言われた時に感じました。
 高速むかつきはその強さ故に、現環境ではまず止める事を意識されていると思います。そのため、筆者よりも長く共闘環境で戦ってきた人らにとってはむしろ戦いやすいデッキなわけです。自分の練習量も踏まえて、この土俵に上がっても勝てないなと感じました。「一人回しだけやってもうまくならない。一日30時間実戦しろ。」とは三期神の言葉ですが、ここの経験の差は短期間で覆らないと思っています。でも長年使ってきたこのジェネラルであれば、少なくとも対戦経験で引けは取らないし、判断ミスや単純なプレイミスも抑える事ができるだろうと思いました。これが二つ目の理由です。

 …とまあ理由は一応付け加えましたが、8割方の理由は「心中するならこのジェネラルがいい」という単純なものです。殆どの動機は思い入れです。元より自分は大会であんまり勝てる方のプレイヤーではありませんでした。その自分に勝つことの楽しさを教えてくれたのはこのジェネラルです。
 始めた頃の筆者はジェネラルのカードパワーで勝たせて貰っていました。環境が変わり、自分よりも早いデッキが多々出てきた中、使い手も減って、終わったなどと言われるようになった今だからこそ、今度は自分がもう一度このジェネラルを勝たせてやりたい。一種の恩返しのような心境で使い続けてきました。なので勝つにせよ負けるにせよ、このジェネラルが一番後悔が無い。そう思ったからです。

優勝できていたらもう少し大っぴらに書けたんですが力が及びませんでした

 以上のような調整をしながら、今回の神決に臨むにあたって目標を立てました。具体的には下記です。

①初日を突破する。

 初めから神になることを諦めていたわけではありませんが、何はなくともとにかく初日突破。これが達成できないと始まらないと思いました。実際、神決の予選を勝ち上がる構築と、挑戦者決定戦二日目を勝てる構築は若干異なると思っています。ですが初日を抜けられなければ何を言っても机上の空論。二日目を全く意識しないわけではないにしても、「初日を勝つべき時に勝ちきれるリスト」にすべく意識して調整しました。
 初日を突破できれば、少なくとも「終わってない」事は証明できる。そう思って練習を続けました。ちなみに勝つべき時に勝ちきれるリストというのは、単純に「回ってきたチャンスを逃さない」構築とプレイングを目指したという形です。よく「口を開けて待ってるだけ」と揶揄されるこのジェネラルですが、変に飛んだり跳ねたりするよりこちらの方が勝てると思っています。正解がわかってるわけじゃありませんが、常に相手との相性差やTier差(=デッキのパワー差)は意識するようにしました。
 動画や解説で紹介されていたように、ギトラグが今となっては遅いジェネラルなのは事実だと思います。それを自覚したうえで、変なところで除去やカウンターを吸わない、ターン帰ってこないと判断したら無理にでも仕掛ける、自分より上位のジェネラルがいる卓で安易に妨害を切らない、といった事を特に注意して対戦に臨みました。多分どのデッキでも意識されていることだとは思いますが…

②神決までに自分のリストを100枚載せる。

 こちらは①達成のための小目標です。数を載せたからなんだ、というのはもっともだと思います。実際のところ数についてはキリがいい数ということであまり意味はありません。どちらかというと、「多種多様な対戦相手とマッチする環境で練習する」事を意識しました。リストは、そこで勝った結果の記録です。
 これは特に三期頃に感じたのですが、自分は止めて貰える事に慣れきっていると感じました。見知ったプレイヤーとだけ遊ぶ環境であれば理にかなっていない除去は飛んでこないし、マストカウンターはキッチリカウンター「してくれる」しと、他のプレイヤーに頼りきっていると感じたのです。
 そのため、地元・TCガチコマ練習会のいずれも出れる限り参加し続けました。能動的に勝ちに行く時の感覚を養いたいというか、とにかく場数を踏んで地力を付けたいと思ったのです。最終的にそれぞれの勝率を算出し控えておくことで自信にもなりましたし、フリープレイでは積極的に普段使わないデッキで遊ぶことで、使い手の話を聞いたり、意見交換をしたりしたことも勉強になりました。

 結果としては4-2で初日を突破することができ、目標はどちらも達成。色んな意見があるかとは思いますが、個人的にはこの結果に満足しています。正直に言ってしまえば4-2はただの運なので、次回もこの結果が出せるかはわかりません。普通に0-6もありえると思っています。
 でも、自分にとっては「二日目にギトラグが居る!」みたいなツイートを見かけただけで嬉しかったですし、何より、「ギトラグは終わってませんよ!」と声をかけて貰えたのが一番嬉しかったです。このために神決に参加したようなものなので、それに比べたら上記二つの目標なんて些細なものです。一度ギトラグを崩した人にも胸を張ってまた使うきっかけになって貰えたら、これに勝る喜びはありません。

おわりに

 今回の神決はずっと使ってきたプレイヤーが結果を出したり、新星のごとく現れた新しいジェネラルが二日目に食い込んだりと、まだまだ統率者戦は面白い環境だと思える結果になり、自分としても嬉しかったです。
 今まで特にギトラグについては記事を書いてきませんでしたが、ずっと参考にさせていただいて来たギトラグの先駆者の方々へ少しでも恩返しになっていれば幸いです。
 最後になりましたが、プレイ指針や練習の仕方、考え方など、日ごろから色々と助言をいただいた皆様にはこの場を借りて御礼申し上げます。大小さまざまな内容があって書ききれませんが、今回の結果はいただいてきたアドバイスの数々があってこそと思っています。ありがとうございました。

 こんな記事に需要があるかはわかりませんが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。またどこかの大会でお会いしましょう!

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