見出し画像

「FEVERでプリントしていただいた”Boris x Orange”のコラボTシャツの売り上げでOrangeのアンプを買ってFEVERに贈りました。」 Wata


いきなりで何の事か分からない読者もいるかと思いますが、もうそのままタイトル通り。OrangeのアンプをFEVERのステージ備品としてプレゼントしました。
ギター用ベース用と両方あるので、今後出演される方もステージでどんどん使ってください。以下、その顛末をどうぞ。


現在、コロナ禍によって生活様式は勿論の事、あらゆる価値観や物事の在り方が転換を迫られています。自分たちの活動フィールドである音楽関連に於いても多くの公演が延期・中止、ライブハウスやクラブは休業を強いられ、閉店廃業に追い込まれるハコも少なくない厳しい状況。そんな中自らの存続と音楽文化の継承を賭けて様々な新しい試みが行われています。
Borisの日本国内におけるHOMEと呼べる会場、新代田LIVE HOUSE FEVERもそういった厳しい時流の最中でアクションを起こします。それが昨年9月に立ち上げた物販制作部門『LUCKY merch & print』。その始動として『made in 新代田』という企画をスタートさせました。

“アーティストの T シャツを FEVER の一角にある LUCKY の工房で製作、お客様への発送までを FEVER が行います。FEVER / LUCKY はプリント代金と発送に関する手数料を売上とし、純利益はアーティストへお渡しします。
自分が思う「アーティスト、お客さん、ライブハウスの正三角形」が金銭面で成立する新しい試みです。” (FEVER OFFICIAL BLOGより)

オーナーの西村君は下北沢Shelter時代から懇意にしてくれていて、今回のこの企画でもBorisに声をかけてくれ、その意図に自分たちも賛同し喜んで参加させていただきました。
確かにありがたい。
が、バンド、アーティスト同様ライブハウスの経営も大変なはず。この厳しい状況で、新車のハイエースが買えるくらいの高額な高性能シャツプリンターを導入・稼働し、スタッフの雇用を守るというのは生半可な覚悟ではない。この状況で新しいアクションを起こすFEVERに対して、自分達も何か楽しくなれることが出来ないかな、と考えました。
もっと未来へ向けて、色々な可能性を生むアクションを。

メンバーで話しながら辿りついたのは「今回の制作販売で得た利益でOrange Ampsのアンプを購入、FEVERに贈り、出演者にガンガン鳴らして使ってもらおう」というものです。Borisファン、サポートしてくれてる楽器メーカー、ずっとお世話になってきたFEVERを全部巻き込んでみんながハッピーになる、そんなイメージ。

まず『made in 新代田』で制作・販売してもらうシャツのデザインには、Wataが長年愛用、エンドース契約しているOrangeのアンプをモチーフとして使用することにしました。
もしかしたら楽器や機材の事がわからない読者さんもいるかもしれないので、念のため説明するとアンプっていうのはギターの音を増幅して大音量で出す機材の一つ。WataはOrangeのアンプを使い続けて20年以上。そのヴィジュアルと低音の豊かな大音量のプレイスタイルはBorisのトレードマークにもなっています。

ドラフトのデザインを作成、意匠を拝借している事もあり、Orange Ampsアジア担当の松村氏を通じてイギリスのOrange本社に許可を求めました。同時に『made in 新代田』の企画意図と、裏で進行させるアンプ購入プレゼントの趣旨も伝えたところ、Orange Amps CEOのクーパー氏も大いに賛同して下さりました。更にはOrangeロゴを模したBorisロゴを本社メインデザイナーさんが作成、提供してくださいました。ビッグサプライズを自分たちが先にいただいてしまいました。

画像2

入念な打ち合わせ、試作のプリントに立ち会う等段階を経て、第一弾分は順調にFEVERの工房でプリントされ販売。各バンド・アーティストにつき受注期間1週間という短期間ながら、なかなかの売れ行き。この際SNSを通じて海外からの問い合わせが多々あったのですが、FEVERは海外通販の窓口を持っていなかったため、第二弾分としてBorisの通販でおなじみのサイト『- n y d -』を通じて海外への販売も開始。
新型コロナ禍で国際郵便などのロジスティクスが充分機能していないにも関わらず、たくさんの方々がオーダーしてくれました。予想以上の収益になった事もあり、これでギターアンプヘッド、スピーカーキャビネット、ベースアンプヘッドと一揃い買えそうな算段に。Boris x Orange マーチャンダイズをお買い上げくださった皆さん、本当にありがとう。この場を借りて感謝します。

そして、次に自分たちが向かったのが国内正規代理店であり、OrangeアンバサダーとしてWataとTakeshiをサポートしていただいているクロサワ楽器本社。
因みにアンバサダーというのは、そのメーカーの機材などを使用し、メーカーからサポートを受けているアーティストのことです。
Orangeのギターアンプヘッドを購入すると決めているものの、Wataが所有し日頃使用しているのは既に廃番品やヴィンテージ機種。様々なジャンルのギタリストが弾くであろうライブハウスに適すのはどれか、クロサワ楽器でOrange Ampsを担当されている、小野寺氏と河本氏のご協力のもと、現行モデルを試奏するべく本社ショールームへ。

画像3

準備していただいた機種は画像左上『Rockerverb 100H Mark lll』左下『TH100H』、右上『Custom Shop 50H』、右下『Dual Dark 100H』の4種。Wataが次々に試奏していくのだが『Custom Shop 50H』を見て「かわいいし、私これがいいなぁ〜...」の一言。アナタへではなくFEVERのために買うのです、そこは間違えないように。まあ、確かに往年のOrangeらしいデザインとサウンドだけれども。
最終的にオールジャンル対応で使いやすい『Rockerverb 100H Mark lll』に決定。(各アンプのリポートは別記事として予定)他に定番『PPC412ギターキャビネット』と俺がいつも使用している小型ながら大音量のベースアンプ『Terror Bass』の三点を購入。Orange Amps、クロサワ楽器の皆様、ご協力いただき本当にありがとうございました。

そして2月2日、いよいよFEVERへ。お店側には「ステージを借りてビデオシューティングをする」という名目で会場をブッキング。
影の協力者、FEVER音響スタッフの吉崎君とともに新品のアンプ類を運び込み、ステージにセッティング。まずはWataがアンプへの”初火入れ”を行ない、ひとしきり「いつもの音量」でをギターを鳴らす。やはりでかい音はいい。このライブハウスでの記憶が身体に一気に蘇る。

因みにクロサワ楽器のショールーム(防音スタジオではない)で試奏の際も、Wataは当然のように「いつもの音量(爆音)」で弾き始め、その場にいた全員が困惑したのは言うまでもない。

オーナーの西村君といつも制作の担当をしてくれている駒村君をステージに招き入れる。Wataの片言の日本語でOrangeアンプをFEVERに贈りたいと伝える。皆さん驚きつつもとても喜んでくれて、我々の思いを受け取っていただけました。たまたま駒村君はBoris x Orangeのシャツを着てくれていて「うわー、これ(着ているシャツを指して)が、これ(アンプを指して)になったってわけですね!」と言ってくれたのも嬉しかった。

画像5

というわけでついにFEVERへアンプのプレゼントを完了。
記念のサインもスピーカーキャビネット裏面に。

画像6

その後は使い方の説明もかねて、吉崎君にギターアンプ、駒村君にベースアンプをそれぞれ試奏してもらったのですが、二人とも口を揃えて「でかい音っていいなあ」と。
その場にいた全員がそう思った。西村君や、他スタッフもフロアに集まり、その風景を笑顔で眺めていました。

Borisはライブの度にこんなに嵩張る重たい機材を何台も運び、ステージに積み上げて、でかい音で鳴らしてきた。
音楽は耳で聴くものと思っていないだろうか?音楽は全身で感じて全身で聴くもの。
大きな絵や壮大な風景と同じように、パソコンのモニターやヘッドフォンでは伝わらないことが絶対にある。そしてライブハウスのような「場」での体験を置き去りにして未来へ進んでいく事は、表現者として容認できない。体感する音圧、スモークの匂い、ライティングの明滅、人と人が視線を交わし、体温を感じながらコミュニケートする、今これらが簡単に「不可能」と判断され、妥当とはいえない代替によってなし崩しになっていくのは、見るに耐えられない。

FEVERに置かれるOrangeのアンプは、この先の音楽という文化の未来への約束、願いの象徴。そしてこの文化を在るべき姿で継承していく決意としての、重くてでかい”足枷”でもあります。

世界は大きく変わって新しくなってしまった。以前のようなライブ表現は困難な状況は続いている。新しい世界で新しいアイデアで未来に向かっていくことはもちろん大事。でもちゃんと伝え、残していきたいこともある。
今後FEVERに出演する多くのアーティストにもこのOrangeを鳴らして欲しい。大きな音で弾き、音そのものと成る、その音を全身で浴び同化する時間を皆さんと分かち合えたら。

近い将来またFEVERで会いましょう。


Text: Takeshi
Special Thanks to: Orange Amps, Orange Amps Japan, クロサワ楽器店,
- nyd -, Greg Mudarri

画像7


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?