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宴席のロジスティクス

「宴席において、いかに飲み物(お酒)を切らさないように発注するか」という気配りは、コロナでほぼ今日的意義を失ったノウハウである。今や、知っていてほとんど意味はない。

しかし、物流(ロジスティクス)や兵站の観点から見た時、宴席のお酒の発注は意外に多くの示唆を与えてくれる。いつかコロナが終わり、再び宴席の必要性が出てきた時に備え、コロナ前を知らないサラリーマン諸氏のためここに記すものである。

(設定)
4人×4卓のテーブルが横に並ぶ、16人の接待を想定する。顧客は上座側の列に8人、こちらは下座側に役員5名+事務局3名である。
スタッフが常にグラスの空き具合を見てくれる訳ではないお店で、事務局3名が気を配る、との想定である。3名は、①接待経験豊富な先輩②私③戦力になりそうもない新人で構成される。

Q1  事務局の3人の席はどう配置すべきか。
A 入口から最も遠くに先輩、中央寄りに私、最も入口に近い席に新人である。
重要なのは、座を観察していつ発注するか(reorder point)を見極めることにある。発注が遅れるとグラスが空のままお待たせする時間が長くなる。
奥の方はVIPが座ることが多いので先輩に任せ、私は中央寄りで全体を見る。新人にはreorder pointについては多くを期待しない。

Q2  いつ発注するか(reorder point)の判断材料は何か。
A 飲む量(average usage)、グラスの残量(safety stock)、発注してから飲み物が出てくるまでの時間(lead time)である。
飲むペースが早い人や、グラスがほとんど空いている人には、そろそろ発注ということは分かりやすいが、見落としやすいのはlead timeだ。

Q3  lead timeの短いお酒、長いお酒の例を挙げよ。
A 日本酒などをボトルで頼んでしまうのが、lead timeが最も短くなる。一度頼んでしまえばテーブルで注ぐだけだから。また焼酎などをボトルで頼んで自分で作るのも早い。
店で一杯づつ用意する生ビールなどはlead timeが長くなり、店によっては人手不足のため、頼んでもなかなか出てこないリスクがある。一度の発注量(order quantity)はまとめて複数にすべき。ハイボールなどは比較的早い。

Q4  焼酎をボトルで頼んで会場で作る場合、水割りとお湯割りではどちらがlead timeが短くなるか。
A お湯割りである。お湯割りは材料が焼酎とお湯だけに対し、水割りは焼酎・水・氷の3種類となる。また、お湯は供給が切れることは少ないのに対し、水や氷は在庫切れになる(兵站が途切れる)リスクがある。水や氷を持って来てもらう別のlead timeが発生する。

Q5  目の前の顧客への対応とお酒の発注ではどちらを優先すべきか。
A 目の前の顧客への対応とお酒の発注を両立するのは至難の技である。これをできる人に会ったことはない。戦闘と兵站を両方担当できないのと同じ道理で、目の前の敵への対応は他の人に任せ、あっさりと諦めるべし。

また宴会ができるといいですね。おわり

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