アップデートに疲れたら~ペペ桜井先生の芸をYouTubeで観よう~

 これほど、嬉しいことはない!

 鈴本演芸場が、YouTubeでのインターネット無料生配信をしてくださることになりました。

 現在、寄席及び芸人さんたちが置かれた状況を考えると、諸手を挙げて嬉しがるのは違うかもしれませんが、一ファンとして、生配信はやっぱり嬉しいです。しかも、7月末までアーカイブを残してくださるという。

 何よりも楽しみは、ペペ桜井先生をYouTubeで見られることです。
 ついに、世界に向けて、ペペ桜井先生(84)の芸を観ていただける機会が訪れたのです。おそらく世界中の人がペペ桜井先生の芸を観れば、みなが肩の力が抜け、憎しみは消え、諍いは終わり、どんな疫病も無気力になることでしょう。

 ペペ桜井先生は、6月6日、YouTubeに降臨されます。

ペペ桜井先生とは、どんな芸人なのか?

 寄席=落語と考えがちですが、寄席に行くと、落語家さんたちの間に色物さんたちが登場します。
「色物さん」というのは、落語家さん(と講談師さん)以外の芸を見せてくれる方々で、漫才のような話芸もあれば、太神楽のような曲芸もあれば、マジック、紙切、粋曲と、まあバラエティ豊かなわけです。

 ペペ桜井先生は、落語家さんではなく、「色物さん」の1人で、ギター漫談を披露してくださるのです。

 ギター漫談? 聞き慣れないのも当然です。
 ペペ桜井先生が自称するに「日本にギター漫談師は2人しかいない」のです。(実際には3人いるようですが、それは先生のネタを聞いてのお楽しみ)

 日本にたった2人しかいない芸を観られるのです!!!
 これは、もう貴重な機会としか言いようがありません。

一之輔チャンネルで色物の奥深さに触れた方はぜひ!

 先日、春風亭一之輔師匠が、YouTubeで10日間にわたって、色物さんを呼んでLIVE配信をしておりました。(色物さんたちは生LIVEでのみ視聴可能)
 寄席に通っていた方は、久々に色物さんたちの姿を見て「良かった~」と思い、はじめて色物さんたちに触れた方は、「こんな芸人がいるのか…」と思ったのではないでしょうか。

 特に、マジシャンというより奇術という言葉がぴったりあう、怪しさオーラ満開のおじいちゃんことアサダ二世先生、恐るべき才能を恐ろしい方角に全力投球する狂気の音楽家、のだゆき先生あたりのインパクトは大だったと思います。

 で、ペペ桜井先生はというと、アサダ二世先生の怪しさに、のだゆき先生の狂気をかけあわせたような、それでいて、太極拳の師範代というか、ナマケモノみたいというか、力感のないギター漫談を披露する芸人なのです。

アップデートされない芸の奥深さ

 ネタバレするわけにはいきませんが、、、
 ペペ桜井先生の芸の凄さについて語りたいと思います。

 私が寄席に定期的に通いだしてから、せいぜい10年くらいですが、
 ペペ桜井先生のネタは、毎回、ほぼ同じです。(おそらくもっと昔から同じネタを続けているはずだ、ということは、ネタを聞いていればわかります)

 毎回同じネタをする色物さんというのは、そんなに珍しくはありません。それは決して悪いことではなく、むしろ、同じようなネタなのに、毎回、新鮮な面白さがあるというのが寄席演芸の奥深さです。

 それでも多くの色物さんは、少しずつネタを変えていきます。
 アサダ二世先生とて、マジックがやりづらいと嘆く言い訳は、季節により変動します。

 けれど、その中で、ペペ桜井先生は本当に変わらないのです。変わらないことを極めているのです。

 今、世の中では、生活様式にしろ、価値観にしろ、アップデートすべきだと声高に呼びかけられています。それを否定するつもりはありません。

 でも、windowsのOSとしてこの世に生まれたわけでもないのに、常に自分自身をアップデートし続けるなんて、疲れませんか? 疲れていませんか? そんな人にこそ、ぜひ、数十年同じネタをかけ続けるペペ桜井先生の妙味にふれてほしいのです。

 ただ、ペペ桜井先生は、「まったく同じネタ」をかけるわけではありません。寄席は、日々、持ち時間も、客層も異なるわけでして、「同じように見せる」ために、微妙な変化をつけています(おそらく)。しかし、そうと悟られずに、それをやってのけるペペ桜井先生こそ、至高の芸人なのです。

ペペ桜井先生を愛したIくんに届け!

 この生配信が決まって、何より嬉しかったのは、私以上にペペ桜井先生にどはまりしたIくんにも、ペペ桜井先生の芸を観てもらえることです。
 Iくんは、「ペペ桜井先生が、いつもと少しネタ順が違うだけで、大丈夫だろうかと心配になる」ほど、ペペ桜井先生を敬愛しています。

 Iくんは、現在、東京からかなり離れたところにお住まいで、かつ、お子さんも小さいので、なかなか寄席にいける状態ではありません。

 ペペ桜井先生は、現在84歳、もちろんまだまだ長くご活躍してほしいところですが、Iくんも、「もう生では観られないかもなあ」と残念がっていました。

 けれど、今回、どんなに遠くの場所にいても、生配信でペペ桜井先生の妙技を見ることができるわけです。

 さっそく、IくんにLIVE配信について伝えたところ、「家族で観る!」そうです。
 おそらく、Iくんのお子さんは、世界最年少のペペ桜井ファンになることでしょう。

 6月6日昼のLIVE配信、楽しみです!!