対子供たち
早朝バイトが明けたその足で歯医者に行ってきた。半月ほど前、歯痛にのたうって別の歯医者に診てもらった歯の、さらなる治療だ。こってりだった。別の歯医者の治療が足りていなかったのか、それともあの時の治療は応急処置だったのか。俺はそれぞれの歯医者の流儀なんだろうと解釈した。こってりやってくれるこっちがいい歯医者さんと見立てた。
治療を終えて歯医者に言われたのは、一時間ほど物を食うなということ。うちに帰って宿題をする意欲はなく、ならば寝ればいいのだが、UBERに出た。UBERの方が好きとかそういう訳ではないはず。
動画のネタを考えながら配達した。ネタがようやく頭の中でまとまってロケ地に着いたのが16時。下校時間である。自撮り棒を立てていると子供が俺の周りに群がった。「ユーチューブだ」「インスタグラムだ」と俺をはやし立てる。そーだねーと答えて、撮影を開始する。俺が演技を始めるとつまらなかったらしく、子供たちはいなくなった。
この日から12月が始まっている。16時の太陽は低く、俺が相棒と定めたポストの周りは、家の影にすっぽりと収まっている。光量が足りないのだろう、自撮りの画面が時折暗くなる。それでも演技を続けたが、気が散る。自分の演技も上手くねーなと意識したところで心が折れた。家に帰って寝た。
起きたらまだ20時だった。まだ何でもできる時間だ。しかし意欲がわかず一番簡単なお酒に向かった。うまかった。よくない一日だった。ただ撮影の時、子供たちに負けなかったのはよかった。
この文章で上がった収益は、全てボス村松の演劇活動と植毛に充てられます。砂漠に水を。セイブ ザ ボース。